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063回-衆-予算委員会-07号 1970/02/27

○不破委員 わかりました。

次にお伺いしたいのは、それでは田中幹事長がやった事柄ということは、どういう内容のものであるかという問題であります。この点については、実際の一方の当事者である藤原弘達氏から、内容についてはかなり具体的な問題が説明をされております。これは文書でも発表されておりますが、私自身、藤原弘達氏と直接会いまして、自分で事実の調査もいたしました。どういうことが言われておるかと申しますと、まず、十月の四日に藤原弘達氏のところへ田中幹事長から電話があった。竹入公明党委員長からのたっての依頼ということで、何とか「創価学会を斬る」という書物の出版を思いとどまってもらえないかといういわば出版中止の申し入れがあった、これが第一点であります。

第二点は、十月十五日、場所は赤坂の「千代新」という料亭だそうでありますけれども、そこで田中幹事長が藤原弘達氏と会って、こういう内容のものを提案している。これは竹入氏から依頼されたという条件だとして、第一に、もうかなり出版が進行している状況では出すなと言っても無理だろうから、出してもよいが、初版で打ちどめにしてもらいたい。第二に、その出す初版のうち千部くらいは一般に販売をして、残りは全部公明党が買い取るようにしてもらいたい。第三には、したがって初版を何部刷るか、部数と定価を言ってくれれば、その分は支払うようにしたい。こういう内容の提案を十月十五日、赤坂「千代新」での藤原弘達氏と田中幹事長の会見の際に、田中氏から申し入れられたということを藤原氏は明言をしております。そして十月二十三日、同じ赤坂の「のぶ中川」という料亭で再度の会見があったときに、藤原氏のほうからは、これについてはきっぱり断わった、こういうふうに発言をされております。藤原氏は、この問題については、これは国会において証言する用意のある責任ある事実であると、私にも直接話をしました。総理は、先ほど私が引用しました答弁の中でも、私自身幹事長のやっていることはよく知っていると言われて、これは出版妨害あるいは言論の圧迫という筋のものではないと言われましたけれども、いま私が言いましたような内容のことを御承知の上で、そういう事柄は言論の圧迫に当たらない、あるいは出版の妨害に当たらない、こういうように答弁されたのかどうか、そのことを伺いたいと思います。

○佐藤内閣総理大臣 憲法で言っている言論の自由、これは多くの場合において、国の権力がこういうものに介入する、これは非常にはっきりしております。その他の場合においては、大体言論の自由が尊重されている。私なども、そういう意味ではいつもさらされております。一々これを取り上げてとやかく申しますと、ずいぶん議論があるだろうと思います。しかし私は、そういうことはいたしておりませんが、時の政府である限りにおいて、そういう批判を受け、いろいろな議論をされることも、これは言論の自由、当然かと思っております。そこらは大目に見ておるというか……。そうしてそれが行き過ぎると、やはりそれに対しては救済方法はちゃんと法律的にあるわけでございます。私は、その方法が望ましい方法じゃないかと思う。またこの問題については、すでに御承知のように、国会討論会でも、必ず田中君も出、各党から出て取り上げられている。田中君自身が、これはよけいなおせっかいをしましたと、かように申しております。その中身を一尺この席でとやかくは申しませんが、確かに田中君がおせっかいだ、もしも幹事長として行動するなら、前もって私にも相談があるだろうと思いますが、さようなことはございません。そのことは先ほども申したとおりであります。したがって私は、その程度に考えるべきものじゃないだろうかと、かように思っております。

また、いまちょうど藤原弘達君のお話が出ましたが、私に関する事柄でも、これが誤った記事になっております。私から電話をかけて藤原弘達君を激励したというさような事実はございません。これは、この席、公の席で私はっきり申し上げるのですから、その私自身が直接電話をかけて、ただいまのような激励をしたというようなことはございません。それが、しかし文春にはちゃんと載っております。こういうような事柄も、やはり正確は期してもらいたい、かように思いますので、このことははっきり申し上げておきます。

○不破委員 問題は、田中氏がやったよけいなおせっかいなるものの内容の問題であります。その内容が、私が先ほど藤原氏の証言として御紹介した、つまり本が出される、出版の前に、これをほぼ全部を買い取りたい、いわば言論の買収でありますが、そういう提案をしているかどうか、これがおせっかいの内容であるかどうか、これがポイントだと思います。こういう言論買収の提案をしたという事実を総理が御承知の上で、あれは言論の圧迫に当たらないというふうに判定をされているのか、それともそういう言論の買収などというような、伝えられていることは、これは違うのだというふうに言われて、その程度のことであると言われているのか、そこのところをお伺いしたいと思うのです。

○佐藤内閣総理大臣 私は、田中君が、どうも少しおせっかいをいたしまして、たいへん総裁にも御迷惑をおかけしております、こう言うものですから、そうか、そんなおせっかいはやめたらいいなと、これだけ申しました。それでもう終わっております。ただいま言われるように、一々何部どうして、値段が幾らでどうこう、そんな話までは入っておりません。

○不破委員 それは、まことに無責任な発言だと思うのです。といいますのは、本会議で私どもが、あるいは衆議院の本会議では米原議員が、参議院の本会議では野坂議員が、具体的な内容をあげて佐藤総理に質問をいたしました。そうして総理は、田中幹事長のやっていることは十分承知をしている、よく知っている、その上でこれは言論の圧迫という筋で取り上ぐべき内容のものではないということを、総理の責任において判定されたはずであります。ところが、その内容については、つぶさには知らない、おせっかいということばしか伝わっていないということでは、総理が、この国民が非常に大きな疑惑を持っている問題について、まじめに取り組んで、内容について、総理の責任において、これは言論の圧迫に当たるか当たらないかということを発言されたとはとうてい思えないのであります。その点について、重ねて、おせっかいの内容を、言論買収の提案をしたということを承知の上で言われているのかどうか、そのことについて重ねて伺いたいと思います。

○佐藤内閣総理大臣 ただいま申すように、おせっかいをしたということで、それより以上私も追及はしないで、田中君と――大体田中君の気性もよく知っておりますし、そのおせっかいがどの程度になるだろうか、それはわからないわけじゃありません。しかし、そういう事柄を一々とやかく申す筋じゃないだろう。私はそのこと自身が、いわゆる憲法でいう言論の圧迫、自由を圧迫したという、そういう立場でいきり立つような筋のものじゃない、私はかように思っております。

○不破委員 二つ問題がございます。一つは、総理が、言論の買収というような問題は、これは憲法違反の問題としていきり立つような問題ではないと言われた総理の評価の問題であります。これはあとで伺いたいと思います。

もう一つは、総理が今度の国会で答弁される前に、そういう事実について詳しくは耳にされたことがないと言われた問題であります。この問題については、私は一つ伺いたいのでありますけれども、藤原弘達氏自身が、一月の十日に総理に面会を申し入れた、この問題で。それで、総理のかわりということで、木村官房副長官が首相官邸で藤原弘達氏と会見をされている。このことは確かに事実はありますか。

○木村(俊)政府委員 官邸におきまして、藤原弘達氏の来訪を受けて、会ったことは事実でございます。

○不破委員 その際、藤原氏は、木村副長官に事実の全貌についてお話をしたはずであります。ちょうど一月十日といいますと、一月六日に、田中幹事長が、例のつぶやきがあったからおせっかいをやいたという発言があった直後の、四日後のことであります。私が藤原氏から聞いたところによりますと、話のあった第一点は、この問題について、政府としてまじめに取り上げてもらいたいという意見を述べたところが、木村副長官は、まじめに取り組みたい、まじめに検討してまじめに取り組みたいという回答をされたと聞いております。問題はその次の第二点であります。その席で、藤原氏は、つぶやきがあったから田中幹事長が行動をしたというのは全く事実と違う、はっきり竹入委員長から依頼が、たってあったということを、田中幹事長自身から繰り返し藤原氏が聞いているという問題。それから藤原氏に田中幹事長が提案した内容が、まあ、ちょっと考えてくれという程度のものではなくて、言論の買収という、これから出ようとする出版物を全額金で買い取ることでやみに葬る、こういう重大な内容の提案だったということも、つぶさに木村副長官にお話をしたはずであります。そしてその際、その内容について総理に伝えてくれということで、伝えましょうという確約を得たというふうに聞いておりますが、その点は事実ではありませんか。

○木村(俊)政府委員 大体のあらましについては藤原弘達氏から承りましたが、その中で私が総理にお伝えするのは、私の判断で取捨選択をいたします。したがいまして、その大要についてはお伝えいたしました。たとえば田中幹事長云々の点については、詳しくお伝えしておりません。

○不破委員 これは非常に重大な問題であります。いま国民の世論の中で何が一番問題になっているかというと、ある政党、ある団体を批判する書物が世の中に出ようとする、これはまさに総理が先日言われましたように、出版の自由というのは、ただ、ものを書いて、印刷をして、出版をする、それだけの自由ではない。これが世の中に出て、読者の手に渡る、つまり頒布するということまで保障するのが自由であるということを総理は先日ここではっきり明言されました。ところが、そういう特定の政党あるいは団体を批判した書物が出ようとするときに、これを世の中の目に触れないようにあらかじめ葬ってしまう、これはだれが考えても出版の妨害であります。そしてそのためにその全部数、この場合ですと、初版本マイナス千部ですけれども、大部分の部数を金で買い取る、これは明白な買収といわざるを得ません。こういう事実が被害者から明らかに訴えられている。だからこそいま国民の間では、一体こういう言論の買収に当たるような行為を国政のかなり重要な部署にある人がやっていいものかどうか。それからまた、問題になっているのが、単なる私人ではなくて、国民の間で公に活動している政党である。公に活動している政党、その政党が自分に対する批判を許さないというような形で言論買収をする。これは一そう重大な問題ではないか。これはこの問題について耳にした大部分の国民が共通に思っているところだと思います。ところが総理は、この点について、それはいきり立つほどのことではないと言われました。また木村副長官は、その問題について、大事な問題だけを取捨選択した、そうして一番肝心な問題、一体言論買収があったのかどうか、その提案が行なわれたのかどうか、田中幹事長がどうこの問題に関与しているのか、その一番肝心な問題を取捨して、捨ててしまった上で、どうも総理にかすの部分だけを報告されたらしい。こういうことでは、総理といい、副長官といい、この問題についてほんとうにまじめに考えているかどうか、民主主義社会の基本として、いかなる団体、いかなる勢力、政府はもちろんですけれども、いかなる団体、いかなる勢力にも出版言論の自由を妨害することを許さないということを、ほんとうに政治姿勢の基本として据えられているかどうか、このことを非常に疑問に思わざるを得ません。重ねて総理並びに副長官の答弁を望みたいと思います。

○佐藤内閣総理大臣 問題は妨害というそのことばです。言論の自由を妨害したという、それはどういう事柄が具体的にそれに当てはまるのか。これがいわゆる権力を用いて政府がとやかく言う場合だと、これは最高国家権力をそういうところに使ったというので、これは非常に非難が当たるだろうと思います。しかし私人間――私の場合だとか、あるいは会社等の場合だと、その妨害ということばがどの程度が妨害となるか、これはひとつよく冷静に考えていただきたいと思う。私どもについてもいろいろな文書が来たり、あるいは記事が載ります。けれど、そんな記事どうも好ましくないからやめてくれと言う。これは私どもそういうことを言うことはしばしばございます。やめてくれと言ったからといって、それを直ちに妨害だといって取り上げて、国会の場で堂々と議論する筋のものではない、私はさように思うのですよ。特別に何か威力を用いたとか、あるいは特別に買収行為があったとか、こういうようなことだと、それは非難が当たるだろう。私は与党の幹事長のやった事柄が、先ほども申すように、これは私としておせっかいをいたしました、たいへん御迷惑をおかけしております、こういう程度のことと考える……(発言する者あり)不規則発言はやめていただきたい。とにかくこういう事柄が私は妨害ということになるかならないか、そこはとくと考えるべきではないだろうか、とにかく自分たちの目的を達しなかった、それが全部妨害だ、こういうことで妨害罪が成立するような言い方をされると、たいへん聞くほうから見ますと誤解を受けるのではないだろうか、かように私は思います。

○不破委員 一つは、私人間の問題と言われましたけれども、先日の政府の答弁でも、言論の自由への干渉の問題は、憲法で規定されているのは主として国家の問題であるけれども、私人間では全く何をやってもよろしいということではないということをはっきり答弁されています。

それから第二に、私がせっかく具体的な事実を提起して申し上げているのに、総理はすぐにまたおせっかいという抽象的なことばの中に逃げ込まれようとされる。問題は、初めから言っておりますように、おせっかいということばで田中幹事長が表現し、いま総理が表現している行為の具体的内容は何かという問題であります。それははっきり申し上げまして、一冊の書物が出ようとするのを金で買収をする、出る本全部を買い取って、天下に頒布するのではなしに、やみに葬るということを、これは田中幹事長がそのとき明言されたというふうに藤原氏は言っておりますけれども、出た本のすべてを買い取って、買収をして、それでそれをやみに葬るこの事実、こういう買収行為を、総理は、これはたいしたことじゃないというふうに言われるのでしょうか。買収の提案を工作をしたという事実を、たいした問題ではない、与党の幹事長がそんなことをするのは多少行き過ぎかもしれないけれども、あまり荒立てて問題にするような政治問題ではないというふうに考えられておられるのでしょうか、その点伺いたいと思います。

○佐藤内閣総理大臣 いまもおっしゃったように、一部は市販してもいいが他はあまり外へ出さないように願えないか、かような話だったんではないかと私は思います。私は藤原弘達氏から一部もらった。そこで、過日もこの席で、この本知っているかと言われるから、知っております、ちゃんと藤原弘達氏から贈られました、しかし、私全部を読むだけの時間ございませんから、中身については何も申さない、しかし、前書きとあと書きだけは読みました、かように申した。これで一応、いまのあの本がどういう状況下において印刷されたかということは、あの前書きを読めばよくわかります。

○不破委員 さっぱり答えになっていないわけです。つまり、出された本を買収するという行為を、出版の自由を擁護すると言われた佐藤総理は、出版の自由の侵害とは考えないのかどうか。つまり、出版買収、言論買収ということを出版の自由に反するものと考えないのか、その点について、はっきりした端的なお答えを伺いたいと思います。

○佐藤内閣総理大臣 一部頒布を認めた、その大部分を回収だ、こういうことのように聞いたのですが、そのとおりなのですか。――そのとおりなら一応了承してしかるべきじゃないのか。

○不破委員 内容は、正確に申しますと、たとえば十万部なら十万部の出版を予定していると、そのうち千部ぐらいは出してかっこうをつける、広告もしていることだから。残りの九万九千部は全部買い取るということになるわけであります。これが、一部認めているんだからこれは買収でない――先ほど総理は、私が指摘しましたら、頒布することまで保障するのが言論の自由だということを言われました。ところが、頒布される前に大部分を買い取ってやみに葬ってしまう。これが一体総理の言われる言論の自由、出版の自由に反しないものだとしたら、総理の出版・言論の自由を保障する責任を負うということが、きわめてあぶなかっしいものと考えざるを得なくなります。その点いかがでしょうか。

○佐藤内閣総理大臣 一版だけで十万部印刷するのか、あるいは六千出すのか七千出すのか、そういうことは私は別といたしまして、ただいまのように、全部をどうこうというのじゃないことだけははっきりしている。かように考えますと、これは、話し合いのつく話ならばということが前提にあるんじゃないか。そういう事柄が、両者で話がついたなら文句はないんでしょう。つかなかったからただいま問題になっている、こういうことじゃないでしょうか。

○不破委員 これは総理の政治道義に対する感覚を疑わざるを得ないのです。これで話がついてしまって、あの本がやみに葬られてしまったら、これはいよいよ重大な問題であります。せっかく田中幹事長がおせっかいをやいたけれども、藤原弘達氏や出版社の皆さんがそういうおせっかいに屈しないでこれを拒否したから、いまああいう本が日の目を見ている。総理の話でいくと、あれが話がついてやみに葬られればこれは万事めでたしめでたしで、国会で追及されることもなかったということになるかもしれませんけれども、これは言論・出版の自由を守ろうという国民の立場からいえば、たいへんな問題であります。

もう一ぺんはっきり伺います。話がついたらば、そういう言論の買収行為というのは、いかにどんなにやられようがそれは問題ではないというふうに、総理は考えられておられるのかどうか。

○佐藤内閣総理大臣 私は、いま言うように、平穏の間に話がつけばそれはたいへんけっこうじゃないか、かように申している。これは、何か威力を用いてそれをとめた、そこに圧力が加わって話がついた、こういうことではそれはいかぬことでしょう。しかし、それが平穏無事に話がつけばそんなめでたいことはないのじゃないですか。私は、そのことを率直に申しておるのです。そうしてそれは別に言論の圧迫だとかいうことじゃない。それはもう発言者自身が納得をして、そうしてやめるのですから、それは別に言論の圧迫だとかいって、かどを立てて言うことじゃない。発言者同士で――発言者がみずからやるならともかくも、第三者が、これこそ言論の圧迫だ、何をやっておるんだ、こう言って政府を責められることは、私はたいへん筋違いのような気がするのですよ。それは共産党の方でありますだけにそのことを私は申し上げたいのです。

○不破委員 いまの総理の答弁は、非常に重大な問題です。つまり、威力さえ伴わなければ、暴力による威迫がなければ言論の買収というのは天下ごめんである、めでたいことである、確かにはっきり総理はそう言われました。自分に不利な書物が出るときに、それに対して買収行為をもってこれをやみに葬る、あるいは世の中に出ないようにする、こういう行為が、これは全く天下ごめんのことであるというようになれば、言論買収がまかり通って、まさに日本の出版の自由が根本から脅かされることになる。この点について私は、総理のそういう政治姿勢をここではっきり確認をして、その次に進みたいと思います。

○佐藤内閣総理大臣 私は買収を認めたわけじゃございませんよ。先ほど来から、買収を認める、かようなことはございませんよ。威力だけでものが片づいたというわけじゃない……、それはやはり買収もそのうちに入る、かように思います。だから、そういう事柄を含めてじゃなしに、平穏の間に、平穏無事に話がつけば、それにこしたことはないじゃないか。それが話がつかないからいま問題になっているのでしょう。

問題になっている場合に、それはそのときの当事者から言われることがまず第一だろう。しかし、第三者である皆さん方がおっしゃる、政府の態度をこの際に確かめる……。私ははっきり申し上げますよ。憲法は守る。言論の自由、これは尊重いたします。その範囲は頒布までだ、さように私申し上げておるのです。私どもの態度をとやかく言われる筋のものはないだろう、かように思うのです。これはもうはっきりしている。

○不破委員 だから、総理のことばの定義が違うわけです。つまり、総理は出版物を金で買い取って、それで読者の目に見えないようにするということは、買収とは思わないと言われたわけですね。その際に威力が加わるのが買収であって、暴力が加わるのが買収であって、それ以外は買収ではない。だから、これが平穏に話がつけばそういうことがどんなに行なわれようが、そういう買収行為によっていろいろな書物が世の中に出ないで葬られようが、それは総理が言われている出版の自由、言論の自由には何ら影響のないことであるというふうに言われたと思います。しかし、私は、たとえ具体的な、直接げんこの形で暴力があらわれようがあらわれまいが、実際の出版物が用意をされる、これが自分に不利だということで、これに対して言論で反批判をするのではなしに、これが世の人の目に触れないように金でものを解決をして葬ってしまおうということを工作すること自体、これは重大な言論買収行為である。そういうことはいままでの歴史の中でも古今東西を通じて言論買収行為としてはっきり指弾されておることであります。そのことを一体総理はどう考えるのかということをお聞きしたわけでありますけれども、幾ら聞いても、暴力が入らなければ買収ではない、これはきわめてめでたいことであるという答弁をいただきましたので、総理の最終的な態度としてそれを伺って、次に進みたいと思います。

○佐藤内閣総理大臣 かってにおきめになっては困ります。私がしゃべったことは速記でそのうちはっきりするだろうと思いますから、速記をよくごらん願いたい。これは、買収するようなことがあっては言論の自由が侵害されるということでもあります。また威力を用いればもちろん文句なしに言論が圧迫されるということでございます。そういうことを先ほど申したのでありまして、私は円満に話がつけばいいじゃないか、平穏のうちに話がつけば、それはもういいじゃないか、こういうことを申し上げておる。だから私は、買収だとか威力を用いて平穏に話がついた、かようなことを言っておるわけじゃない。だから、ここはよく読み違いのないように、もう一度私の速記を御点検下さい。そうすればはっきりします。

○不破委員 いまの問題は、これは誤解ではなくて、総理がいま言われたことを私が言ったにすぎないわけです。つまり、平穏に買収されればこれは買収ではないというのが総理の定義であるといわざるを得ないと思うのです。この点については私も総理の速記を研究いたしますけれども、これは答えは明白である。つまり、田中幹事長が本を買い取るという提案をした。公明党の資金で本を買い取って、一般の人の目に触れないようにしたいという提案をした。しかし、これが平穏に話がつけばこれは買収ではないと言われたわけですから。しかし、普通の人の常識からいえば、本が出されようとしておるときに、これを買い取ってやみに葬るということが、定義でいえば買収なんです。その点について総理がいかに言を左右されようと、先ほどの答弁は私は買収を公然と認めたものというふうにならざるを得ないと思います。この点については、また後の機会にさらに政府の政治姿勢の問題として追及をしたいと思います。

次に、もう一つの角度から質問をいたしたいと思うのですけれども、この問題では田中幹事長があらわれてきませんから、総理もあまりこわい顔をされないで、ゆとりをもって御答弁いただきたいと思います。

その問題はどういう問題かといいますと、先日、麻生議員が取り次ぎ店の問題についていろいろ質問をされました。日本における取り次ぎの機構、その中で大手五社あるいは六社が果たしている役割り、そこで一冊の本を拒否するか受け入れるかということがどんなに出版物の頒布に対して大きな影響を及ぼすか、それは私がここで繰り返すまでもなく、麻生議員とのやりとりの中で明らかになっていることだと思います。そこで伺いたいのですけれども、もしこの取り次ぎ機構全体の中で大きな部分を占めている大手各社が、たとえば特定の改党あるいは特定の団体を批判した出版物だけを――そのほかの政党や団体を批判した出版物はフリーパスをさせるけれども、特定な政党や団体を批判した出版物だけを正規に扱わない、シャットアウトする、こういうような事態が慣行としてあるとすれば、これは総理の言う頒布まで含めた出版の自由に対する重大な妨害ではないか。こういう点について総理の見解を伺いたいと思います。一般論として伺いたいと思います。

○佐藤内閣総理大臣 一般の問題として、取り次ぎ店にさような慣行があるとは私思いません。したがって、ただいまのようなそういう慣行があると言われることがどうも私にはわかりませんから、もう少し具体的にお話し願います。

○不破委員 もしそういう事態が継続的にあるとしたら、それは出版の自由の見地からいって遺憾なことであるとお考えになりますか。

○佐藤内閣総理大臣 もちろん遺憾なことだと思います。しかし、商売をやっておる連中にはやっぱり商売の一つのなにがあるようですね、何か一つの行き方が。ものによっては損をしても引き受けるとか、もうかっても引き受けないとか、なかなか意地が張るところがあるようですね。損しても引き受ける、場合によったらもうかるものでも引き受けない、こういうようなこともあるようですから、それが一般の慣行になっているということが私にわからないのです。ただ、ただいま申すような業者には一つのかたぎがあって、そういうものがときどき出てきますね。だから、これはおたくなどもときにしばしばあるだろう、おたくのものあたりはやっぱり受けないものも、受けない人もあるのじゃないか、かようなことも考えますから、そういう点が――共産党です、共産党の場合にもそういうことがあるのじゃないか、かように思います。

○不破委員 いまのは全く問題のすりかえでして、共産党は別に取り次ぎ店をやっておりませんから、その点についてはお答えする必要はないと思います。総理がそういう事態はあるわけないだろうと言われたのですけれども、実はそういう事態が現実にあるからこういう大きな問題になっているわけです。

若干の例を申し上げますと、たとえばここに「これが創価学会だ」という「しなの出版」から出た植村左内氏の書物があります。これは四十二年の十月に出版をされることになっていて、それで大手の取り次ぎ店からも引き受けるという約束が、予約が大量にあったにもかかわらず、突然一斉にこれの引き受けが拒否された。そして実際に日の目を見ないで、一般に日の目を見ないで――これは資料として提示をしたが、日の目を見ないで、何年も経過したという事実があります。

さらに四十四年の三月には、毎日新聞の内藤国夫記者が書いた「公明党の素顔」というこの書物、この書物がやはり同じようにすべての取り次ぎ店から委託販売を拒否された。エール出版社という出版社から出ているものでありますけれども、この出版社は現在までに十三冊の本を出しております。十二冊まではすべてフリーパスで大量に取り次ぎ店で扱ってもらっている。ところが、この書物だけはいまだに委託販売という、正規の新刊扱いをされないで今日に至っている。

それからさらに、四十四年の十一月には、福島泰照氏が執筆をした展望社から出されました「創価学会…公明党の解明」という本が出版されました。この出版社もいままで大手の取り次ぎ店で幾らも本を扱ってもらっている出版社であります。ところが、この本に関しては一切取り次ぎを拒否された、こういう事実があります。

さらに、先ほど申し上げました。藤原弘達氏の「創価学会を斬る」これは日新報道という出版社から出された書物でありますけれども、これも同じように拒否された。

そして、その場合にすべて、具体的な事実を私も一つ一つ調査をしてみましたけれども、これは公明党との関係で扱うわけにいかない、あるいは創価学会との関係で扱うわけにいかないということが、取り次ぎ店の責任ある担当者から言われているわけであります。

先ほども総理が言われましたけれども、自民党を批判している書物はずいぶんたくさんあります。しかし、私はまだ寡聞にして、総理が取り次ぎ店に話をつけて、自民党を批判した書物を出すのはやめろとか流すなとかいうことを言われたという話は聞いておりません。私ども共産党も、それこそ自民党を批判した書物以上に、共産党を批判した書物は天下にはんらんをしております。しかし、どの取り次ぎ店に対しても、共産党を批判した書物を扱うなとか、扱ったら共産党との関係は悪くなるというような事態を引き起こしたことはありません。

日本にいま多くの政党が――多くといっても五つでありますけれども、五つの政党がある。すべての政党がお互いに公然と国民の間で活動し、互いに批判をし合いながら、国民のあらゆる批判を受ける。不当な批判を受ける場合にはこれに言論で反批判をする、これは当然政党政治の民主的な態度であります。ところがそれが、言論による批判の最も重要な部分である書籍出版による批判、出版による言論、これがそういう形で取り次ぎ店という段階で阻止される。特定の政党についてのものだけがろ過されてしまってあらわれてこない。国民の目に触れない。

こういうことは、先日、麻生議員は取引の公正という角度からこの重大性を追及されましたけれども、私はそれに加えて、政党政治の民主的な発展という角度からいっても重大な問題を提起しているのではないかというふうに考えますが、この点に関して――これらの事実はすべて被害者が具体的な訴えをしている問題であります。これらの点について総理は、政党政治の民主的な発展――総理は言論の自由、出版の自由は民主主義の基礎であるとまで言われましたけれども、こういう事態についてどういうようにお考えになるか、伺いたいと思います。

○佐藤内閣総理大臣 問題は、基本的な態度は、私が幾ら官僚出身あるいは保守政党の総裁だと申しましても、これは同一でございます。ただいま言われるように、言論の自由、これは表現の自由をも含め、また頒布、それが宣伝されることももちろん自由で徹底することが期待される。したがって、演説などもずいぶん至るところで自由に批判もし、ときにはずいぶん事実に反することまでまぜながら批判される、こういうことはございます。また、そういう書きものもございます。しかし、それは一々取り上げてとやかくは言わない。国民がよく理解してくれるという、あるところになりますと、やはり国民の英知にまたざるを得ないようなものもございます。したがいまして、私はただいま不破君が印刷物をいろいろ参考資料として出されたこと、またそしてそれが、ただ単に口先だけでなく、口頭だけの言論でなしに、書いたものまで必要なんだ、やはり民主主義としてはそういうものが徹底すること、国民に理解を持ってもらうこと、これは何としても望ましいことだ、この観点は、これはもう同じように思っております。

したがいまして、私は今回の事件にしても、いわゆる田中幹事長がおせっかいをした、こういうことをたいへんいいことをしたとは実は言っておりません。また田中君自身も、どうも行き過ぎたとみずから反省をしておるようでございますし、ただ、こういう点はそれぞれがやはり限度をわきまえてみずからの姿勢を正しつつあるのだ、かように御理解をいただきたい、かように私はお願いする次第でございます。

○不破委員 どうも聞いたことについてのお答えがないわけですけれども、言論・出版の自由の特定な部分、出版物の頒布の自由の問題ですね。この問題について、現状がこうある、こういう事態について政党政治の民主的な発展という観点から総理はどう考えられるのか。特定な政党、それからまた、その母体になっている特定の団体、これについての批判だけが取り次ぎ機構という中で重大な制限を受けるというような事態が現実にある。被害者が訴えている。そういうことについて、しかもそれは一つの事態ではなしに、私がここに用意したのはあるいは氷山の一角かもしれませんけれども、これだけでも最近二年ほどの間にこれだけの数のものがあがっている。こういう事態についてどう考えられるか。そのほかの問題については総理の所信として伺いましたけれども、この問題についてどう考えられるか、伺いたいと思います。

○佐藤内閣総理大臣 それは日の目を見ない印刷物だと言われますが、現にこうして国会に出されておる。またその中の一、二のものは私もしゃんと手に入れた筋もございます。したがって私は、いま言われるように言論・頒布の自由が全部抹殺されたと、こういう言い方は少しオーバーじゃないだろうか、かように思います。おそらく(不破委員「重大な制限です」と呼ぶ)不破君自身がそれをやはり集めていらっしゃるんですから、それも特別印刷をしたわけじゃなくて。だから、そういう重大な圧迫だと言われるけれども、そういうことをも含めて、やはり国民が批判するのではないでしょうか。私は、民主主義というものはあらゆる機会に国民の批判が行き届くこと、そういうことが望ましい状態じゃないか。そういう意味で、一冊の印刷物といえどもこれはおろそかにはできない、かように思います。

私はそういうことを考えながら、ただ公党がお互いにしのぎを削っている姿はあまり国民としても歓迎すべきことじゃないように思いますので、こういう点は、やはり適当に自制してしかるべきじゃないかしらん、かように思います。

○不破委員 総理の答弁はいかにもこの言論・出版の妨害問題を軽視しているという印象を私受けますし、国民も受けます。そういう態度を含めて、先ほど総理が言われた、国民が批判するのではないでしょうかということを言わなければならなくなると思うんです。

それから、さらに続けて総理の所信を伺いたいのですけれども、この取り次ぎの妨害の、頒布の次の段階ですね。小売りという段階がきます。先日の麻生議員の説明討論でかなり明らかになっていると思うのですけれども、普通の新刊書籍だったら、これは取り次ぎ店で新刊として、注文があるなしにかかわらず、全国の主要な店には卸す、これで全国の人々の手に入るわけです。目に触れるわけです。ところが、これが拒否されますと、これはよほどその本が出ていることを知ってさがす者でなければ手に入らない。現に私自身、これだけのものを集めるにはたいへん苦労いたしました。相当な苦労をしなければ手に入らないようになってしまう、こういう事態に置かれるわけです。こういう書物は取り次ぎで拒否をされて、それで小売店の注文があるものだけは扱うというわずかの抜け道を――抜け道といいますか、わずか残された道を拡大をして、それで小売り店にようやく置いてもらうという苦労をして、頒布の努力をした書物ばかりであります。ところが、その小売り店での頒布活動に対してまで大きな妨害活動が加えられてきている。これは私一人の証言ではありません。

たとえば先日、東京で日本出版物小売業組合全国連合会というものの会合が開かれました。――失礼しました。東京ではありません、たしか箱根だったですか、会合が開かれました。これは全国で八千百二十五の書籍小売り業者を組織している、書籍小売り関係では最大の、大部分の業者を組織している団体であります。そこで、この妨害の問題が問題になって、満場で、公明党・創価学会がこういう公明党や創価学会を批判した書物の小売り店での販売をいろいろおどかしをかけたり、こういう本を置くとほかの本を扱わせないと圧力をかけたり、さまざまな圧迫を加えているということを、この八千百二十五店の小売り業者を組織している日本出版物小売業組合全国連合会の名において声明書を出して訴えております。これはだからこの被害者だけのわずかの著作者やあるいは出版社だけの訴えではない、八千の小売り業者を代表するそういう訴えとして出されている。この声明書の中には、「このたび、藤原弘達著「創価学会を斬る」に加えられた創価学会(公明党)の圧力は、われわれ業界人として黙視することのできない」ものである、といって具体的に小売り店での妨害の事実が指摘をされております。

こういう小売り販売にまで圧迫を加えるという行為について、出版・頒布の自由を非常に尊重される総理がどのようにお考えか、伺いたいと思います。

○佐藤内閣総理大臣 いまの決議は決議のまま、そのまま受け取ったらいいのじゃないかと思います。とにかく非常に圧迫があった、こういうことを言っているその決議をやり直せというわけでもございませんし、われわれその業界の決議そのものはそのまま受け取るというのが現状でございます。そうして、私どものやらなければならないことは、今後ともこの種の事柄が再び繰り返されないような、そういう注意をすることが必要じゃないか。また、申し上げるまでもなく、各党ともそういうような点で御協力も願いたいものだ、かように私は思います。

○不破委員 総理はいま若干進歩した発言をされましたけれども、ともかくこの小売り業者の全国決議はそのまま受け取りたい、つまり、これは重大な問題であると言っているわけです。総理は先ほど、あまり大した問題じゃないというようなことをずっと言論妨害問題に関して言われましたけれども、このことに関しては重大な問題だとお認めになったらしいと思います。

それで、そういうことが二度と繰り返されてはならないと総理は奮われました。そういうことが二度と繰り返されないためには、こういう妨害行為がやはり間違った問題であること、二度と繰り返してはならないような重大な問題であることを、妨害行為をやった当事者がはっきりと確認をすることがきわめて重要だと思います。重大な誤りでもない、間違ったことをしたことでもないというような態度をとっておいて、それであと繰り返すのはしないと言っても、これはほんとうに国民が信頼を持つような約束にはなりません。その点で私は、先ほど総理が、田中幹事長がやった言論買収行為は、まあおせっかいをやいたんだといって頭をかけばそれで済むような程度のものだというふうに考えられておられるような答弁がありましたけれども、二度とこういう誤りを繰り返さないということを自民党の総裁として考えられておられるのだとしたら、あるいは総理が国会女言論・出版の自由が不当に抑圧されないように政府としても責任を負うということを言われた立場から考えるならば、その言論買収の問題を含めて、関係当事者がはっきりした妨害の事実を認め、これに対する態度をとることが重要だということを強調したいと思います。

さらに、その重大性を私は重ねて指摘する意味で、もう一つの角度からこの問題を見たいと思います。といいますのは、先日の麻生議員の質問の中では、これはもっぱら取り次ぎ業界の問題として出されました。だれが原因になってこういう重大な制限行為が取り次ぎから小売りにまで行なわれるのかという基本の問題については、まだそこまで議論が煮詰まりませんでした。しかし、私がここで指摘したいのは、こういう取り次ぎ店における妨害、あるいは小売り店における妨害、こういうものがわが国会を構成している重要な政党によってやられているということ、この点について非常に重大な疑惑がいま提起をされているという問題であります。たとえば藤原弘達氏の「創価学会を斬る」、これはいまでは総理の手元まで届けられる、町でもかなり市販されるというところまでまいりました。しかし、昨年の十一月段階では、私が聞いたところによりますと、取り次ぎ店でも一切扱わない、広告も扱わない、小売り店へ持ちこんだら断られる。こういう状態の中でほとんど町に出ないような状態にあった。そうして出版社も、このままでは出版そのものが成り立たない、こういう苦境に追い入まれていた、こういう状況に置かれていたといわれています。

そこに、田中幹事長による提案に続く第二の買収工作が出版社並びに藤原弘達氏に対して行なわれてきた。これはIN通信社というところの社長の鶴蒔靖夫氏という人物がおります。この人が公明党からの依頼として、もういいだろう、本も出たし、ここら辺でもう一切打ちどめにして、残りは全部公明党が買い取りたいがどうかという申し入れを藤原氏にしてきた。そしてこの鶴蒔氏の提案は正式の公明党からの依頼である。しかも、それに関係をしているのは、公明党の中央幹部会員である竜年光氏、それからまた創価学会の渉外総局長である山崎氏。こういう人々と何回も会って、その意向に基づいて提案をしているのだ、そういうことを申し入れてきたということを私は直接明らかにしました。

つまり、一方で取り次ぎ店を妨害して、実際には売れないような状態がつくり出されている。そういう中で、もう販売活動の先をとめておいて、そしてそこにあらためて買収の手が伸びてくる。こういう事態が「創価学会を斬る」という書物の場合にはあったということを私は聞いております。田中幹事長の問題にしても、そういう一連の行為の中の一つの重要な役割りを客観的にはになわされている。こういう点で私は特に重大だと思うのでありますけれども、こういうことが取り次ぎ店の妨害との関連で行なわれている。

それからさらに、内藤国夫氏の「公明党の素顔」の場合、これは問題はもっと深刻であります。私はこの点についても内藤国夫氏及びエール出版社の渡辺社長と直接面談しまして、具体的に事実を明らかにしました。国会で問題を提起する以上、自分の責任で事実を明らかにすることは議員としての当然の責務であると思います。そして明らかにしたところが、この場合にも同じようなことが行なわれております。やはり取り次ぎから断わられる。しかも、断わられる中で、公明党の代表者と出版社の代表、それから著者との間に何回か会合が持たれている。そうして行ってみて驚いたことには、この書物のゲラ刷りですね、つまり本になる前の段階で、印刷所と著者、出版社の間でゲラというものを用意します。校正用のゲラを用意します。これは全部で、出版社に聞いても内藤氏に聞いても、四通しか用意をしなかった。一通は著者の訂正用、一通は出版社の控えですね、それから一通は編集用、そうして最後の一通を、こういうものを出すんだがどうかということで、取り次ぎ店に回覧をする、注文をとるために。最初の三通は、いわば出版社と著者の側にあるわけですから、これが漏れるわけはない。ところが、取り次ぎ店に回覧をしたら――これは著者と出版社の許可を得ないで外へ出すことは、いかなる点からいってもあり得ないはずなんですけれども、公明党の代表者と会ってみたところが、その代表者がこのゲラ刷りの複写を持っていて、そこにたくさんの書き込みをして、この本をこういうように書き直してもらいたいという要求を出してきた。つまり、一方で出版、頒布は取り次ぎ段階で押えられる、しかも、それに呼応して書きかえの要求が出される。その中をゲラがつないでいるために、こういう書きかえの要求と取り次ぎ店のこの取り次ぎ妨害とが、つまり関連があるということが、はしなくもゲラの存在で明らかになったわけであります。

しかも、この点については公明党の矢野書記長自身が「週刊朝日」の対談の中で、あのゲラは取り次ぎ店から取り寄せたものだということを認めております。そして公明党、創価学会に関係する書物が出れば、ゲラが取り次ぎ店から公明党に届くのが慣例になっておる。正確にその文章を読みますと、あのゲラを入手したのは正規のルートです。「商売の慣例でゲラの段階で取次店へ入れる。そこから来とるわけです。来ると見るわけですね。」つまり、そういうことが慣例として行なわれているということを、公明党の書記長自身が認められました。私はこれは非常に重大な問題だと思います。ここから出てくるのは、取り次ぎ店の妨害と批判の対象になっている公明党との関係が非常にむき出しの形であらわれてきているといわざるを得ない。

それから二番目には、出版物が出されようとするときに、著者や出版社の了解なしに、事前にゲラを手に入れてそれの内容を検閲する、そしてそれの書きかえの要求をする。これはいわば私的な検閲であります。事前の検閲であります。こういうことが公明党、創価学会の場合には、矢野書記長のことばをかりれば、慣例として行なわれている。あたりまえだとして平然とされている。こういう事態があるとすれば、私は、取り次ぎの妨害の問題も、言論の買収の問題も、それからこの印刷物の事前の検閲の問題も、非常に深い言論妨害、出版妨害のそれぞれの氷山の一角であって、決して軽視することのできないものだというふうに考えざるを得ませんでした。

そこで総理にお伺いしたいのは、こういうような出版社、著者の許可を得ないでゲラを手に入れて、事前に検閲をするというようなことが、一体民主主義という状態の中で許されるものであるかどうか。特に憲法は「検閲は、これをしてはならない。」ということを明記しております。これは検閲をしてはならないという憲法の精神に、少なくともその精神に反する行為ではないだろうか。そのことについて総理の所信を伺いたいと思います。

○高辻政府委員 憲法ということが出ましたので、私からひとつお答えをさせていただきます。総理のお話の中にもございましたように、基本的人権侵害の問題というのは、この前も私が申し上げたことでございますけれども、国政の権力による侵害というのが典型的、ティピカルな問題でございまして、私人間の問題についても、学説上わざわざ申し上げるまでもないほどいろいろございますが、御承知のとおりに、最高裁判所の判例では、基本的人権も、個人の自由意思に基づいて、私法関係において制限をすることは、別に憲法上の問題ではないという判例があることは、御承知のとおりだと思います。これは二十六年と二十七年にございますが、それを引用するまでもなく、話がほめた話かほめられない話かというのは、おのずから話は別でございますが、総理のお話の中に憲法違反を何か軽視をしておるような御指摘のように見受けられた個所がございましたが、総理が仰せになったところの気持ちを申せば、これは憲法違反ということじゃなくて、私がふえんを申し上げるわけでありますけれども、個人の間でいえば、個人がその自由意思に基づいてその話に乗れば、それで済むことではないかということ、そのことが別に憲法に違反するということはあるまいではないかということを言われたわけであります。

いまの検閲の問題にいたしましても、これは国政の権力が検閲するということは、もう考えられもしないことでありますけれども、個人間の問題としての道義上あるいは、何といいますか徳義上の問題としては、むろん十分に批判をされなければならない問題でありますが、法律上の問題としては、それがあるいは刑法上の問題になるとか、あるいは民事上の損害を受けて賠償請求の問題になるとか、そういう問題で片づく問題だろうと思います。むろん、憲法違反といって悪いということはないかもしれません。これはしかし、たとえば窃盗が憲法違反だと通常いいませんが、そういうような関連でいえば、そういうことになりましょうけれども、全然無縁ということはありませんでしょうが、私人間の問題としては、ただいま申し上げたような趣旨が基本のことでございまして、それには徳義上の問題は残ろうけれども、法律上の問題としては、むしろ国法のたてまえにどこに違反するかという問題になると思います。むろん、徳義上の問題が残ることは申すまでもないことでございます。

○佐藤内閣総理大臣 ゲラが四つできる、その一つを注文用に各販売店に回すんだ。これはおそらく引き受ける受けないにかかわらず、そういうものを送り込むのだろうと思いますね、これは普通。そういうものがあれば、必ずよこしてください、こういうものか、もっと商売上から自由にやるだろう、そうすると、そういうものを引き受けた店は、やっぱりそれを自由に使えるんじゃないかと一応私は思います。そうしてそういう際に、それの中身を読んでみて、どうも事実に反するじゃないか、こういうようなことがあればそういうところの訂正をしてくれ、これは私は普通だろうと思います。ただいま言うように、そのものは、これはもう一切商売上の秘密だ、一切漏らしてもらっちゃ困るんだ、こういうことでやられておるのか、普通の状況のもとにおいて、そういうことが漏れてもしかたがないという状況で、事前に注文をとるような意味でゲラ刷りを回しているのか、そこらにも一つの問題があると思います。これはもう極秘のもので一切外へ漏らしてもらっちゃ困る、こういうものがあるにもかかわらず、それが外に漏れる、かようになると、ただいま言われるように、いろいろ批判を受けることになるだろう、かように思います。しかし、ただいま申すように、注文をとるような意味でまず出した、そのゲラ刷りを読んでみて、どうもこれは事実に反する、こういう点はどうも困る、われわれの仲間がこれを買うにしても、ここはちょっと困ると思えば、それはやっぱり修正してくれと言う、これは普通のことじゃないでしょうか。そういう点が私は、いま言われるように、目くじら立てるような問題じゃないんじゃないかという気がするのです。

○不破委員 総理の答弁は、聞けば聞くほど重大でありまして、いま多くの国民が言論の自由に対する侵害として問題にしていることが、総理の頭では、答弁では、全部あたりまえのことではないか、それはあってもかまわないではないかということになってしまう。ことばの上では言論・出版の自由の尊重を言われるけれども、実際の侵害の行為については、これを擁護する。総理はたしか施政方針演説で、局主主義の擁護を強調しながら、実際にはこれを軽視する風潮ということを言われましたけれども、まさに総理のそういう態度は、出版・言論の自由を強調しながら、実際にはこれを軽視する風潮の最たるものだというふうにいわざるを得ないと思うのです。

その点については、先ほども申しましたように、さらに追及をしたいと思うのですけれども、最後にもう一つ、これは言論の自由についての、また総理の持っている尺度のテストみたいな結果になるかもしれませんけれども、放送の問題について伺いたいと思います。

つまり特定な政党が、その政党に対して批判をしているからということで、ある人間を放送番組に載せないようにとか、そういうことを放送局に申し入れたりする行為、これは放送に対する干渉をなすかどうかという問題です。政党の名においてこれこれの人物は放送番組から排除をしてくれ、つまりマークをしてくれということを申し入れる場合、これは放送の自由に対する干渉になるかどうか、このことについて伺いたいと思います。

○佐藤内閣総理大臣 まあ放送、マスコミ、こういうものは、事実を報道することに重点を置かなきゃならぬと思います。したがいまして、しばしばそういうものが曲げて放送される、それにこういう公的機関が使われる、こういうことはやはり経営者としてもさようなものを避けなきゃならぬ、かように私は思っております。したがって、ただいま言われた例がどういう事例が私にわかりませんが、とにかく最近の放送の番組等を見ますると、ずいぶん思い切った番組があるようであります。これはいかがかと思いますから、そういう点は経営者も注意してもらいたい。これはただ一般番組についての私の批判でもありますが、同時に個人的な批判、あるいは政党等についてもそういうようなものが出てくる危険がある。こういうことはやはり慎しむべきではないか。公的機関です、どこまでも。さように考えていただきたい。

○不破委員 番組の内容についてではなくて、ある人物を、わが党を批判しておる人物であるから、放送番組で扱うときは注意をしてほしいというような、ある特定の人物の排除の要求を政党がするという問題です。放送法には第三条に、放送番組編集の自由ということが明記をされています。「放送番組は、法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」というように、外部からの干渉を厳に排除しておる。しかし、もし国政に責任ある政党が――責任ある与党という意味じゃないですよ、国政に責任のある、責任の一端をになっている政党が放送局に対してそういう干渉をするとしたら、これは放送の自由に対する干渉ではないか、そういう問題です。一般論としてお聞きしたいと思います。

○佐藤内閣総理大臣 私が最も卑近な例を一つ申しますから、おこらないで聞いてくださいよ。どうもよけいな話をすると言われないように。

私がアメリカへ参りましたときに、副大統領がマスコミと実はけんかをしておる。そしてそのけんかをしておるこの副大統領を何と考えるか、どういう感じを持つか、こういって国際記者クラブで記者諸君から聞かれました。私はそれに答えて、同じような感じを持つ、しかし同時にまた、時にたいへん正しく報道していただくとほんとうにうれしいのだ、そういうこともあるのだが、時にはずいぶんひどい記事を見たり、ひどいことをやっているな、こういうように思うことがあるのだ、こう言ったら、大笑いで、実はその場は済みました。これはアメリカの話しなのであります。(発言する者あり)だから、いまも申し上げますように、おこらないで聞いてくださいと言っておる。私は、この問題にしても、そのぐらいのゆとりがあっていいのじゃないだろうか。それは副大統領は、ずいぶんマスコミとまつ正面に取り組んで論争をした、こういう事件でございます。いまちょうどそういうようなお話が出ておるのじゃないか、かように思っておりますが、ただいま私は、各放送局それぞれの経営者は、これは常識のある方々がそろっていますから、ただいまのように特別な事柄、これはあまり心配しないほうがよろしいのじゃないか、かように思っております。

○不破委員 経営者のほうを心配しておるわけではなくて、政党の側からそういう問題が出されているという事実を、私、最近この問題に関連して発見しましたので、これはきわめて重大な問題である。出版の妨害問題がさらに放送の自由に対する干渉にまで関連をしているというふうに痛感をして、提起をする次第です。といいますのは、ここに日本テレビの労働組合が出しておる「斗争ニュース」があります。これを見ますと、昨年の十一月十九日に、公明党の代表者――失礼ですが、名前をはっきりあげさせていただきますと、大野潔副書記長が日本テレビをおとずれて、日本テレビの放送の内容について申し入れがあった。前半は出された内容の問題についての批判でありますけれども、後半がきわめて重大なわけです。藤原弘達氏は最近事ごとに公明党を誹謗中傷しているので、番組に出させるのは注意してもらいたいということを、公党の代表者が日本テレビに公式に申し入れたということが、この「斗争ニュース」に書かれております。

それで私、経過を調べてみますと、この問題は、いま日本テレビの中では、労働組合が知って、経営者にその真相の究明を申し入れて、いま経営者と労働組合の間の重大な協議事項になってきておるという状態であります。私は、これが事実であるとするならば、先ほども申しましたように、出版の妨害の問題から端を発して、さらにそれ自体非常に奥行きの深いものであることは、私が幾つか事実をあげて申し上げましたけれども、さらには、それに関連をした放送への干渉、放送法で明確に明記されている、何人といえども、放送の内容に関しては、法律に基づく権限によることでなければ干渉してはならない、こういう放送法の第三条に反する干渉が行なわれている。これはさらに、今日の言論・出版妨害問題が非常に重要な側面を持っているという問題であると思います。この点について、先ほどの総理の御答弁によりますと、アメリカの例でありますけれども、政党がそういう問題に干渉するのはよくないという点では、比喩的に言われたのであろうと思います。おそらく自民党も、これからこの態度を守られることと思いますけれども、ここには非常に重大な問題が提起されているということを、最後に申し上げたいと思います。

それで、私――答弁されますか。

○佐藤内閣総理大臣 ただいま、日本テレビの組合の、それは何と言ったらいいですか、通報欄にそういうことが載っている。おそらく組合は、それを問題にしなかったと思います。また、日本テレビもそれを問題にしていないことじゃないだろうかと思う。たいへんな威力を感じたとかどうこうだというなら、ただいまのようなことをここで御披露なさるも適当かと思いますが、ほとんど日本テレビで問題にならないことなら、やはりそういうことは、お互いに政党間の問題でございますから、なるべく読み上げられないほうが私は適当じゃないか、かように思います。

○不破委員 総理への質問という形式では、問題は、総理の先ほどのような答弁、すべて国民が非常に大きな疑惑を持ち、国会で問題が解明され、そして政府が国会で宣言されたように、ほんとうに出版・言論の自由を守る保障を政府としてとるという立場に立つならば、当然重視しなければいけないすべての問題を、総理は非常に軽視をされているということが、今度の討論の中から明らかになったと私自身は感じております。

しかし、問題は、そういうことで片づくような単純な問題ではありません。言論・出版の妨害の問題といい、言論の買収の問題といい、あるいは取り次ぎ店に対する干渉と妨害の問題といい、小売り店への圧迫の問題といい、事前検閲の問題といい、すべての問題は、どれ一つをとってみても、ほんとうに言論・出版の自由を擁護しようとする立場の者にとっては、決してゆるがせにすることはできない。これはあたりまえのことではないかといって笑って済ますことのできない、きわめて重大な問題であります。だからこそ、多くの国民が、いま国会にこの事態の真相の究明を求め、国会が国政の最高の機関として、また、言論の最高の府として、民主主義の舞台として、この問題について明確な解答を出すことを求めていると思います。

そういう点で、先日、赤松議員から、また麻生議員から証人の喚問の要請がありました。これは真相の究明のためにそういう要請が出されたものと思います。それに私はつけ加えて、私自身、証人の喚問を求めて、委員長が、この国会でこの問題が適切に取り扱われ、国民の期待にこたえて真相が究明されるように、そして総理のいう、二度とこのようなことが起こらない保障が、国会の審議と結論を通じて打ち立てられるように配慮をされることをお願いをしまして、私の質問を終わりたいと思います。

私が喚問を求めたい証人は、藤原弘達氏だけの証言では、一方の側からの証言であるということで片手落ちになると困りますから、また、他方の側の当事者である田中幹事長と竹入委員長に証人としての証言を求めたい。さらに、問題は、単にこの「創価学会を斬る」という藤原氏の書物一冊ではありませんから、私が先ほどあげました「公明党の素顔」の著者である内藤国夫氏及びエール出版社の代表、それから「これが創価学会だ」の著者である植村左内氏、「創価学会…公明党の解明」の著者であり、被害を訴えている福島泰照氏、これらの人々を証人として喚問することを求めたい。よろしく委員長のお取り扱いをお願いいたします。

○中野委員長 不破君にお答えを申し上げますが、この問題は、すでに理事会で話し合いを進めておりますので、いずれ次の理事会等において適宜措置するようにいたしたいと思っております。御了承をお願いいたします。

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