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063回-衆-予算委員会第一分科会-05号 1970/03/17

○松本(善)分科員 法務大臣に出版妨害問題について伺いたいというふうに思います。

公明党、創価学会の出版妨害事件は、今国会冒頭から重要問題として論議をされておりますので、法務大臣も重大な関心を払っておられるとは思いますが、総理大臣も答弁で、言論、出版の自由は民主主義の基本をなすものであり、政府としても言論、出版が不当に抑圧されることがないように十分配慮をしなければならないというふうに答えておられるわけであります。この民主主義の根本にかかわる重大な問題でありますが、憲法二十一条でもこれを保障しているだけではなくて、特に法務大臣に注意を喚起しておきたいと思いますのは、憲法八十二条で出版に関する裁判が政治的事件とともに公開で行なうことを特にきめておる点であります。これは出版の権利というものが、単に著者や出版社の権利にとどまらないで、国民すべての知る権利に関することだから、こういうふうに明記をされておるのだと思うわけであります。こういう重大な問題でありますので、出版妨害について、そこに犯罪あるいは人権侵犯がある場合には、きびしい態度で対処しなければならないというふうに考えておりますが、法務大臣のこの点についての御所見をまず伺っておきたいというふうに思います。

○小林国務大臣 私ども事実関係は十分承知しておりませんので、軽々に申し上げることはできませんが、出版過程において暴行、脅迫等の事態があれば、これは刑法上の問題として刑事責任を負わなければならぬということになります。人権の問題は別途の問題でありますが、いわゆる刑事責任の問題は、さような趣旨においてわれわれがそういうことがあったかどうかを知る端緒がなければむろん捜査もできないということで、現段階におきましては、私どもは暴行、脅迫等の問題についてはこれを知るような事態になっておらぬ、こういうことでございます。

○松本(善)分科員 私の法務大臣にお聞きいたしましたのは、一般論といたしまして、この言論妨害問題について、犯罪や人権侵犯事件があれば――これはあればですよ、事実はもちろん調べてからでなければわかりませんけれども、これはあればきびしい態度で処理しなければならないのは当然ではないかということを伺っておるわけです。

○小林国務大臣 それはもう当然でございます。

○松本(善)分科員 それからまた犯罪があるというふうに思量するならば、捜査当局はすぐ捜査を開始をすべきであり、これは告訴や告発のいかんにかかわりません。また、人権侵犯事件処理規程第二条によりますと、「事件の調査は、書面若しくは口頭による申告、人権擁護委員若しくは関係官公署の通報又は新聞等の出版物の記事若しくは放送その他の情報によって開始するものとする。」というふうに書いてあります。したがって捜査当局や人権擁護局は、出版妨害事件についても、犯罪もしくは人権侵犯事件があると考えられる場合は、告訴、告発のいかんにかかわらず、また国会で論議をされているといなとにかかわらず、国民の知る権利を擁護するという立場から、捜査もしくは調査をすべきであるというふうに考えますけれども、法務大臣の所見を伺いたいと思います。

○小林国務大臣 これは御承知のように、犯罪は予断や見込みをもって捜査をするというようなことは非常な問題でありますから、検察当局としましては、これは犯罪があるということについての十分の認識を持つだけの端緒がなければやるべきでない、こういうふうに考えておるのでありまして、本件につきましてもさような趣旨からいまのような処置に出ておらぬ。しかし、人権の問題はこれまた多少違うのでありますが、従来人権問題というものは、大体被害者の救済、あるいは被害者、侵犯された者からの申告あるいは要請、こういうことに基づいて発動しておる。こういうことでございますが、今回の事件におきましては、新聞その他においてはわれわれも資料を持っておりますが、関係者からは何らの要請もまだない。こういうことからして格別の調査はしておらないようでございます。

○松本(善)分科員 私が法務大臣にお聞きいたしますのは、現在どうかということではなくて、犯罪あるいは人権侵犯事件があると考えられる場合には、告訴や告発のいかんあるいは申告のいかん、国会で論議をしているといなとのいかんにかかわらず、もし犯罪や人権侵犯事件があると考えるならば、捜査当局や人権擁護局は動くべき性質の筋合いではないかという一般論をお聞きしておるわけであります。

○小林国務大臣 いま申し上げるように、捜査当局としてはそれについての端緒がなければやれない。端緒とは何かといういろいろな問題がありますが、告発、告訴もあればあるいは密告、いろいろな問題がありますが、そういう端緒を得ておらない、こういうことであるからしてそういう処置に出ていないと……。

○松本(善)分科員 私は、現在端緒を得ていないという趣旨の答弁についてはもうわかったわけですが、一般論といたしまして、これは告訴や告発がないからやらないとかあるいは国会で論議をしておるからやらないとか、そういう性質のものではなくて、独自に捜査当局が端緒を得るならば当然やらなければならない筋合いのものではないか、こういうことを伺っておるわけであります。

○小林国務大臣 これはお話のとおりでありまして、端緒があれば当然やるべき問題だ、こういうふうに思います。

○松本(善)分科員 それでは、具体的なことをお聞きしたいのでありますが、この出版妨害事件につきましては、全国の書籍小売り店の大部分を占める八千百二十五の業者を組織しております日本出版物小売業組合全国連合会も、業界人として黙視することができないということを決議をしております。講談社、平凡社、小学館、岩波書店、中央公論社など大手出版社のほとんどを組織しております日本書籍出版協会もこの問題について声明を発表をして、この核心をなす事実はもはやおおいがたいまでになっているという声明を発表をしております。また出版労協とか新聞労連とかマスコミ共闘とか出版報道関係に働いておる労働者を組織する団体も、それぞれこの出版妨害事件について声明を発表をしております。

こういうふうに出版、小売り、そういう言論界に働く非常に多くの人たちがこの問題について声明を発表をしておるわけでありますが、法務大臣はこの問題についてのいろいろな新聞報道や雑誌の報道、そういうものを通じてごらんになって、公明党、創価学会に対する批判の書物の出版が妨害というふうに言っていいかどうか、それまで法務大臣にいま聞こうとは思いませんけれども、この出版が困難であった、そういう少なくも時期があった、そういうことがあったといまお考えでありますかどうか、その点について法務大臣の所見を伺いたいと思います。

○小林国務大臣 いろいろの新聞、雑誌あるいはその他においてあったように言われておる、そういうことを承知しております。

○松本(善)分科員 それでは法務大臣に事実を少しお聞きをしたいというふうに思います。

本日第一議員会館で有志議員集会が開かれました。そこでいろいろな事実が被害者から訴えられたわけであります。その中に、西日本新聞の東京支社の論説委員の隈部大蔵という人がおられます。この人は福島泰照あるいは隅田洋、こういう名前で出版をしておられる方であります。この名前を、ペンネームを使わなければ出版をすることができなかった。いまやっと本名をあかすことができるということはたいへんうれしいことだというふうにこの集会で訴えられたのでありますが、この人の最初の出版はこの本でありまして、「日蓮正宗・創価学会・公明党の破滅」という本であります。これは写真植字で、普通の印刷をすればわかってしまうということで写真植字で非常に秘密裏にやられておるわけです。これは一冊も出ませんでした。一冊も出ません本でありましたけれども、この本の出版契約書におきまして、先ほど資料をお渡しいたしましたが、市販できない場合のことをわざわざ書いてあるわけなんです。備考というところに、市販できない場合はどうするということを書いている。これは出版契約は当然に本が出るということを予想をしてそうして契約をするものであります。ところが契約のときに、本が出ないかもしれない、市販できないかもしれないということを予想して出版契約をしておるわけであります。これはこういう本の出版が非常に困難であったということを何よりも明白に証明をしておると思いますけれども、いまこの事実を私が申し上げて、法務大臣はこういう種類の書物の出版が困難であったというふうにはお考えにならないかどうか、御所見を伺いたいというふうに思うわけであります。

○小林国務大臣 こういうことにつきまして困難であったかどうかというようなことが私からお答えすべき筋のことではないんじゃないか、こういうふうに思います。これはお互いに自由な個人間の契約であったというふうに思うのでありますが、私からこの内容についていま批判すべき段階ではない、かように考えております。

○松本(善)分科員 ここで私どもが事実を示して法務大臣に所見を聞きますのは、まだ端緒を得ていないとか、あるいは捜査は開始をしていないとかということを言われるものですから、法務大臣の所見を、事実を示して、どう考えられるかということを聞いておるわけです。

ここで犯罪が成立するかどうかということを法務大臣に詰めようというふうには思っておりません。しかし、この出版契約書そのものに市販できないことを予想して書いてある。このことは常識的に見て、なるほどそれは出版というのは非常にむずかしかったというふうに思うのが常識のある人間の考えであります。その常識が法務大臣には通用しないのかどうか、すなおにそれが犯罪になるかどうかということをお聞きしておるのではありません。この契約書を示されて、このとおりであるならば、なるほど出版というのはむずかしかったのかもしれない。その感想を聞いておるわけであります。もう一度お答えいただきたいと思います。

○小林国務大臣 これはどうも私の職責上お答えをしなければならぬ問題かどうかということについて、私は疑念を持っておるのであります。

○松本(善)分科員 そうすると、それについてはお答えにならぬというわけでございますか。――それではさらに、この件に関して事実をお聞きしたいというふうに思います。

福島氏はこの第一作、この本が出版ができないようになりましてから――これは出版社も印刷所もつぶされてしまいました。そしてやみに葬られたわけでありますが、その次に「現代のさまよえる魂」という主題のもとに、今度は原稿を書き上げるまでは出版社をきめないで二百字詰め原稿用紙九百枚のものを書き上げました。それがこれであります。そうしてこの原稿のままで出版できなかったのです。これはだてに法務大臣にお示ししているのではありません。これだけ原稿にしても、出版できないという事実があったということの証拠としてお見せしているわけです。これは何よりも物語っています。出版できないのです。そうしてやみに葬られてしまったわけです。ところが、これも創価学会、公明党の知るところとなって、その最高幹部の某が介入をいたしまして、これも断念せざるを得なくなった、これが第二の事件です。

それからさらに、この二冊の弔いの書を出版をするということで、第三の書の「創価学会・公明党の解明」という本が出されたわけであります。これも極秘のうちに印刷して、やっと四十四年の、昨年の十一月にでき上がったわけであります。これもいまでこそ取り次ぎ店が新刊扱いをしておりますけれども、出版したときは、三月上旬までは新刊委託扱いはされないという事態であったわけであります。

ところで、きょう私が法務大臣にお聞きしたいのは、この中での第二の事件、隈部氏の受けた圧迫の内容のことであります。この「現代のさまよえる魂」の原稿を書いておるときに、原稿を書き上げないうちに、創価学会、公明党の知るところとなって、隈部氏の地位に重大な影響を与えることのできる有力者から――これはいまでもその氏名を明らかにしたくないということを言われておる状況であります。公明党についての出版を計画しているのは事実か、もしそうであれば、出版の動機、経緯、内容等について至急手紙で詳細に説明されたい、という内容の親書も来ている。それから自分の親友から原稿の題名、副題、どういう原稿用紙を使っているかということまで情報がキャッチされているということは聞かされている。それで隈部さんは、自分のまわりに創価学会、公明党の情報網が張りめぐらされているという不安とおそれを抱いたという状況でありました。

そのうちに、隈部さんは創価学会の最高幹部であり、公明党の当時副委員長でありました参議院議員の北條浩氏と面会をせざるを得ないということになってきたわけであります。私どもたいへん不本意でありますが、同僚議員の名前を上げなければならない。これは議員としても、やはり出版妨害をするということはできない。この点については、何ら普通の人と同じように、特権はないのだというふうに確信をしております。それで事実を明らかにするために言うわけであります。北條氏とは一面識もないので、面会を隈部さんは断わり続けてきたけれども、連日のように面会を求められる。とうとう四十三年九月十一日に、東京赤坂のプリンスホテルの一室で面会するということになったわけであります。そこで一時間半話し合いました。そのときの事情をお話しいたします。これは法務大臣よく聞いていただきたいのです。これが一体捜査や、あるいは人権侵犯事件として、法務省としても考えなくていいかどうかということをあとでお聞きしますから、よく聞いていただきたいと思うわけであります。

そのときの隈部氏が北条氏からもらった、これは名刺であります。そして会って、そのときの様子については隈部さんがその当時メモにして書いてある。この手帳がメモであります。このメモはどういうふうに書いてあるかと申しますと、北条氏の発言として、「@『破滅』以来の情報収集により西日本の隈部の名前が浮かぶA情報の根拠を示さず(示そうとする気配も見られず)B経済研究者であるから、ふしぎに思っているC民社党は自民党から生まれたもの、自民党は金権政治D人間革命、闘争、青年部の情熱、確信と情熱を繰り返すE参議院選当選については結果論的には追加当選もあり得たが、実際問題としては苦闘であったF別かれぎわに、社と新聞の関係もできたことだから、今後ともお会いしたいGアリでも象は全力をもってつぶす」また、このメモのあとには「備考」として、隈部氏の印象に強く残ったものとして、「A『破滅』については裏付け資料もかなり持っているらしい。また『破滅』に続く計画も最近の情報を得たという。Bそのせいか、執拗に裏側を探るような気配は見えなかった。」としるされておるわけです。

また、この当時の内容を、このメモをもとにして言われたことを隈部氏が手記にしたものをお読みいたします。こういうことが言われたということです。「@初版即絶版となった隅田洋著『目蒲正宗・創価学会・公明党の破滅』以降、この著者が一体だれであるかということについて情報収集してきたが、その結果、西日本新聞東京論説委員の隈部という名が浮かんできた。Aもっとも、あなたは経済担当の論説委員であり、エコノミストとして幾つかの経済の専門書も出していることだし、そういうあなたが宗教を論ずることに対し、私は不思議に思っているのだが……。しかし、『日蓮正宗・創価学会・公明党の破滅』の著者、隅田洋というのが、実はあなたのペンネームであるということが調査の結果ほぼ明らかになったわけだ。Bさらに、あなたが前著の『破滅』に引き続いて、何か公明党、創価学会についての第二の批判書を執筆し、その出版計画を立てているという確実な情報を最近得た。C創価学会は、言うまでもなく伝統ある日蓮正宗を信奉し、日蓮大聖人様を本尊としている世界最高の宗教である。そういうわけだから、創価学会に対する批判は絶対に許されるものではない。また一方、創価学会は、そこらのおかしな新興宗教とは全く内容が違う。Dさらに、創価学会の中でも、特に青年部は、人間革命、闘争心、情熱、確信に非常に燃えていることを強調しておきたい。Eだから、創価学会、公明党を批判するものに対しては、創価学会という象は、アリの一匹といえども、全力をもって踏みつぶすということを十分承知をされたい。」こういうような趣旨のことを言われたということであります。

隈部氏は、まだ出版社もきめていない原稿について、創価学会、公明党に情報がつかまれ、しかも自分の運命に重大な影響を及ぼすことのできる有力者を通じて、北条氏と面会をせざるを得ないという立場に置かれ、さらにいま読み上げましたメモのように、創価学会青年部の情熱を繰り返し強調される。アリでも象は全力をもってつぶすというふうに言われたわけです。したがって隈部氏は、この出版を続けていくならば、身辺や家族への危害、会社での地位の変化が起こるのではないかと心配をしたというふうに訴えております。そして、この出版をしていくためには、家族の疎開も考えなければならないと思い、また当時学生の火焔びん事件もあったので、家の周辺に金網でもしなければならないということを真剣に考えたということであります。しかし、これらの対策もできないし、出版社との最終的な契約もできなかったので、この「現代のさまよえる魂」の出版を断念せざるを得ないということになって、このように原稿のまま残っておるというわけであります。

そして第三回目の著書の「創価学会・公明党の解明」の前書きで隈部氏が述べているように、まさにここには弔いの書として出すということを述べております。出されたわけであります。この「解明」のときには、隈部氏は「現代のさまよえる魂」の原稿のとき以来、考え続けてきた身辺整理に決心がついた。会社での地位の変化も覚悟する。退職ということも覚悟する。家族を熊本に疎開させ、自分の家は、いとこの家族に住んでもらって、自分は身を隠して出版をするという決意で出版を始めたということであります。ところが幸いにも、藤原氏の「創価学会を斬る」に対する公明党、創価学会の出版妨害問題が大きな問題になって、隈部氏の言によれば、奇跡的に助かったということであります。隈部氏はまた、「現代のさまよえる魂」の原稿についての情報が、創価学会、公明党に知られているということが知らされたころから、腰が悪かったというせいもあるけれども、ステッキを常に携帯し、医療用のコルセットをつけて――かたいコルセットです。万一のときに備えたということであります。そして、これは藤原氏の「創価学会を斬る」の問題が大きくなったので、もうだいじょうぶだというふうに思うようになって、初めてやめたということです。コルセットもやめる、それからステッキの携帯もやめるということになったということであります。

出版妨害行為は、こういう深刻な事態を引き起こしております。これは私直接隈部氏からお聞きしたことであります。このような深刻な事態が起こっておる。まず、このいまの事実を私が法務大臣に御報告をした。この事実について法務大臣、一体どのような御感想をお持ちになりますか、お聞きしたいと思います。

○小林国務大臣 これはいま私も初めてお聞きするのです。そして、このような問題についてどういう趣旨でもって法務大臣がお答えしたらいいかどうか、私もわかりませんが、個人としてはいろいろの判断もあります。しかし、大臣としていまここにあなたから初めて報告を聞いて、そしてここに軽々しくこうだというふうな断定は私は適当でない、かように考えております。

○松本(善)分科員 もちろんこれについてはいろいろの人権侵犯事件であるとかあるいは犯罪事件としてもし取り上げるならば、それはあらゆる観点からの検討が必要でありましょう。場合によっては北条氏からもいろいろ聞くということも必要でありましょう。あるいはその他の事情も調べる必要もありましょう。ありましょうけれども、少なくもいまの私がお話をいたしまして、法務省としては黙っていていいというふうにお考えになりますか。ほっておいていい問題であるというふうにお考えになるかどうか。

○小林国務大臣 これは、いまのようなお話をずっと黙っておられたわけですね。われわれは少しも関知をしなかった。知らなかった。これも私もどうかと思いますし、さような重大なあれがあればしかるべき措置をとられるべきではなかったかと思いまするが、いままで、あなたから聞くまで私どもも何も知らない、こういうことでございまして、いまのお話は、私ども法務省の資料としてひとつ承っておきます。

○松本(善)分科員 法務大臣「それで私は一番最初に、告訴や告発、それから申告のいかんにかかわらず、国会での論議のいかんにかかわらず、法務省は人権侵犯事件や犯罪ありと思量するならば動き出すべき筋のものではないかということをお聞きしたのであります。その点について、法務大臣はそうだということを言われました。いま初めてここで国会議員から聞かされた、それまで知らなかったのはあたりまえだと言わんばかりのお話です。それで一体法務省や検察庁や人権擁護局のつとめは済むのか。国会で問題になるまでは一切何もしないでいいのか。これだけ国民が大きく問題にしておる中で、一体問題のある点はどこにあるかということを法務省の中では、検察庁やあるいは人権擁護局は考えなくていいのかどうか。そこのところをお聞きしたいと思います。黙って知らぬ顔をして、国会で問題になってから初めて考えていいのかどうか、そこです。

○小林国務大臣 これは事実いまあなたのおっしゃったこと、報告も初めて私どもは聞いておるのです。しかし、われわれにはこれを知るべき手だてはありません。そんなことをまたそこらへ行って見込みでもってお聞きして回るわけにはまいりません。したがって、私はいま申すように、あなたの話は私どもの今後の考える資料として承っておく、こういうことでございます。

○松本(善)分科員 法務大臣、先ほど人権侵犯事件処理規程の二条を読み上げました。それは、新聞の報道によってもそれを端緒としてやらなければならないということを書いてあるのですよ。それについてどうお考えになりますか。

○小林国務大臣 これは松本先生よく御存じのように、法務省の訓令――新聞等によって知っても調べろというのは訓令でございまして、これは要するに従業員の心得を示した、こういうことでありまして、いわば一般社会に対する責任と申すか、義務をいうたものではない、そういうこともしなさい、こういうことをいったのであります。しかし、いままで大体長い間の人権問題でありますから、これらは大体において私どもが調べろとかあるいは調べるなとかいうことを上から指示したことはありません。それぞれ出先当局の所管になっておりまして、その判断においてやる、こういうことになっております。したがって、これはどういうことをやるかはそれぞれの法務局の担当官の判断においてやっておる。しかもやることは、御承知のように人権問題は単に調査をするだけでありまして、強制権も何もない。お断わりを食えばそのままだ、こういうふうな事柄でありますから、事柄によって調査が非常に困難だということでございます。今日かような大きな問題を国会で論議されておる、こういうことでありまして、もしわれわれの発動、こういうことについて何らかの――いまみなそれぞれそんなことはよく御存じの方々であります。人権問題の要請とかあるいは申告とか、これらの方々がわれわれにそれを知らせるとか、こういうようなことをされておらないということは一つの事実でございますので、その点も申し上げておきます。

○松本(善)分科員 法務大臣、だから私は、告訴や告発のいかんにかかわらず、申告のいかんにかかわらずということを先ほどから言っておるわけです。先ほどの人権侵犯事件処理規程、これは内部の訓令だというふうに言われましたけれども、そのとおりに行なわれてなければ法務大臣が監督すべき責任があるのじゃないですか。

○小林国務大臣 そのとおりに行なわれるのが通常の場合でありますが、いままでの長い間の慣例上そういう、ただ新聞とか雑誌とかいうようなことで発動を大体しない、こういうふうな慣例になっておるのでありまして、これをこの際あえてとがめることもどうかというふうに思います。しかし、これはいろいろ資料によってこれからまたそういうふうな判断をされるかもしれません。しかし、かような問題は、実はいま申すように、慣例としてわれわれのほうから、上からあまり指示しないのが普通でございまして、また必要があればそういうこともあり得ると思いますが、いままではそういうことはしておらない、こういうことでございます。

○笹山主査 時間がまいっておりますので結論を急いでください。

○松本(善)分科員 その点についての人権擁護局長の意見を聞きたいと思います。

○川島(一)政府委員 人権侵犯事件処理規程はただいま大臣が仰せになりましたような訓令でございます。これは私ども事務を取り扱う者といたしましては、事件を調査する、その調査を開始する場合にはどういう場合にするかということを一応定められたものというふうに考えております。したがって、当事者の申告あるいは関係行政庁その他からの通報、それから新聞、ラジオの情報、そういうものによりまして人権侵犯事件として調査する必要があると認めた場合にはそれに基づいて調査をせよ、こういう趣旨の規定だというふうに考えておるわけでございます。御承知のように、人権侵犯事件というのは、人権侵犯によって被害を受けた者を救済するということに主たる目的があるわけでございます。したがいまして、被害者からこういう被害を受けたからぜひ救済してほしいという申告がございました場合には、これは原則として取り上げるということにいたしております。しかしながら、人権侵犯事件のすべてが人権擁護機関によって救済されるのではなくして、あるいは刑事事件あるいは民事上の訴訟などによって救済される場合もございますし、また本人が被害を受けたけれども人権擁護機関のお世話になりたくないという場合もございます。そういうわけで、新聞、ラジオなどの情報だけによって直ちに事件を取り上げるということは、よほどの事情がない限りこれを避けるというのがいままでの慣例でございます。

○松本(善)分科員 最後に、刑事局長に伺いたいのでございますが、この出版妨害事件については、場合によっては威力業務妨害あるいは場合によっては強要、強制あるいは独禁法違反というようなことも言われております。もちろんどのことがどれに当たるということをいま言うわけではありませんけれども、そういう刑事事件になる場合もあり得ると思いますけれども、これについての一般的な見解を刑事局長にお聞きしたいというふうに思います。

○辻政府委員 具体的な事実関係を前提にせずに、どういう場合にどういう犯罪になるかということはちょっとお答えいたしかねるわけでございます。ただ先ほど来お話がございますように、検察官は犯罪の嫌疑があり、それを裏づける十分な証拠があり、かつみずから捜査をする必要があるというふうに認定いたしましたならば、当然犯罪の捜査をすることは申すまでもございません。

○松本(善)分科員 時間が参りましたので、十分にこれらの点について、いまこの場で法務大臣や法務省の当局の諸君に問題を詰めて議論をすることができないのはたいへん残念でありますが、これからの法務委員会その他におきまして具体的な事実をあげながらさらに論議を詰めたいというふうに思います。法務省当局といたしましても、きょう私が申しましたことを資料にするということを法務大臣言われましたけれども、さらにこの全般にわたって、国民の出版をする権利あるいは知る権利というものが妨害をされないように、そのために法務省としても努力をするという方向でやってもらいたい。その点についての決意を法務大臣一言お聞きいたしまして私の質問を終わりたいというふうに思います。

○小林国務大臣 お話しのようなことはその決意でこれからもやる、当然であります。

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