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駐在武官が見た中国と日中関係

(第36回 日中東京フォーラム)

第36回日中東京フォーラムは、98年12月14日、伊達物産アジア研究所で開催されました。北京に3年勤務された宮崎泰樹一佐をお招きし、駐在武官の立場で観察し、考えた中国 日中関係の話を聞き、みんなで討論。コーディネーターは山本敦会員。
(参加者=中国3名、日本15名 /計18名)

講師=宮崎泰樹氏

「まあ、そう怒らないで」と酒を飲む今年の7月まで約3年間、駐在武官として北京に勤務しました。駐在武官は正式には防衛駐在官といいます。今日は、ざっくばらんに、中国の人が日本をどう見ているのか等についてお話をしたいと思います。

江沢民さんが来日され、宮中晩餐会でまで、「歴史を反省せよ」、「台湾のことは中国のことだ」と、厳しい顔で言われた。どうしてあんな厳しいことを言うのか仲々分からないと思います。私は、1週間に3回くらい、あんな感じで中国の人に怒られた(笑)。まあ、そう怒らないで、とお酒を飲みながら言うのが私の仕事でした(笑)。だから、中国人の論理や考え方が体にしみついています。今、北京の大使館には60名くらいの人がいますが、外務省の人は半分で、他省庁が半分。

口も聞いてくれなかった頃

中国との外交および日本からのお客が多いのでその接待が仕事です。私は、防衛庁からの派遣なので、主として軍事面になる。中国の軍人は何を考えているのか、また、安全保障の問題は、日本では外務省が主体ですが、中国では人民解放軍が主体になる。従って、軍人が考えた安全保障戦略がいかなるものであるかを知ることが仕事です。また、防衛交流があり、冷戦後はもっとオープンにしようとして、軍事施設や飛行機を見せあう、中国は核をどんなことに使おうとしているのか話し合おうという交流を始めています。まだ始まって1年ですが、この間遅浩田国防部長が来たり、総参謀長が来たりした。日本からは、久馬防衛庁長官や陸上幕僚長が訪中し、軍人同士、安全保障をやるもの同士で話し合っています。

中国には、世界の61か国から防衛駐在官が来ている。アメリカ12名、ロシア15名、ベトナム6名、韓国6名、インド4名等だが、日本は当初私1名で今度2名になった。とても情報などとれない。客が多いし。

3年前、中国は初めてでしたが、中国の軍人さんは冷たいんです。「こんにちわ」と言っても、仲々笑わない(笑)。他の国の人には笑っているのに、私が、「日本の武官です」というとみんな構える。非常に寂しい思いをしました。9月に中国が核実験をやり、日本は無償援助を停止した。そういう時期で、電話をしても、日本の武官だというと、ガチャンと切られた(笑)。翌年4月には、中国が台湾の近くにミサイルを打ち込み、その後すぐにクリントン大統領と橋本首相が、日米安保新ガイドラインに調印した。本当に口も聞いてくれなくなった。そういう時期が1年くらい続いた。ところが、1年余り前から、日本とも仲良くしたいということになり、緊密な関係になった。

中国からは日本が大きく見える

どうして中国と日本が仲良くなれないのか。日本人からすると、中国人が歴史の問題ばかりいうので、言いたいことを理解しようとする前に嫌だと思ってしまう。我々は50年前、中国の人たちにものすごく迷惑をかけている。やった方は忘れていても、やられた方はよく覚えている。南京事件も規模はもっと小さいかもしれないけど、やってはいる。そこに目をつぶると、中国人は面白くない。

また、中国から日本を見ると、ものすごく大きく見える。日本人は中国をものすごく大きいと思っているが、中国の軍人さんは日本のことを本当に嫌な国だと思っているようです。「日本は気違いの国だ」という。「開国してたかだか30年くらいで、清、ロシアと戦い、50年で世界と戦った。アメリカにやられたが、経済でアメリカに追いつこうとした。こんな気違いみたいな民族が世界にいるか」ということです。

彼らは、「アメリカは世界に開かれていて天才が集まるから、アメリカが強いのは分かるが、日本には日本人しかいない(笑)。それがどうして喧嘩が強く、金儲けもうまく、性格がひねくれてるのか(笑)」と思う。「『悪い』と謝るけど、中国から見ると、本当に謝っているとは思えない。これがまた、腹が立つ」と言われる。中国から見ると、中国が長男、韓国が次男で、日本は三男らしい。

次男は長男を尊敬している。あるいは振りをしている。朝鮮半島は中国から千回攻められたそうですが、1回も攻めたことがないそうです。三男は言うことをきかない。「反省した」と言いつつ、反省もしないで、一番嫌いなアメリカと手を組んでいる。そういうところが、中国の軍人は、ずるがしこいと思うらしい。日本の政治家は、「日本は軍事大国にならない」というが、中国からみると日本は、間違いなくもう軍事大国に見える。通常戦力の軍事力の差は20年以上ある。自衛隊は強くてアジア一なのに、「軍事大国にならない」というので、そこから話がかみ合わない。

「憲法9条があるから」と言っても、本当に大丈夫かと思う。日本人はみんなそう思っているが、やられた側から見ると、「そんな紙切れが本当に役に立つか。それよりも、もっと本音で話せ。その軍事力をどう使うのか、その説明がない」とよくいう。お酒なんかを飲むとよくこんな話になる。こちらは本当のことを話しているつもりだろうが、それが相手に見えない。最大の不信感というようなものを私は感じた。そこを理解しないと、どうして江沢民が冷たい目で日本をみるのか、が理解できない。日本の政治家と会っても、官僚と会っても、そういう表面的な話になるので、益々不信感を助長してしまう気もした。中国から日本がどう見えるか、そういう感覚を持ってほしい。

次に、日本から中国を見るとどうなるか。毛沢東が政権をとった時に、朱徳という軍人と連携をとりながら、軍の力を背景に共産党が伸びてきた。軍と一体化して政権をとった歴史があるだけに、中国における軍のパワーは我々が想像する以上に強い。トウ小平も総参謀長で軍のトップだった。また、彼は党の中央軍事委員会主席という軍をコントロールする権限を最後まで放さなかった。ケ小平の時代に、経済の時代になり、軍人も 100万人削減など押さえられた。ソ連に向けられていた緊張感が、ソ連崩壊でなくなり、目が南に向くようになった。

「戦略的国境の概念」で、海軍力、空軍力を強化

中国の軍人の書いた論文で、我々が非常に驚くことがあった。1987年の論文で、「戦略的国境の概念」というものです。「地理的な国境とは、一般的な領土、領海、領空を示すが、戦略的国境は、国家の軍事力が実際に支配できる国家利益と関係する地理的、空間的範囲を示し、これは海洋、極地、宇宙空間へ広がる」とある。軍事力の及ぶ範囲があれば、地理的国境を越えて戦略的国境があるというわけです。「強国は、戦略的国境を推進し、本国から遠く離れた地域、例えば航路でも支配できるが、弱小国は戦略的国境=地理的国境である。我々は、積極防衛の概念を、伝統的地理的国境から戦略的国境へ押し出さねばならない。すなわち、12カイリの領海防御から、海上国境を 300 の経済水域にまで拡張し、陸地では地理的国境と一致させるが、宇宙空間や海洋に関しては拡大する必要がある」という。

その2年後、1989年に、大連の艦艇学院の少将が書いた論文で、「第一列島線」という言葉が使われた。アリューシャン列島、千島列島、日本列島、琉球列島、台湾 フィリピン 大スンダ島を連ねた線のことです。「この線の中における海上局地紛争に対応できる戦力を持たねばならない」。これもセンセーショナルな内容でした。

1992年に領海法ができた。中国の陸上領土は大陸だが、その他台湾、魚釣島を含む、西沙、南沙等すべて中国に属する法律です。これも本当にびっくりしました。第一列島線の中はすべて中国の内海化されるのではないかと。こういうものがどんどん出てくると、我々としては中国が怖い。何を考えているのだろうか、と。そこまで中国に取られてしまうと、我々のシーレーンはどうなるのか、石油はどうやって運ぶのか、と危惧する。そしてアメリカ日本、東南アジアなどで中国脅威論が出る。怖いと思ったことは事実です。

96年に台湾にミサイルを打ち込んだ時も、「中国はこういうことをやる国か」と思った。何を考えているのか分からない面が中国にある。安全保障上から中国の脅威を感じたことがあった。逆に、中国は、「日本がアメリカと手を結んで、中国を包囲しようとしている」と見る。そしてガイドライン等でここ2、3年押し問答をしている状態です。

軍事力は20年遅れてるとは言え、そういう思想で海軍力、空軍力を強化している。これをどう話し合って信頼関係を作ろうとするのが防衛交流ですが、仲々信頼関係はできない。いつも、お前のこれが悪いと言い合っている。日米安保については、中国は必要と見ている。これを切ると、日本が一人で動きだす。しかし、日米安保の中で、中国の国内問題である台湾について文句を言うのは許さないという姿勢です。アメリカと台湾は、台湾関係法を結んでいて、もし何かあれば、この前のようにアメリカの空母が出てくる。その時、日本がある程度支援するのがガイドラインだが、これは中国からみると、とんでもない話になる。しかし、何かあった時、日本が出ないと、アメリカに日米安保を切られる。そういう難しい状態です。

最近、TMDの話が出てきた。通常戦力は20年くらいの差があるが、今の段階で日本にとって一番怖いのは、核弾頭をつんだ長距離ミサイルです。北朝鮮にも能力があるが、中国にもある。これに対しては、日本は無防備です。もし、撃ってきたらアメリカに撃ってもらうという抑止力に期待している。そうなると、テポドンのようなミサイルに何かバリアーがいる。そのバリアーがTMD=ミサイル防衛網です。これはものすごく金はかかるし、本当に役に立つかも難しい話です。中国から見ると唯一影響力を及ぼすことのできる核について、日本が安全になってしまうと、マイナスと思う。そして、そのミサイル防衛網がどこまで入るのかも心配している。台湾は入るのか、等という話です。この辺が、日米中で問題になっています。

【討論】

日男  台湾の総統選挙の時、中国はミサイルで脅した。20年くらい通常戦力の差があるということだが、台湾を武力統一する可能性が、10年、20年くらいの間にあるのか。

宮崎  いつとは言えないですね(笑)。台湾は今すごく強い。アメリカがF16を 150機、フランスがミラージュを60機与えた。これはすごく強い戦闘機だ。中国もロシアからスホーイ27を購入したが、まだ50機だ。これからライセンス生産をして 300機体制にするというが、いつになるか分からない。純軍事的には、中国が今の台湾を占領するのは不可能に近い。ただ、台湾は島だから、例えば潜水艦で封鎖して補給を断ち、物が入ってこないようにすれば干上がってしまう。そういう脆弱な面もある。総合安全保障でいえば、弱点が多い。

日男 先月、軍の幹部の人にあった時、通訳の人は、大陸の人が来たら台湾はひとたまりもない、と言っていた。補給に弱く、資源がないから。

宮崎 しかし、台湾関係法がある。アメリカの空母がその前に来てしまえば話が変わる。中国から見るとそれはできない。

「中国のための軍人が少ない」

日男 情報収集の際、秘密に活動すると公安からマークされたり、難しい面があると思う。どうしたらいい情報が集められるか。

宮崎  それは言えないなあ(笑)。行動は制限されるし、盗聴や尾行は始終受けている。これは日本も外国も同じで、日本にいる中国の武官は、外事警察にマークされている。これは当たり前のことです。駐在武官は、国家が交換した公然たるスパイですから(笑)。しかし、やりすぎると、「お帰り下さい」と言われる。イエローカードくらいならいいけど、レッドカードなら退場です(笑)。旧ソ連では毒を盛られるということがあったらしいが、中国では命はとられない。酒はいっぱい飲まされましたが……。旧ソ連のケースでは、日ソ関係が悪い時に、女の子が写真を撮ってくれと言うので撮ったら、女の子がスッといなくなり、背後の軍事機密施設を撮ってしまった。そういうこともある。だから、駐在武官は、女の子を写真に撮ってはいけない(笑)。

中男  中国の軍人に会って、プロの軍人はどれほどいましたか。私は、共産党のための軍人が多く、中国のための軍人は少ないと思います。普通の国の軍人と同じような考えをもった人、政治がどう変わろうと、国を守るのが自分の仕事と思っている人のことです。

宮崎  政治的には最高レベルの人がいる。私も中国語が話せるのですぐ打ち解けて話しますが、自分を出さない人がほとんどです。プロの軍人というよりは、政治的に固い人が多い。ただ、ケ小平が作って12年になる国防大学を出た人は極めて頭脳明晰です。軍事の話は軍事で答えてくれるし、戦略の話は戦略で、政治の話は政治ときちんと区別して話ができる。若い人にそういう人が多く、年配の人ほどその区別があいまい。急に怒りだすとか。

中男  軍の階級より党の階級の方が重みがあると考えていいですか。

宮崎  そう思いました。必ず一人では来ない。話している後ろで筆記をしている人がいるから、話せないんじゃないかと思う。トイレで、「大変だねえ。話すことをみんなチェックしているんじゃないの」と聞くと、「そうなんだ」と言う(笑)。

日男  中国から外国への軍人の留学生は、どういう国に行っていますか。

宮崎  日本にはきていない。アメリカにはかなり行っている。但し、軍服を脱いでシビリアンとして、相当いい大学に行っている。軍人として行っているのは友好国ですね。パキスタン、アフリカ諸国等。逆に、国防大学には、アジアの中国の友好国(パキスタン、バングラデシュ)や、アフリカ、中南米から来ている。「日本から国防大学に留学させてくれ」と言ったら、「ノー サンキュー」と言われた(笑)。アメリカもやっていない。ドイツがやろうとしているので、これが突破口になればいい。

「戦略論」を学べない日本の学生

日男  大学で話をすることはないですか。

宮崎  誘われれば行きますが、誘われないので(笑)。戦略論や安全保障問題論は、どこの国でも大学に講座がある。アメリカの学生には、アメリカのアジア戦略はこうすべきだとか持論をもっている学生が多いが、日本にはそういう学生がいない。なんかタブーみたいになっている。

日男  意見を持つ人が女性にもてると増えるんですがね。もてないからねえ(笑)。

宮崎  国際関係論でも、国連論などはやるが、戦略論がはずされている。経済と安保を総合してやるべきなんですが。

日男  戦略論の講座を持つ大学は、防大以外にはないですね。

日男  軍事の話をすると右翼と思われるし、タブーがあると思う。

宮崎  第一次大戦から冷戦終了くらいまでの歴史をきちんと勉強する必要があると思う。

日男  本を書く人が、右であったり左であったりするから、どの本を読めばいいか分からない。

中男  基礎教育がしっかりしていないからだと思う。高校までの教育で終わっている。日本の大学を受験する時、日本の教科書を読んだが、第二次大戦になると極端に少なくなる。10ページあるかないか。中国の教科書にはかなりの量があった。どっちがいいかは別として、ある程度のことを高校までに教えてあげないと、大学生になって議論をしようと言っても、せっかく大学に入ったのだからもうしたくないという感じ。

日男 中国の教科書は戦争のことを細かく書いていますね。あれをしっかり学ぶと反日感情が生まれませんか。

中男 歴史の見方をまず教えなくてはならないと思う。その上で、教科書に書いてあることが必ずしも正しいわけではなく、自分で考えることが大事と教えれば、それほど反日的にはならないと思う。フランスとドイツでも、歴史を一つの学問として教えていると思う。日本は、あまり教えたくない。教えると罪悪感を感じる。「自虐史観」と最近言うが、自分の父親が悪い人と教わっても、一生罪悪感と共に生きていくのか。人によって違うと思う。私も、色々教えられ、北京の抗日戦争記念館と南京の大虐殺記念館に行ったが、これは日本にきてから、日本の学生といっしょに行った。昔そういうことがあったからといって、隣の学生と喧嘩するかと言えば、そういうことはない。広島の記念館にも行ったが、色々な教育を受けた方がいいと思う。

日本は世界で2番目の軍事力を持って何をしたい?

中男  周辺国で本音で怖いと思われるのは北朝鮮しかない。まさか中国から日本にミサイルが飛んでくるとは、今のところ考えられない。台湾に向かっての可能性はあったが。北朝鮮だけが怖い国だとするなら、いまのような軍事力を必要とするのでしょうか。なぜ莫大なお金を使うのか。アメリカは世界の極地戦争に対応するのに軍事力を維持するのは分かるが、日本がなぜ今後も莫大な軍事力を持ちつづけなければならないのか。日本人も分かっていないのではないか。

宮崎  冷戦の時は、アメリカと連携してソ連と戦うという前提があった。ただ、空母のような攻撃的なものは持たず、潜水艦を探す能力など、アメリカの戦力を補完するものだった。冷戦終了後は、使い道がないといえばない。となると、戦略が必要になる。それにはこれから世界がどうなるか、日米安保が本当に大事なのか、等色々な戦略があっていいのだが、それがないので混乱している。しかも、バブルが弾けてそれどころでない、という状況です。防衛費はどんどん減っています。それはいいと思う。ビジョンがないというという批判があるが、アメリカにもないんです。先が見えない時代をどう読んで、どう平和を創造していくか、それを話し合う時期だと思う。

中男  小沢一郎さんを除いて、政治家が軍事を口にしない風潮がある。中国は、台湾を脅すというビジョンがある。そして海軍力、空軍力、軍の近代化をすすめようとしている。また、南太平洋に力を入れるつもりだと思う。日本は、どこでどういう軍事力を強化するというビジョンはない。TMDのようなばかばかしいものをやるのであれば、まさにビジョンがないと思う。私は、日本だけがビジョンがないと思う。ドイツには国連軍に入るというビジョンがある。なぜなら歴史の問題はもう精算したから。そして、軍人や軍事力をEUに出して、最終的にはアメリカを追い出して、ドイツとフランスだけでEUを守ろうとしている。私はそう見ている。アメリカは、各地に空母を置いて、警察力を維持しようとしている。日本のビジョンは見えない。世界で2番目の軍事力を持って、何をしたいんですか。

自衛隊はソフト面が遅れている

日女  日本と中国の間に軍事力で20年以上の差があるという話にびっくりしました。日本は、どこかの国が攻めてくれば、あっという間にダメ。中国には核兵器がある。日本の自衛隊はあらゆる法律に妨げられていて出動できない。本当に20年の差があるんですか。普通の国民は、いざという時に、国土を守れないんじゃないかと思っていると思う。

中男  魚雷を探す能力はアメリカ以上ですよ。

日男  攻められ方次第では。

日女  ボタン一つでミサイルが飛んでくるわけでしょう。

宮崎 それをさせないために、日米安保がある。それをやられたらもうおしまいですから。それ以前に、色々なレベルでの紛争がある。核以外のいろんな軍事力を各国は持っている。20年の差というのは、兵器の差のことです。しかし、それがすぐ出動できる体制にあるかというと、非常に縛りが多い。山火事があっても、すぐヘリコプターが飛べない。県知事の要請がないとダメなんです。そういうソフトの面で日本は非常に遅れています。

日女 緊急自体は総合力の戦いですよね。どんなにすぐれた探知機があってもソフトがないと動けないのでは。

日男  意思×能力が軍事力と言われる。いくら兵器があってもやる意思や動ける法律がなければ、軍事力にならない。また、軍事力は予算だけで比較できない。日本は徴兵制がないので、予算の大半は給料などの管理費で、装備費で比較すれば、中国と変わらないかもしれない。しかも、購入予定の兵器は何年も先の分まで発注済みで、TMDのような値段の高い新しい兵器を購入すると言っても予算の余裕がない。

家族は中国を好きになって帰国

中男  不信感のことですが、武官の仕事だから、出会った中国人に不安感を感じた面もあると思う。中国の武官もそう感じるかもしれない。戦争の経験のない人がこれから大半になるから、また変わると思う。仕事上の立場を別として中国をどう思いましたか。

宮崎  妻と子どもを連れて赴任したのですが、家族は中国を好きになって帰国しました。子どもは、中国人といっしょに学んだり、妻は、中国人といっしょに買物に行ったりしました。家に呼びたかったのですが、こういう仕事をしていると絶対に来てもらえない。しかし、外でごはんは食べる。話をすれば段々打ち解けてくると思う。若い人の抵抗感は少なくなっている。また、日本のトレンディ ドラマを中国の若い人は見ている。これを見て、若い人は、日本はいい国だと言ってくれる。

中男  中国に行くには、お酒が強くないといけないということはありますか(笑)。中国は、昼のビールは当たり前、お酒が飲めないと仕事にならないですよね。

宮崎 中国人は酒の席で乱れることをすごく嫌がる。寝たり倒れたりするのは失礼になるので、飲めない時は最初から飲まない方がいい。飲むなら最後まで飲む。中途半端はよくない(笑)。ところが、少数民族の人と飲むときは倒れないといけないんです(笑)。倒れると、よく接待したと喜ぶんです。内モンゴルなんかがそうです。恐ろしいですよ(笑)。

中男  中国人は、飲む前に、牛乳、肉、薬なんかを入れておくんです。仕事ですから(笑)。結婚式の時は、新郎の代わりに飲む役の人がいる。酒を飲める男はいい男と言われる。

中男  新聞に出るような中国の上層部の人の印象はどうでしたか。名前はあげなくていいですから(笑)。

宮崎  人による。会議の時いやな人でも、隣でお酒を飲むとけっこういい人だったり。お酒の席で嫌な思いをしたことはない。会議の時は、本当に辛辣で、筆記するのも嫌な時もありました。

中男  例えば? 「侵略」とか。

宮崎  侵略も辛いが、何を考えているのか分からないのも辛い。また、日本はどういう立場で安全保障を考えているのかを明確に答えられないのも辛い。「そうじゃない」と言いたくても、言えない時。

中男  大使館の仕事で他の省庁の人と利益が一致しないことは。

宮崎  それはあるでしょう。

中男  その時はどうしますか。どこの省庁が一番一致しないですか。

宮崎  嫌な質問ですね(笑)。日本は縦割り社会で省益がありますから。ただ、防衛庁とは少ない。他の省庁同士は多い。経済関係などは仲々難しい。

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