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拉致問題で衝撃走る在日コリアン社会

(聖教新聞 2002年10月1日)

連載コラム 「アジアの潮流」

野中章弘・アジアプレス代表

「北朝鮮は日本に謝ったのに、なぜ韓国には謝罪しないのか」。拉致事件に対する金正日総書記の発言を聞いた韓国人の友人はそう憤激していた。北朝鮮に拉致されたのは日本人だけではない。パレスチナ人などもいたというし、韓国人にいたっては、約500人が拉致されたと認定されている。彼らの消息が明らかにならない限り、韓国人の怒りは収まらない。今後、金大中政権に対し「今の政策はあまりに生ぬるい。もっと強硬な態度をとれ」という声も高まってこよう。

また今回の報道は在日コリアンにも計り知れないほどのショックを与えた。朝鮮籍の友人からは、「祖国と教えられた国が犯した過ちと向き合いながら、初めて<加害者>としての立場を実感しています。朝鮮人として拉致事件の被害者とそのご家族にお詫びしたい気持ちで一杯です」と苦悩に満ちたメールが届いた。

父親が朝鮮総連の幹部だったという女性は、「裏切られた。拉致はでっちあげという言葉を本当に信じていたのですから……」と沈み切っていた。彼女はまた「拉致された日本人は朝鮮労働党に忠誠心を見せるための人身御供だった。そこまであの国は狂っていたのです」と言い、金総書記を「世間知らずの独裁者」と怒りを込めて非難した。

これまで「拉致など存在しない」と主張してきた朝鮮総連に対する批判も一挙に噴出している。祖国に対する想いは十分理解できるが、長い間、北朝鮮の現実を直視しようとしなかった責任は問われてもやむをえない。今後の対応次第では組織の存亡にかかわる事態を招くことになる。

このような状況下で懸念されるのは、在日コリアンに対する迫害の発生である。朝鮮学校には連日嫌がらせや脅迫の電話が掛かり、生徒たちへの暴行事件も起き始めた。しかし、拉致事件を実行した国家と人々は別である。ましてや日本で民族学校に通う子どもたちには何の罪もない。このような陰湿な「報復」だけは絶対に許してはならない。

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