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パワー・ポリティックスから見たアジアの国際情勢

【第2回 中華思想は変わっていない】

中嶋嶺雄 中国は革命を通して社会主義になったのだから、従来のパワー・ポリティックス、すなわち「中国を中心とする世界支配の構造」というものを、すっかり捨て去っているかと思うと、まったくそうではない。その体質は綿々と続いているのです。

毛沢東の時代、あるいは掾iトウ)小平の時代が社会主義的な平等なシステムだったかと言えば、まったくそうではない。毛沢東王朝であり、搶ャ平絶対体制でした。

つまり、伝統的な中華帝国、王朝体制、あるいはアジア的専制というものが、まったく変わらずに残っているわけです。いま江沢民主席もそれに近い体制をとっています。

その対外的な反映として、中国の世界戦略というものがあり、中国の出方がある。

これらの視点から見ると、日本はまさに中国に朝貢する対象と――中国はずっとそう考えてきたわけですから、それと同じような秩序を――今日現在においても中国は考えているのではないでしょうか。

一方、国内的には軍事力を強化し、国内治安のためには天安門事件のようなことを引き起こしています。いま中国共産党に入党する人たちは、共産主義や社会主義を信じて入党するのではない。ですから農民や労働者ではなく、自分たちの立身出世のため、あるいはその階層秩序のなかでエリートが入党するわけです。

すなわちイデオロギーとしての社会主義や共産主義が国を支配しているのではなく、統治システムとしての中国共産党独裁体制が国を支配しているわけですから、それが崩れては困ると、あらゆる手を使っているわけです。

だから天安門事件に象徴的に示されたように、民主化を求める人たちを徹底的に抑圧する。チベット自治区、新疆ウイグル自治区、そういう少数民族地域が中央から少しでも離れようとすると、徹底的に抑えつける。いっさいの言論の自由も、その点ではない。そういう体制をとっているのが中国です。

そのうえにさっき申し上げたような、中国の持っている潜在的な対外膨脹主義、中華思想があるわけです。

それらが複合的に組み合わさって、最終的には、軍事力を強化し「強い中国」を目指そうという姿勢につながっていく。

するとアメリカが目障りですから、アメリカを単独覇権とみなすことになる。それで日本とアメリカの間に楔を打って、中国の21世紀における世界戦略に邪魔になるものを、一つひとつつぶしていこうという感じがどうしても見えるわけですね。

―― いくつかの要素が複合されてそのような戦略につながっていくのですね。なぜあれほど「反米」となるのか、そこがわかりにくかったのです。

中嶋  天安門事件以降、中国の軍備膨張は非常な勢いですね。この点も日本はしっかり認識しておかなければいけない。毎年二桁の国防費増強をしています。この10年のうちで一番多いときは22.4%、これは対前年比ですよ。日本が防衛費を国家予算のなかで、仮に1〜2%増やしたら大騒ぎでしょう。ところが中国は対前年比二桁も増やしている。99年も15%伸びています。

しかしその一方では、中国は一人あたりGDPがまだようやく 800ドルぐらいです。台湾と比較してみると、片方は1万5000ドルぐらいになっている。一人あたりの豊かさがこんなに違うにもかかわらず、軍事に関しては突出したお金をつかっているわけですね。

本来は歴史の必然として中国全体をもっと豊かにし、市民社会的なものをつくっていかなければいけない。それには当然言論の自由もなければいけないし、一党独裁のシステムを緩やかにしていかなければならない。しかし絶対そうはせず、現実にしていることは、軍事力をどんどん増強するという正反対のことです。

中嶋 さらに正確に言うと、中国の国防費および軍事力全体は不透明なのです。だから多いほうの推計では、実際はさらに10倍の軍事費があるのではないかという説もあります。ミサイル取引であるとか、核開発であるとか、ロシアからたくさん戦艦を買い入れていますが、それらは国防費のなかには出てこないわけです。

先ほど述べたのは、全国人民代表大会、つまり一院制の国会で公表される数字であって、それでさえもそれだけ伸びているということです。

ではそうすると、いったいなぜそんなに中国は軍事力を増強するかということですね。ここが一番の問題点。

―― そこが日本人には非常にわかりにくいのです。それがなぜ必要なのかということが。

中嶋 そうなんですね。わかりやすく言うと、いま中国を攻めようとする国などは世界中のどこにもない。にもかかわらず、あれほど国防費を増強する。そして折に触れ、日本は軍国主義だと批判する。

むしろ日本は「平和ボケ」とも言えるぐらい、非軍事的な色彩が強い国であって、海外侵略を武力によって行おうとか、軍事力で物事を解決しようなどとは誰も思っていないことは明白ですね。にもかかわらず、中国は日本を批判し、一方自らはそれだけ軍事力を増強している。

この矛盾、ここに問題があると思うのです。 一体なぜでしょうか。それは、やはり中国は軍事力によって国威を発揚しようとしているということなのです。そして、軍事はまさにパワー・ポリティックスの原点です。

だからたとえば、96年3月台湾の総統選挙のときには演習と称して海峡にミサイルを打ち込んだりしましたね。あるいは、大軍事演習を定期的に行う。それらを見ても、やはりつねに軍事力をちらつかせている。

物事を解決するための手段として、あるいは威圧する手段として、軍事力を最も有力な手段として用いている。ここにいまの中国の体質がある。そして、先に述べたように、中国は紛れもない共産党の一党独裁体制である。

と、これらのことを考えると、まさにアジアは中国が中心となるパワー・ポリティックスの「磁場」であると言ってもいい。ここは重要な点ですね。それに対して「そういうパワー・ポリティックスはもう時代遅れだから、やめてくれ」と言って聞く中国ならいいのですが、そうではないわけですね。

ですからそれに対し、周辺諸国がきちんとした防衛協力、防衛体制をつくっておかなければならない。つねにそのことを意識しておかなければなりませんね。当然、日米安保もその一環です。

―― アジアは中国が中心となるパワー・ポリティックスの「磁場」であるというのは、意外と認識されていない重要な点ですね。

(第2回 終)

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