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〜台湾・中山大学での記念講演から〜 
創価学会会長 秋谷 栄之助

 2001年9月末、創価学会台湾文化教育交流団一行が、台湾各地を訪問・交流しましたが、同28日に孫文ゆかりの中山(ちゅうざん)大学を表敬訪問した際、秋谷会長は「人間主義と創価学会」と題して記念講演を行いました。ここでは、その全文を紹介します。



「師弟」を根本に進む創価学会の精神について講演した秋谷会長

◇孫文と通じ合う創価の精神

 このたびは、国父・孫中山(ちゅうざん)先生の名を冠する台湾の名門・中山大学で、このような講演の機会をいただき、誠に光栄に存じます。尊敬する劉維キ<王偏に其>(りゅういき)学長先生はじめ、ご尽力頂いた関係者の皆さまに、心より御礼申し上げます。

 また、このほど台湾を襲った台風により、大きな被害を受けられた方々に、この席をお借り致しまして、お見舞いを申し上げるとともに、被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

 さて、昨年10月、創価大学の創立者であり、私ども創価学会インタナショナルの池田大作会長に対して、貴大学より、栄えある第1号の「中山の光」栄誉賞を贈呈いただきました。これは、創価学会の会員にとりましても、大きな喜びであり、貴大学との友好推進の契機を与えてくださいました。

 また、その折に調印された、貴大学と創価大学との学術教育交流も、順調にスタート致しました。今後も、交流のより一層の充実を、心より念願するものであります。

 申すまでもなく、貴大学の建学の理念には、偉大なる指導者・中山先生の思想が、脈々と流れております。そして、貴大学は、新しき時代を建設しゆく幾多の人材を、社会に輩出してこられました。

 ご存じの通り、中山先生の生涯最後の講演は、日本の神戸第一高等女学校で行われました。「大アジア主義」と題する、この講演は、大変に有名であります。中山先生は、欧米列強に追随して、帝国主義の道を突き進む日本に対し、「覇道」と「王道」の文化の違いを通して、警鐘を鳴らされたのです。

 すなわち「覇道」とは、自らのエゴのため、武力で他を圧迫するものであります。「王道」とは、仁義や徳によって、人を感化するものであり、圧迫するものでは決してありません。

 そして、アジアの連帯のために、「王道を基礎として、諸民族が連合しなくてはなりません」と、強く訴えたのであります。

 武力や権力といった外圧的な力ではなく、より内発的な精神の力、すなわちソフト・パワーをもって、平和な社会を構築していく――中山先生が主張する、この「王道」の理念こそ、我が創価学会の牧口常三郎初代、戸田城聖第2代、池田大作第3代の会長に脈打つ「人間主義」の精神と、深く響きあうのであります。

◇国家権力と戦いつづけた3代会長

 初代会長の牧口先生は、かつて中国人留学生のための学校である「弘文(こうぶん)学院」で、地理学の講義を担当しておりました。同学院では、皆さまもご存じの黄興(こうこう)、陳天華(ちんてんか)、呉敬恒(ごけいこう)、胡漢民(こかんみん)、宋教仁(そうきょうじん)、林覚民(りんかくみん)ら、中山先生の革命の同志も、学んでいたことが知られています。

 この事実にも、「革命の父」である中山先生と、私ども「創価の父」である牧口先生との、不思議なる縁を感じてなりません。

 その牧口先生の著書『人生地理学』は、弘文学院で学んだ教え子の手によって中国語に翻訳。南京と上海で出版され、当時の中国の地理学に影響を与えております。さらに牧口先生が、現役の小学校校長として、発表した学説が、『創価教育学体系』であります。

 「創価」とは、簡潔に申し上げると「価値創造」、つまり人間の幸福は、「価値の創造」にあり、人間のための価値を創造できる人材を育んでいくことが教育の目的であると、訴えたのであります。

 この理念は、教育の分野に限らず、広く人生全般にわたって通ずるものです。そして、『創価教育学体系』の第1巻が発刊された1930年11月18日、「創価」の理念を広く社会に伝えゆくため、創価学会の前身である創価教育学会が創立されました。

 しかし、太平洋戦争の開戦後、日本の国家権力による戦争遂行のための思想統制が厳しくなり、信教の自由、言論の自由が奪われるなか、学会の活動もまた、権力の監視下におかれました。

 それでも、牧口、戸田両先生は、国家権力の弾圧に一歩も退かず、民衆の幸福のために敢然と戦い抜き、そして投獄を余儀なくされたのです。

 高齢の牧口先生は、1年4カ月に及ぶ獄中生活の末、1944年11月18日、奇しくも学会創立の日に、冷たく狭い獄舎で、73歳で逝去されました。

 翌年7月3日、衰弱した体で出獄した不二の弟子であった戸田先生は誓いました。

 師匠・牧口先生を獄死させた国家主義を永遠に許さない。そして、民衆を苦しめた残酷で悲惨な戦争を、二度と起こさせない、と。

 ただちに戸田先生は、壊滅状態にあった創価教育学会を創価学会と改称し、再建に一人、厳然と立ち上ったのです。

 そして、その後を受け継いだのが第3代の池田会長であります。池田会長は、19歳の時に、戸田先生と出会って以来、「師匠の理想を我が理想とし、全力を尽くして実現するのが弟子の生き方である」と公私にわたって仕え、1960年5月3日の第三代会長就任から今日まで休みなく、人間主義の精神を世界に広げてまいりました。

 各国の指導者らと世界平和のための語らいを積み重ね、その数は公式的なものだけでも1500回を数えます。そのうち、歴史家のトインビー博士、ローマクラブの創始者ペッチェイ博士、ノーベル賞科学者のポーリング博士、ゴルバチョフ元ソ連大統領、作家の金庸(きんよう)氏ら25人と対談集を出版。それらは世界28言語に翻訳出版されております。

 また、文化の交流こそが平和の礎になるとの信念から、東京富士美術館、民主音楽協会を創立。昨年10月、東京富士美術館所蔵の西洋名画展は、台北の国父記念館で開催され、10万人が鑑賞し、大きな反響を呼びました。

 さらに、3代会長の人間教育の理想を結実させたのが、創価大学をはじめとする創価一貫教育の学舎であり、本年5月には、アメリカ・カリフォルニア州に、アメリカ創価大学が開学しました。こうした、平和・文化・教育における功績に対して、池田会長は、世界の大学・学術機関から百を超える名誉博士・名誉教授の称号を受章し、世界の170の都市から、名誉市民として迎えられております。

◇人間革命・共生・人間主義の理念

 以上、創価学会の歴史について簡略に紹介させていただきましたが、今日までの発展のすべての基礎が、3代の会長によって築き上げられたといっても過言ではありません。

 では、創価学会は今日まで、どういう理念で活動してきたのか。創価学会は、日蓮大聖人の仏法を信奉する宗教団体であります。従って、私どもの日常の実践は、一人一人が信仰の実践によって、自己を啓発して人間的成長を図る自身の錬磨とともに、他の人の幸福と世界の平和を願っていくことにあります。

 別の角度からいうならば、創価学会の理念の一つは、「人間革命」という言葉をもって象徴されます。この「人間革命」とは、人間の力を内から開発し、自己の成長を図ることであり、自身の人格を磨いていくことであります。仏法でいうところの修行、自己変革であります。従って、信仰とは決して他を頼るのではなく、自らの力を引き出していく自己確立であるということを、一つの基本理念にしております。

 「仏」についても、どこか遠くの神秘的な存在と捉えるのではなく、すべての人々の生命に、平等に「仏の生命」が備わっていると観るのです。その仏の生命を、信仰により一人一人が自己開発していくなかに、自身の境涯を開き、人格を磨き、人間的に成長していくことを「人間革命」と呼んでおります。

 さらに、仏法は「共生」の哲学を持っており、「共生」とは仏法の言葉でいうと「縁起」ということであります。「縁起」は「縁りて起こる」と読みますが、人間界であれ、自然界であれ、単独で生起する現象は何もない。万物は互いに関係し合い、依存し合いながら、形成されていると観ます。これは、他者の幸福なくして自身の幸福はない、との考え方に通じ、必然的に利他の行為、慈悲の実践を生んでいくのであります。

 人生の生き方にあっては、他者のために尽くす、この利他・慈悲の実践があってこそ、自分中心の「小我」から、より多くの人々の幸福を願う「大我」へと自我を拡大し、そして初めて自身の崩れざる絶対的幸福を築くことができると考えているのです。

 そして第3に、「一人を大事にする人間主義」の考え方があります。信仰による生命変革、人間形成の特徴を大乗仏教の視点である「開く」「具足・円満」「蘇生」の三つの角度から観たいと思います。

 まず、「開く」とは「規範の開示」であり、すべての人は平等に「仏の生命」をもっていることを知ることであり、「具足・円満」とは、生命が世界から宇宙へと「普遍性」を拡大しゆく姿であり、ここに「共生」の原理があります。3番目の「蘇生」とは内発性であり、内より人格形成していくことであります。

 つまり、何よりも生命の尊厳を基本に「一人の人間」を大切にしていくところに、仏法の考え方があり、創価学会の活動の理念は、どこまでいっても一人の人間を大事にしていこうという、この「人間主義」が基本になっております。

 こうした理念に基づく創価の人間主義運動は、現在、世界177カ国・地域に広がっております。ここ台湾のメンバーも、仏教講座・研修会の開催、大震災でのボランティアや復興コンサート、芸術文化の国際交流の推進などが評価され、内政部から9回連続で、「社会優良団体」の表彰をいただきました。これも貴大学をはじめとする、ご関係の皆様のご指導の賜と、深く感謝申し上げます。

◇テロリズムは宗教の自殺行為

 さて、先日、アメリカ・ニューヨークで起こった、同時多発テロによる大惨事は、言語に絶する衝撃と恐怖を、アメリカのみならず、世界中に与えました。現在なお、現地では懸命の救助活動が続けられておりますが、あまりにも多くの尊き人命が奪われ、犠牲になられた方々のご冥福を、深くお祈り申し上げます。そして、世界平和を熱願する宗教者の一人として、人々を恐怖に導くことを目的としたテロリズムは、断じて許されざる極悪の行為として、厳しく糾弾したいのであります。

 テロリズムは宗教の自殺行為であり、また、自らのエゴイズムによる暴力で他を不幸の闇に陥れるのは、これこそ中山先生が論じられた、「王道」の対極にある「覇道」であると思うのです。

 今回の悲劇は、私たちが目指す世界平和への人間主義運動が、いかに大事であるかを痛切に語りかけております。

 重ねて申し述べさせて頂きますが、私ども創価学会は、中山先生が目指された「王道」と同じ道をゆく、人間の内なる精神性を高めるソフト・パワーによって、どこまでも社会と時代に貢献してまいりたいのであります。

 そのソフト・パワーの中核は、創価学会を貫く師弟の精神であり、これこそ当会の生命線であります。今日の発展も、この師弟の精神を厳然と守り、自己を律し、人生の目的を定め、継承させてきた帰結なのであります。

 これからも、私どもは、他者を大切にする心を育み、自らの振る舞いを通して、人と人、心と心を結び、友情と信頼の輪を広げながら、どこまでも「平和の王道」を進んでまいる所存です。

 最後に、貴大学の益々の御発展、また劉学長先生並びにご列席の先生方の益々の御健勝をお祈り申し上げ、講演を結ばせていただきます。

 ご清聴、誠にありがとうございました。