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キッシンジャー・周恩来 極秘会談録公開 “危険な日本”で同意

キッシンジャーと周恩来の極秘会談録公開

(産経新聞朝刊 2002/08/06)

「日本の経済発展を後悔」われわれに日米同盟必要ない

ニクソン大統領の訪中準備のため一九七一年に行われたキッシンジャー米大統領特別補佐官(当時)と中国の周恩来首相(同)の極秘会談録が公開され、米中国交正常化交渉における中国の関心が日米同盟解体とともに台湾独立の可能性にあったことが明らかになった。

こうした思惑に対し米側は冷徹な駆け引き で応じているが、「日本の経済発展を許したことを後悔」などと同調、将来の日米安保解体にも言及するなど、日米から米中へと東アジアの枠組みが変身する可能性のあったことを示唆している。

この会談は一九七二年二月のニクソン訪中の前年十月二十二日に北京の人民大会堂で行われた。会談は中断はあったものの約四時間に及び、日本、台湾のほか朝鮮半島、南アジア、ソ連などがテーマとなった。このうち日本問題は四十分以上にわたって協議された。

キッシンジャー補佐官が「最も気になる問題から始められてはいかがだろう」と水を向けたことから日本討議が始まっている。

周首相はまず「日本の経済発展がこのレベルで続くと、いずれは日本を押さえられなくなる心配がある。そうなれば憂慮すべき事態となる」と、対日警戒感をあらわにした。

そのうえで「中国は報復の政策をとらず、平和と友好で接したが、対照的に日本は挑戦的だった。第二次大戦の賠償金も払わず戦後二十五年間、国防支出の必要もなかったのにいまは(経済発展とともに)国防支出が増加している」とし、日本の非武装中立化の必要性を強調した。

これに対し、キッシンジャー補佐官も「中国は伝統的に世界的視野があるが、日本は部族的で視野が狭い」と述べ、周首相も「その通り。日本は偏狭で島国根性の国民だ」とうなずくなど厳しい対日観で一致、日本の軍事力制限の必要性でも同意していた。

ところが、周首相が「日本は米国の『核の傘』に守られている。巨大な力と同盟関係にあるからこそ経済発展と軍備拡張が可能なのだ」と日米安保条約破棄を暗に求めたのに対し、同補佐官は「中立とは強い軍事力を背景にしたものか、あるいは周辺国に保証されてしか存在しない。日本を(中立で)解き放てば手に負えなくなり、後悔することになる」と日米安保が日本を抑制する役割を果たしているとの見方を示してはねつけた。

また、同補佐官は「日本が過度な再軍備を行えば(第二次大戦前のような)伝統的米中関係がものをいうだろう」と、日本封じ込めに米中関係が有効との見方を披露したほか、日米安保についても「核戦争の時代に条約は意味をなさず、他国を防衛するとすれば条約のためではない。(米国の)国益のためだ。日本は軍事的に貢献しておらず、われわれは条約を必要としない」と、将来の条約解体の可能性にも言及していた。

一方、台湾問題について周首相は「(米中の)友好とは台湾を中国の一部と認めることだ」とし「いずれ台湾独立運動という動きが起きたとき、日本がまずそれを支持し、米国がそれに続くことも考えられる」と日米が独立運動に関与することに強い懸念を示した。

キッシンジャー・周恩来 極秘会談録 詳報

(産経新聞朝刊 2002/08/06)

≪危険な日本≫

キッシンジャー

最も気になる問題から始められてはいかがだろう。

周恩来

現在の日本の経済発展を止めることは困難になっており、必然的に海外の先進国や開発途上国にも影響が出てきている。

開発途上国に対しては植民地化を進めている。日本には第二次大戦の教訓から平和と中立の道を歩んでほしい。現状の資本競争の政策を続けるなら、早晩問題が生じる。経済発展を望む者がいれば、その発展を許容せざるをえない者が出てくるからだ。

経済発展が拡大すれば、自衛という名であろうと軍備拡張へとつながるだろう。

第二次大戦後も日本はこの五十年間と同様に中国に挑戦的な向きがあるが、中国は報復ではなく平和と友好の政策をとっている。

日本の政権に挑戦的な向きがでたのは大戦後、日本が恩恵を受けたからだ。他国に賠償する必要はなかったし、この二十五年間、国防支出の必要もなかった。

現在は経済発展によって第四次防衛計画で国防支出も増えようとしている。中国は日本との敵対関係を望まず、日本政府の拡張政策が見直され平和政策が推進されれば、状況は変わるだろう。

キッシンジャー

率直な日本観を示す。これは米政府全体の見方ではないが、ホワイトハウスの代表的な見解だ。

中国と日本を比較した場合、中国は伝統的に世界的な視野を持ち、日本は部族的な視野しか持っていない。

日本はものの見方が偏狭で、全く奇妙だ。島国の国民だ。英国も島国だが。

キッシンジャー

日本と英国は違う。日本は自国の社会があまりに異質なので、社会を適合させ、国の本質を守ろうとする。

日本は突然の大変化も可能で、三カ月で天皇崇拝から民主主義へと移行した。

日本人は自己中心で他国に対する感受性に欠ける。

日本の経済発展の方式は自身のためで、そこに特性が具体的に示されているという首相の意見に全く同感だ。日本に対しては何の幻想も抱いていない。

首相が示した「日本を中立化するのが望ましい」という見解について意見を述べるが、一億二千万人の人口がいる世界第三位の工業国にとって何が中立かを認識するのは難しい。

歴史の中には、二種類の中立しかない。ベルギーのように他の国々に(中立を)保障された国と、中立を宣言し独自の強力な軍隊で防衛するスイスやスウェーデンのような国だ。

日本が独力で国防を行えば、軍備拡張で周辺諸国にとって脅威となるだろう。

現状の日米関係は実際には日本を束縛しており、もし米国が(日本を解き放す)皮肉な政策をとれば日中の緊張を引き起こす。

日本との関係を緊密にせずに自立を促して米国が日中双方と関係を結ぶのはあまりに短絡的で、米中はいずれも犠牲となるだろう。

日本が太平洋にある米国の従順な身内だと考えるような米国人はお人よしだ。

日本は独自の目的を持ち、ワシントンではなく東京でそれを実行している。日本びいきの向きがある人たちは日本を利用しようとするが、それは危険だ。

米国は対日基本政策として、核武装に反対し、自国防衛のための限定的な再武装を支持し、台湾や朝鮮半島への軍事的拡張に反対している。

日本の核武装を望まないというが、米国が日本に核の傘を与え、他国への脅威になっているのはどういうことか。日本は大きな力と同盟関係にあると感じるからこそ、経済発展や軍備増強を遂げているのだ。

キッシンジャー

核の傘は日本に対する核攻撃に備えたもので、米国が(攻撃に出る)日本のために核兵器を使うことは自国のために使うこと以上にありえない。しかし、実際には日本人は迅速に核兵器を製造する能力を持っている。

それは可能だろう。

≪日本再軍備と日米安保≫

日本の防衛力を制限することは可能と考えるか。

キッシンジャー

確信していないことを断言したくない。日本が現在の米中関係に反発して、ナショナリズムが再度台頭するというような主張以上に防衛力を制御する方策の場があると信じている。

日本のアジア支配を回避するために第二次大戦を米国が戦ったのに、二十五年後には日本を支援しているというような見方は適当でない。

私は米国がこうした疑問を提起してこなかったと個人的に信じている。もし、日本に強力な再軍備拡張計画があるならば、伝統的な米中関係が再びものをいうだろう。

日本を自国防衛に限定するよう最善を尽くさなくてはならず、日本の拡張阻止のため他国と共闘するだろう。

日本の経済力で軍備増強を可能にし、日本を勝者にしようとする大きな力がある。日本人を平和と中立に向かわせることはなぜよくないのか。

キッシンジャー

当然、日本が平和政策を進めることを問題視はしていない。日本が中立を目指すことは、軍備増強の結果をもたらすと考えているのだ。

戦術的に中立になるだろうが、日本は以前はそうだった。

日本は米国のコントロールなくしては野蛮な国家だ。拡大する経済発展を制御できないのか。

キッシンジャー

軍事的側面以外では完全に制御はできない。

核の傘に関しては日本との間にその拡張で条約を結ぶ必要はない。

核時代には国が他国を防衛するのは条約のためではなく、自国の利益が問われるためなのだ。

日本は軍事的には米国に何も貢献していない。もし極東地域で米国が積極的戦略を描くならば、日本を必要としないだろう。日本に基地は必要とせず、日本以外でも基地は持てる。

日本の軍国主義が復活するのは望ましくない。日本をここまで経済発展させたのは米国だ。

キッシンジャー

それは本質的には事実だ。しかし、日本の経済発展が現実にあるならば、米中は太平洋の両岸で何をなすべきかを決めなければならない。

米中は愚鈍な楽観主義者でもないし、首相は現在の様相の中で、状況を見つめなければならない。

日本はすでに豊かな国に育った。今問題なのは、日本の多くの人々が日本の米軍基地撤退を要求していることだ。沖縄をはじめ日本の米軍基地の今後の役割についてはどう考えているか。

キッシンジャー

日本人が駐留軍の撤退を望むならいつでも、米軍は撤退する。

首相はその日が来ることを喜ぶべきでないと思う。米国が日本を経済大国にしたことを今日後悔しているように、中国もいつの日かそのことを後悔する日が来るからだ。

それは二つの異なる問題だ。米軍撤退は友好関係の中だけで可能であり、敵意の中ではできない。

キッシンジャー

その通りだ。もし、日本が安保条約の破棄を申し出れば一年以内に駐留軍を撤退させる。

≪台湾問題≫

キッシンジャー

米国は日本が台湾に軍事拡張したり軍事的影響を与えることを支援せず、反対する。また、日本の台湾独立運動支援の企てを阻害する影響力が米国にはある。

米国は台湾問題の平和的解決と中国との関係正常化を支持する。首相がどうこの問題をとらえているかを理解しており(ニクソン)大統領も首相や毛沢東主席との会談で、こうした米国の認識すべてを再確認するだろう。

中国は台湾問題を国内問題と位置付けていることは理解している。米国はそれに反対しようとは思わない。

台湾問題は第二次大戦後に浮上し、すでに解決済みの問題だ。

戦後に満州同様、台湾も日本は降伏文書で放棄しており、確定したことだ。

日本が台湾を占領したのはわずか五十年間だった。英国政府は、台湾が中国の一部であるという中国政府の立場を認識している。認識と承認は国際法上異なるが、それははっきりしている。(中略)米国のトルーマン大統領は、台湾は中国の人々に返還され、米国は台湾に領土的野心はないと表明した。

しかし、朝鮮戦争が起きるや、大統領は第七艦隊と顧問団の派遣を決め、台湾と台湾海峡は米国の保護下にあると宣言した。大統領は核兵器に言及し、現にそこにあった。

日本とのサンフランシスコ平和条約で、トルーマン大統領は(台湾をめぐる)宣言に沿うように奇妙な基本原則を利用した。

それによれば、日本は本州、北海道、四国、九州以外の領土問題を再度出してきた。

サハリン南部やクリール諸島、沖縄を含む琉球諸島のほか、台湾や南沙(スプラトリー)諸島などもその問題に含まれている。サンフランシスコ条約はこれらの領土がどの国々に属するのかを特定していない。誰がこうした構図を描き出したのか。

キッシンジャー

ダレス(米国務長官など歴任)だ。あなたの古い友人だ。

その後、個別の条約が日本との間で結ばれたが、その時台湾は米国の保護下で蒋介石(総統)がただ一人の小さな代表者となっていた。

蒋介石は(米国に)言われたようにだけ行動でき、日本が放棄したというだけで、どの国に台湾が返還されるのか特定されていない条約下で、台湾に君臨していた。蒋介石を売国奴と呼ぶ理由はたくさんある。

キッシンジャー

蒋介石は一つの中国だけがあり、台湾は存在すると主張している。

米国が沖縄を含む琉球諸島を日本領土とすることで日本と合意したとき、蒋介石はなぜ中国に返還しなかったのかを問いただした。歴史上、沖縄を含む琉球諸島は明朝や清朝が支配してきた。台湾と澎湖諸島は日本との平和条約で支配権が示されておらず、破棄すべきだ。

蒋介石はこの問題を提起せず、その後ダレスから保護が示されたため、もう条約について言及しなくなった。(中略)台湾独立運動が起きる日を確実に考えているからだ。そうした観点を同様に持っているのは第一に日本で、第二に米国だ。

はっきりさせたいのだが、米国は台湾がすでに返還され中国の一部になったとみなしているのか。中国人民はどのように台湾問題を解決すべきだと考えているのか。

キッシンジャー

明確に答えを出したいが、首相のようなはっきりした考えは示せない。中国は一つであり、台湾は中国の一部であるとの中国の一貫した政策には反対しない。(近藤豊和)

安保枠組み変質に言及「部族社会」「見方偏狭」厳しい対日観示す

(産経新聞朝刊 2002/08/06)

米中国交正常化三十年目に公開された中国の周恩来首相とキッシンジャー米大統領特別補佐官の極秘会談録は、東アジアの安全保障が結局のところは日米中三カ国の「力のバランス」によって形成されていたという現実を改めて見せつけた。

米中接近は冷戦下で最大級の外交ショックといわれたが、そのショックは「米国の日本離れ」、さらには「日ソ接近」といった全く新たな枠組みまで引き起こそうとしており、そうした現実政治の力学をこの会談録は見事に描きだしている。(前田徹)

米国は当時、西側の代表国として冷戦の最前線におり、対する中国もこの時点ですでに第三世界のリーダーとなっていた。その両国を代表し、希代の戦略家といわれた周首相とキッシンジャー補佐官が米中関係回復の条件を探り合うわけだから、当然ながら世界情勢を知る上で非常に興味深い史料となっている。

だが、それ以上に興味深いのはわずか二十年前に朝鮮半島で戦ったばかりの両国がソ連という共通の敵を前に何が利益で何が障害かを本音レベルで互いに確認しあっている点だろう。その意味で、会談録の最大のテーマが日本と台湾に絞られ、将来の日米安保の解体まで話し合われたことに目をひかれる。

実際、周首相は「日本の経済発展は再軍備につながる」として「米国は日本を押さえ込むべきだ」と持ちかけ、日米同盟の存在こそが米中関係の障害であることを再三にわたって伝えようとしている。

これに対し、キッシンジャー補佐官も日本人の視野の狭さを指摘して「日本は自らの文化しか理解できず、他文化への感受性に欠ける」とまで言い切るなど同調し、日米より米中関係の重要性を強調していた。

もちろん米国側はこうした中国の要請に対し「日本の軍事大国化を防ぐにはむしろ日米同盟でコントロールすべきだ」−という“瓶のふた論”を展開して同盟維持と沖縄の米軍駐留を認めさせているが、同補佐官が最終的には米軍が日本から撤退する可能性を示唆したことが気になる。

果たしてキッシンジャー補佐官の本音はどこにあったのか。便法として日米安保解体に言及したのか、それとも日米から米中へと東アジア安全保障の枠組みを将来、変質させることを本気で考えていたのだろうか。

キッシンジャー氏はユダヤ系ドイツ人移民で、第二次大戦でドイツと同盟関係だった日本に対し嫌悪感を抱いているとされ、そのことは「日本は部族社会」という表現からもうかがえるが、米中接近に対抗して日ソ接近を心配する周首相に対し、「場合によっては戦前同様、米中が協力して日本を牽制(けんせい)できる」とまで述べた点が注目される。

対日重視政策をとる現ブッシュ政権の元高官は「将来、不安定要因となる可能性のある中国を牽制するには日米同盟の強化が不可欠」と明確に米国のアジア政策を説明しているが、米中戦略家が本音で語り合った会談録が示すものは、米国には常に米中強化という選択肢を持っていることといえるだろう。

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