Make your own free website on Tripod.com

パワー・ポリティックスから見たアジアの国際情勢

身近であるがゆえに、誤解されているアジアの本質。
中国の急激な軍備増強をはじめ、日本が知っておくべき事とは何か。
パワー・ポリティックスから見たアジアの国際情勢を、その第一人者に問う。(聞き手:丸山 孝)

【第1回 残っている共産党の独裁】

―― いま非常に動きの激しいアジアの国際情勢ですが、日本人はその潮流をどう見ればいいのでしょうか。特にパワー・ポリティックスという視点から、日本が認識しておかなければいけない点を教えください。

中嶋嶺雄 20世紀が終わり、文字通り新しい世紀に入ったわけですが、20世紀の最後の10年は、1989年のベルリンの壁崩壊を境として、東西冷戦構造が崩壊した時代だと言われています。

しかし、アジアに関するかぎり、実は冷戦はまだ終わっていないのです。この点を十分に認識しておかなければならないのではないでしょうか。

冷戦とは何かをわかりやすく言えば、「共産主義」と「資本主義」、あるいは「自由主義」と「全体主義」ないしは「社会主義」との対立です。実際に熱戦化することはないまでも、国際政治のあらゆる分野で、この対立構造というものが決定的な意味を持っていた。それが冷戦でした。

したがってアジアでは、まだ共産党の独裁体制ですべてを統治している中国もあり、北朝鮮もそうです。ベトナムをはじめとするインドシナ三国も、経済的には市場経済がどんどん入っているとはいえ、国家の体制、政治のシステムとしては依然、社会主義体制をとっています。

この事実を見ると、一般に言われているような冷戦構造が、このアジアにおいては解体したと言うわけにはいかない。世界戦略の決定的な違い、国の体質の決定的な違いが、依然として残っているわけです。

それにもかかわらず、東西冷戦がなくなった、ポスト冷戦だ、とあまりにも強調されるがゆえに、アジアも冷戦体制がなくなっているかのように、一見思われてしまっているのです。そこに、大きな問題点があると思います。そこを見誤っているために、日本外交はいくつもの間違った対応をしてしまっているからです。

冷戦がアジアにおいては終わっていないという具体例を、いくつか挙げてみましょう。まず第一に、自由市場経済は果たして実現しているでしょうか? 中国は「改革・開放」で少しは市場経済に入ったと言われ、90年代初頭には海外の資本が投資すれば、中国経済はますます発展し、海外のビジネスチャンスも増えるというような幻想がすごく膨らんだ。

―― 非常に言われましたね。

中嶋 香港も中国に返還されれば、広東省と一体となって華南経済圏の中心になり、新しい時代が開かれるという幻想があった。

しかし中国に投資した商業資本は、日本からもたくさんありましたが、みんな失敗してしまった――というより、言わば相手に全部吸い取られて捨てられたという面があるわけです。ようやくその体質が、日本人もわかってきましたが。

一例を挙げると、たとえば広東省に広東国際信託投資公司という一種のノンバンクをつくり、それを「改革・開放」の窓口としてどんどん外資を導入した。しかしみんなうまくいかなくて倒産した。それだけ大きなものが倒産すると、日本の銀行も香港を基盤として、おそらく十数億米ドルに上る焦げつきを出していると思います。推計ですけれど、1000億円を遥かに上回る金額ですから、当然非常に苦慮しているわけです。

しかしそれについては何の保証もない。むしろ中国側は、市場調査もしないで貸したほうが悪いと平気で言うわけですね。

結局、これはやはり相手が共産党の独裁体制だからということです。資本家から収奪することをもって善とするわけですから。その本質を、みんな忘れていたと思います。そのような問題が依然としてアジアの底流にある。

それから二点目は、むしろこちらこそ大きな問題でしょううが、パワー・ポリティックス、権力政治……国際社会でのある種のパワー・ポリティックスが渦巻く場であることには依然として変わりはないわけです。

たとえばロシアは冷戦に敗れたのですから、アメリカとも日本とも協調してやっていこうとなるのが本来でしょうが、実際はその反対ですね。最近のプーチン政権を見ていると、日本の北方領土問題はもちろん、アメリカの国家ミサイル防衛(NMD)構想の問題にしても、ことごとく反対しているわけです。中国と一緒になって、再びかつての社会主義ブロックが存在するかのような状況が現出していますね。これも重要なパワー・ポリティックスの問題だと思うのですが。

しかしパワー・ポリティックスということからすると、アジアにはまさに歴史的にも伝統的にも忘れてはならないパワー・ポリティックスがあるのです。この点が非常に見落とされていますので、強調して述べておきたいと思います。

アジアには古来から戦略に最も長けた中国という大国の存在があり、中華思想、あるいは「チャイニーズ・ワールド・オーダー」と私は言っていますが、そのような考え方が数千年という歴史的単位としてある。

中国は革命を通して社会主義になったのだから、従来のパワー・ポリティックス、すなわち「中国を中心とする世界支配の構造」というものを、すっかり捨て去っているかと思うと、まったくそうではない。その体質は綿々と続いているのです。

(第1回 終)

Copyright(C)2002- 「日本専門」情報機関(日本の情報の収集と保存)