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パワー・ポリティックスから見たアジアの国際情勢

【第3回 日本は自由と民主の主張を】

中嶋嶺雄 日本に視点を移せば、そういう点に対し日本はもっときちんと自分の意思を言わなければいけない。たとえば2000年7月に沖縄サミットがありました。数百億円も使って準備したのはいいのですが、外国の首脳は議論に全然力が入っていない。

なんのためのサミットか。しかもせっかくアジアで開かれているというのに、日本はアジアのいま一番肝心の問題、沖縄の目と鼻の先にある台湾海峡の安全について一言も発言しようとしない。

それに触れると中国がまた何を言いだすかわからない、中国を怒らせてはいけないと、もっぱら揉み手をして下手に出て、厄介な問題は全部回避してしまいました。だから空気の抜けたサイダーのような沖縄サミットは、意味が無いから世界のメディアはほとんど報じなかった。これではむしろ、日本外交がいかに主体性がないかということを晒す場となってしまったわけです。

―― あのとき、ロシアのプーチン大統領は中国、北朝鮮を回って来ました。クリントン大統領は中東和平の現場からまさに駆けつけてきた。そのように国際政治が激しく動いているなかで、「IT憲章」というのは間が抜けて見えましたね。

中嶋 それから、最近の朱鎔基首相の来日。テレビにお出になったりして、それなりに江沢民主席とはちがったフィーリングを与えていったということは、私もよかったと思います。しかし、肝心の朱鎔基さんは、日本に来てその後すぐ韓国に行きましたね。

私はたまたま朱鎔基さんがソウルに来たとき、アジア太平洋大学交流機構でソウルにいました。朝鮮半島はこのところ国際政治の面ではホットですから、韓国もむしろ日本以上に朱鎔基さんの訪問を大いにプレーアップした。それを韓国の現地で見ていると、朱鎔基さんにとっても日本は前座で、むしろメインは韓国であったというような感じでしたね。

―― 朱鎔基首相もあえてそういう演出をしたのではないでしょうか。

中嶋 そうです。現に、いまアジアの国際政治のスポットは明白に朝鮮半島に移っているでしょう。ここにも日本の外交の要が問われていると思いますね。いったい日本はなんであるのか、と。

―― 中国と朝鮮半島が強力に結びつく関係になることは、これはもう2000年単位の歴史で見ても、日本にとっては非常に脅威となる震源地ですね。

中嶋 そうです。大陸中国と島国の日本、その狭間にある朝鮮半島は非常に複雑な国際関係心理のなかにある地域で、しかもそれは単に戦後の問題ではなく、歴史的にずっと問題があります。だから正直なことを言うと、南北朝鮮の問題も、仮に南北統一が実現した場合、そう簡単に日本は喜んでだけはいられないという問題があります。

そのときに日本はいったいどうなるのか。仮に大陸がその背景にあって、南北朝鮮が統一した、ということであれば。

―― 日本は簡単に言えば孤立するということになりますよね。

中嶋 そうですね。ですから、日本はそのときにアメリカとの関係をどうきちんとするか。アメリカも朝鮮半島や中国には、今度はアメリカ自身のパワー・ポリティックスの立場から関心がありますから。もし日本がほとんど発言もしない、黙っているだけということになると、さっさと日本を越えて、アメリカの国際政治のパワー・ポリティックスで先に進んでいくことになる。

そこで私がかねてより強調しているのは、やはり自由と民主主義が大事な共通項なのだということです。この価値観で分けると、中国や北朝鮮とアメリカは手を組めないわけです。日本は、そこはきちんと認識し主張していかなければいけない。

社会主義、あるいは共産主義が望ましい体制ならばともかく、そうではないということを、20世紀の歴史が実証したわけです。ですから21世紀は、これらの社会主義、共産主義国家が転換してくれなければ困る、と日本は明確に言わなければいけない。それは歴史の正しい発展なのですから、それまでは手を緩めてはいけない。そして一方、それまではきちんとした抑止力もつくっておかないといけないということです。

私は、アジア全体がそのような方向へ歴史の糸車が回っていく可能性は、十分にあると見ています。中国がこれからも長期的に共産主義や社会主義では、経済はうまくいかないし、人間の自由なり、個性が発揮できないということはわかりきっているわけです。ですから、それはやがて崩れざるをえない。

その崩れかたですが、かつての天安門事件のような要素は内在的には常にある。ただし、それを武力で抑えている。しかし興味深いことに、その後を見ると、最近は法輪功という新興宗教的な気功集団、その心身鍛練法、道教的な原理があっという間に広がってしまった。

―― じつは私には実感できないようなスピードで、その意味がよくわからないのですが。

中嶋 法輪功というのは91年頃に李洪志という、いまはアメリカにいる指導者が、言わば伝統的な心身鍛練法にプラスして、彼自身のある種の哲学を吹き込んだわけですね。決してそんなにオーソライズされたものではないにもかかわらず、あっという間に広がりました。

いま中国13億人の人口に対して、7000万人の信者がいるといわれています。共産党員が6300万人で、だいたい20人に一人ぐらいですが、都市に多いですから、都市は数人に一人は共産党員の社会です。それ以上に法輪功まがいの集団が増えてしまっています。

これはいまの中国の指導者にとってもショックだったでしょうね。あれほど共産党体制を擁護するために「血の犠牲」をたくさん払ってやってきた。にもかかわらず、あっという間にこの10年ぐらいで法輪功が蔓延してしまった。

逆に言うと、いまの「改革・開放」の中国、その内面には大きな空洞があったということを意味するのですね。

(第3回 終)

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