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パワー・ポリティックスから見たアジアの国際情勢

【第4回 中国現体制、崩壊の読み方】

中嶋嶺雄 逆に言うと、いまの「改革・開放」の中国、その内面には大きな空洞があったということを意味するのですね。それは当然です。いままで毛沢東と言ってきたのが、今度は掾iトウ)小平。しかし政治の論理からすれば、毛沢東さんと搶ャ平さんはまったく水と油で、文化大革命を見れば明らかです。それを一本の線でつないで、今度は江沢民さんだと言うんでしょう。

そういう正統性の根拠自体にもいろいろ問題があるところへもってきて、ものすごく貧富の差はある。特権階級は汚職でしょっちゅう摘発されるような、急速にマネー・オリエンテッド(拝金的)な社会になっている。そのなかで、他の一般の人たちはどうするかということになったとき、寄る辺がない。それをみんな法輪功に求めたのです。

ですから、これはいまの中国社会がいかに病んでるいかということですよ。

―― 本来であれば、それを民主主義の手法によって自浄していけばいいのにもかかわらず、その手段がないということになっているんですね。

中嶋 そうです。ですから、これも同じように徹底的に押さえつけるでしょう。しかしこれは、押さえつければ押さえつけるほど、いっそう広がるような要素を持ってしまっていますから。

これらを考えると、中国は去年建国50周年でしたけれども、対内的には法輪功に手を焼き、対外的には台湾問題がある。台湾との統一は中国にとっての最大の国家目標ですが、あるいは民族統一のシンボルなのですが、実際にはますます台湾は手の届かないところへ離れていっているのですから。

―― 台湾との統一は、常識的には不可能ですよね?

中嶋 だから、対内、対外ともそういうジレンマがあればあるほど、自らのストラテジー(戦略)を強化して、世界戦略を練り上げていくことにならざるをえないのが中国の現状です。しかしこれは、ある意味では虚勢を張っているということでもある。一人あたりGDPが800ドルぐらしかないのに、そんなに軍事を増強してどうなるのか。さらには情報化が世界的に進展する中で、その影響も受けないわけにはいかない。

それらの要素を併せ考えてみると、やはり今の共産党一党独裁体制は、やがては崩れていくと思います。先にも触れたように、下からデモが起こってというようなことは絶対に許さない体制を、軍事的あるいは公安警察を使って維持しています。しかし、指導者のなかにそういう意識の変化が出てきたときは、下からの要求と上からの意識の転換が相乗効果となって、中国が急速に変わっていくこともあり得るでしょう。

ソ連崩壊のときがそうでしたね。まさにゴルバチョフが出てきたからです。これが決定的でした。あれほど軍事力と警察力によって、巨大な赤い帝国をつくっていたというのに、ほとんど犠牲も払わずにあっという間に崩壊したという教訓。東欧諸国もそうですからね。

そう考えると、中国の場合はそんなにドラスティックにいかないにしても、やがてその時期は来るし、私はそれをもうワン・ジェネレーション、すなわちもう15年ぐらいのことと見ています。少なくとも、20年30年後にいまの体制の中国が維持されるということは、非常にむずかしいと言えるのではないでしょうか。

そういう可能性を含めて考えると、20世紀は「革命と戦争の世紀」でしたが、残念ながら21世紀にスパッとミレニアムが変わることにとって、すべてが更新されるというようなわけにいかない。いわば20世紀の、ある意味では負の遺産を抱えたまま、特にアジアは21世紀を迎えようとしているのだということを自覚しておかなければいけないと思います。

それからもう一つアジアについて申し上げたいことは、この10年ぐらい、非常に「アジアの世紀」だと持て囃されていました。中国はそのトップでした。ところが、アジアがはたしてそれほど成熟していたのかという問題が問われている。

そこを襲ったのが、例の97年の香港返還直後に起こったアジア通貨危機です。短期資金がタイのマーケットを襲い、マレーシア、シンガポール、韓国、香港にも波及し、アジアの通貨は軒並みガタガタとなった。これは残念ながら、やはり襲われるだけの隙間があったということなのです。

考えてみると、アジアにおいて一応成熟した民主主義国家となっているのは、日本と台湾ぐらいです。別の問題として日本の政治があまりにも貧困だという議論はありますが。

―― 足腰がしっかりした国家ということではまったくそうでしょうね。

中嶋 あとはほとんど開発独裁なんですよ。シンガポール然り、マレーシア然り、この間までインドネシア然り、フィリピンもそう。みんな言論の自由を拘束して、政府批判を許さない。そして、ビルだけはピカピカしたものが林立する。空港もハブ空港がどんどんできる。開発独裁ですからやりやすい。しかし実は長期的に見ると、非常に足腰が弱い。そこをアジアは問われているのです。

簡単に申し上げれば、ちょっとアジアがいい気になりすぎたと思うのです。もうヨーロッパは要らない、アメリカも要らないと言っていたが、決してそんなことはない。その教訓と反省を、きちんとわれわれは考えていかなければいけないと思います。

もちろんアジア的価値には、欧米先進国にない優れた面もある。しかし欧米近代が持った大きな普遍的な価値……民主主義とか人権とか、そういうことを含めて、やはりアジアにはまだまだ非常に不十分なところがあります。そこを今後アジアがどう考えていくかということが大きな問題です。そして、その先頭に中国のいまの独裁体制があるということですね。

中国の「改革・開放」もほとんど外部資金によって、沿岸地方から開発されていますが、それはやっぱり見せ掛けなのです。内部的な蓄積の下で行われた「改革・開放」ではないというところに大きな問題がある。そして多くのアジア諸国は、似たりよったりですね。

それらのアジアが、今後の産業構造の急速な変化、あるいは情報環境の急速な変化のなかで、どうなっていくかということは、非常に大きな問題だと思います。

その点では、アジアにとってアメリカの影響力というのは無視できないし、アメリカとの関係をどう調整していくかということが、今後のアジアの大問題ですね。というのは大陸中国とは常に基本的に、ときには決定的に違うところも出てきますから。そこをどう選択していくかということではないでしょうか。

(第4回 終)

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