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蛇頭

(よみうりもの知りエース現代情報整理箱)

日本へ密航 昨年夏から急増

密航船に乗って海を越え、日本に集団で密入国する中国人が昨年から急増している。中国側からみても、いまや密航者たちが望む渡航先の最右翼が日本だという。その密航を高額の報酬を得て手引きしている犯罪集団の総称が、欧米でも「スネークヘッド」として名高い「蛇頭」。最近は、暴力団と手を組むなど、密航ビジネスの手口も巧妙化している。

氷山の一角

昨年夏以降の密航の急増ぶりは、尋常ではない。日本で検挙された中国人の集団密航者は、一九九〇年で十八人。その後三百人台の年もあったが、一昨年は百五十一人にとどまっていた。これが、昨年は一気に五百四十二人に跳ね上がり、さらに今年は、半年間ですでに昨年を大きく上回る七百八十五人に達した。しかも、「実際はこの十倍、二十倍が不法上陸に成功している」(海上保安庁)とみられているのが実情だ。

数年前までは二十−三十人の規模で、上陸地点も九州方面に集中していた。だが、昨年からは東北や東海地方など全国に広がり、今年二月に、高知県足摺岬沖で八十三人、三重県大王崎沖で五十九人が乗った密航船が摘発されるなど大規模化も目立つ。

従来、中国人密航者が目指したのは主にアメリカだった。が、ニューヨーク、ロサンゼルスのチャイナタウンに密航者が集中して賃金相場が大幅に低下。さらに九三年に密航船が座礁して八人がおぼれ死んだ「ゴールデンベンチャー号事件」を機に、米政府が取り締まりを強化したため、密航先が日本へと変わった。昨年来のラッシュは、この移行期に中国内に“蓄積”された密航希望者が一気に吐き出された結果だという。

建国以来

もっとも、「蛇頭(スオトウ)」の歴史はさらに古い。一九四九年の現中国の建国当時、共産党政権を嫌った人々の国外逃亡を手伝ったのも、ベトナム戦争のサイゴン陥落時(七五年)に現地の華僑を国外に逃がしたのも蛇頭だったと言われる。そのころは、主にタイ、香港を拠点にした、ひそかな活動が中心だった。

出番が多くなったのは、中国で改革開放政策が始まった七九年以降。華僑の帰郷が増加、国外の豊かな生活が伝えられて、専ら経済的な成功を夢見る出国ブームが起きたからだ。 蛇頭の名の由来は、▽リーダーを先頭に海を一列に泳いで渡るイメージが蛇のよう▽頭をつぶさないと死なない蛇のような組織−−など諸説あり、はっきりしない。密航船を「蛇船」、密航者を「人蛇」と言うこともあるが、蛇頭自身はそれらの呼称を嫌い、密航者らには自分たちを「老板(ラオパン)」(リーダーの意)と呼ばせ、密航者のことは「鴨子(イヤツ)」と呼ぶ。

自分らの行為をビジネスと割り切り、「人頭生意(レントオスンイ)」(人間に関する商売)という言葉を使うこともある。

ネットワーク

組織の多くは、密航者を募る「勧誘蛇頭」、目的国まで送り届ける「引率蛇頭」、外地に潜伏する「出迎え蛇頭」など、役割ごとに別グループになっている。そのネットワーク化された総体が、すなわち蛇頭だ。

日本への密航の場合は、密航希望者を集めた本国の蛇頭が、密航船を準備し、日本に潜伏する在日蛇頭に連絡。在日蛇頭は、沖合で出迎える漁船や、通訳を確保して待機する。

本国蛇頭と在日蛇頭は携帯電話で連絡を取るが、最大のポイントは密航船と出迎え船が合流する時間と場所。合流をスムーズに進めるため、それぞれの船に、人工衛星による位置確認システム(GPS)装置を装備したケースもあった。

出迎え船で上陸した密航者がトラックなどでアジトへ到達すると、その時点で密航は成功とされ、密航料の支払いが行われる。

密航料は通常二十万−二十五万元(一元約十五円)。密航者は本国の家族に「無事到着」を電話連絡、家族が本国蛇頭に支払う。出国前に頭金を納めているケースもあるが、在日蛇頭は「支払い完了」を確認するまで密航者を解放しない。

悪質化

最近ではほとんどの在日蛇頭が、日本の暴力団を協力者に引き入れ、出迎え船や国内での運搬、アジト確保などを分担させている。

加えて、密航者が国内で窃盗グループを組織化したり、金をためた不法就労者を誘拐したりするなど、密航絡みの犯罪も悪質化が目立ち、警察庁、海上保安庁、法務省入国管理局など関係当局は、集中取り締まりに力を入れている。

海上保安庁は二月に密航対策室を設置。巡視船艇による不審船の立ち入り検査や、航空機による警戒を強化した。警察、海保間の協力も密になり、発見と同時に不審船を摘発していたこれまでのやり方を改め、受け入れ側との接触まで追跡して、組織の根絶を目指す捜査手法も定着してきた。

その典型が、昨年十二月、愛知県伊良湖岬沖で密航者九十八人が密航船から出迎え漁船に乗り換えた直後に両船を一網打尽にしたケース。大阪、愛知の両府県警は、この事件を手引きした在日蛇頭を入管難民法違反(密入国)ほう助容疑で逮捕、未発覚だった四事件も解明、協力した暴力団関係者らも捕らえた。

が、この在日蛇頭は「他にも数グループの在日蛇頭が活動している」とも供述。蛇頭と捜査機関のせめぎあいは、なお続きそうだ。

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