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蛇頭(スネーク・ヘッド)

(新潮文庫:岩舘野良猫氏の書評 1999/5/4記)

莫邦富

とかく、世間は複雑怪奇。アンバランスで不公平に出来ているもんだ。

本書は中国系の「不法滞在者」や「違法入国者」に関するドキュメントである。

思い返しほしい。人種国籍の別を問わず、外国の方々がこれほどわれわれの日常生活の場で珍しい存在ではなくなったのは、せいぜいここ十数年のことである。それまで、わたしが子供の時分までは、わざわざ「ガイジンさん」が日本にやってきて、自分たちの職場や生活の場に根づくことなど、想像だにできなかった。

なにせ、そのころは固定相場制で1ドル360円だったもんな。

それはともかく、本書は彼ら、オーバー・ステイや不法入国者などのなかで、中国系の人たちに的をしぼって、密入国をする当事者たちと斡旋をする者たちの背景や事情、それぞれの思惑などを取材したもの。

日本やアメリカなどの西欧諸国だけではなく、ロシアや東ヨーヨッパにまで広がっている華人社会の人的ネットワークの広さ(これは、必ずしも華僑や黒社会などのコネクションのみをさすわけではない)、浸透度は、たぶん、大多数の人の想像を絶しているはずだ。

本書の著者が合法、非合法を問わず、さまざまな国の「斡旋業者」たちを取材していく様子はパワフルで圧倒される事も多い。が、反面、著者自身が中国系の人であるため、いわゆる同胞意識が前面に押し出されるような記述も、ちょっと、散見された。

そいうのがすこし鼻につくことを除けば、きわめて今日的な題材を正確に取材した良質のジャーナリズムであると思う。

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