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ついに判明した拉致請負「日本人業者」の正体

(週刊新潮 2002年10月17日)

「曽我ひとみさん母娘を拉致したのは日本人の現地請負業者」。拉致を認めてもなお、白を黒と言いくるめる北朝鮮の言い訳にはうんざりするが、もし本当だとしたら只事ではない。事実、拉致事件の陰には常に国内の「協力組織」が蠢いている。この悲劇的な国家犯罪に手を貸した「日本人」の正体とは……。

「突然後ろから(3人の)男たちが、襲ってきて母と私を木の下に引きずり込みました。口をふさがれ、袋に詰められて一人に担がれてゆきました。その後どこをどう行ったか全く分かりません」

曽我ひとみさんが証言した生々しい拉致シーンである。

だが、さらに世間をあっと言わせたのは、この拉致が日本人の「現地請負業者」によって行われたと北朝鮮側が発表したことだった。

北朝鮮問題に詳しい外交ジャーナリストの井野誠一氏が言う。

「北朝鮮側が明かした『日本人請負業者」の存在は、もちろん向うが勝手に言っていることです。しかし、この公式見解は非常に大きな意味を持っている。なぜなら、曽我さんは母娘で拉致されており、母親のミヨシさんの安否は今もって分かりません。北朝鮮としては当然噴き出してくる母親拉致の責任をどこかに押し付ける必要があったわけで、そこで『日本人請負業者」の存在を言い出したわけでしょう。しかし、結果的に北朝鮮は拉致に関して"第三者が介在している"ことを公式に認めたわけで、かねてから囁かれてきた協力組織の存在がいやおうなしにクローズアップされてきたわけです」

果たして一連の拉致事件に『日本人請負業者」が関与していたのか。現在のところ、警察は具体的な情報がないという理由でその存在を否定している。

だが、日本人かどうかはさておいて北朝鮮工作員の非合法活動に協力する組織が国内に存在することは、今や公然たる事実だ。

「例えば今年の警察白書で、北朝鮮工作員による事件が非公開も含めて戦後50件近くも摘発されていることが明らかになりました。また、曽我さんが拉致された佐渡島は"拉致銀座"といわれていますが、新潟周辺の海岸から工作員が上陸した事件は20件以上あると88年3月の新潟県議会建設公安委員会で水田竜二県警警備部長(現・静岡県警本部長)が答弁している。そのなかでも例えば70年8月に新潟県岩船郡山北町で工作員を逮捕したケースでは工作員は大阪から来た"協力者"と一緒でした。これらの事件では、在日朝鮮人が、事前に上陸現場の撮影や地図を書いて本国に送っていた例なども明らかになっているのです」(地元記者)

こうした協力者の実態は残念ながら殆ど知られていない。だが、実は12年前、警視庁公安部外事二課では、ある事件を突破口にこの"拉致請負組織"を一網打尽にしようとしたことがあった。

ある公安関係者が言う。

「この事件は公安部内で『零余子(むかご)事件』と呼ばれているのですが、摘発直前になって上層部から圧力ががかり、断念せざるをえなかったのです」

事件の概要とはこうだ。

「公安部ではかねてから日本に工作員受入れ組織があることを察知し、その中心人物として都内で中堅商社を経営するAをマークしていたのです。Aは朝鮮総連の大物商工人として知られ、故金日成主席への献金額の多さから平壌市内にはAの名がついた道路まであるほどでした。公安部外事二課ではこの協力組織の洗い出しを「ヤマブキ作業」と名づけ、内偵を続けていました。その結果、Aの下で工作員を助け、手引きする役目の『李」『許』という2人の男が浮かび上がってきたのです」(公安関係者)

李や許は表向きパチンコ店を経営するなどの仕事を持っていた。だが、その裏では日本海沿岸に工作員が上陸するという情報が入ると出迎えて目的地まで案内したり、工作員の指示に従って非合法活動に協力していたのである。

地道な捜査の結果、公安部は有力な情報を掴んだ。

「平成2年、広島の土地区画整理事業で、Aがデタラメの書類をでっちあげ、実際には存在しない土地をゼネコンに売りつけようとしたのです。この情報を入手した外事二課はすぐさま有印私文書偽造同行使・詐欺容疑で逮捕状を用意し、Aを5月に逮捕する予定でいました。さらに事件関係者として李と許らも事情聴取する予定でいたのです」

しかし、逮捕直前、公安部の上層部からストップがかかるのである。

「金丸信副総理(当時)からの直接指示だと聞いています。その頃、日朝間で懸案になっていた第18富士山丸事件を解決し紅粉勇船長らを救出交渉中のため、北朝鮮を刺激するなというのが主な理由でした」

立件していれば、拉致を幇助する組織の解明にもつながったのに……と公安関係者は悔しがるのだ。

今も都内にいる『拉致犯』

拉致事件に国内の協力者が関与していた例はこれだけではない。

「例えばこれまで分かっている14人の拉致のなかでも、"事件の原点"といわれる昭和52年の久米裕さんのケース(宇出津事件)でも協力者が登場します。この事件は、久米さんに金を貸していた金融業者が、久米さんに儲け話を持ちかけ、石川県の海岸に連れ出して、工作員に引き渡したという事件です。しかし、この金融業者は後に逮捕され、警察の取調べに対して事件の全容を自供しているのですが、検察が"容疑者不詳"という理由で不起訴にしてしまった。この男は今も都内の西東京市で金融業を営んでいるんです」(公安関係者)

拉致事件の共犯を釈放してしまうこと自体が信じがたいが、他にも原救晃さんを拉致した辛光沫容疑者に十数人の協力者がいたことも、また、田口八重子さんのケースも協力者がいたことが明らかになっている。

警察庁警備局の幹部が言う。

「日本に潜入した工作員は様々な機会を狙って日本人の協力者を獲得したり、日本人になりすまそうとします。そうした工作員を助けてきたのが朝鮮総連です。最近、総連内の地下組織として注目されている『学習組」もそうした組織のーつでしょう。学習組というのは、名前こそ、何かの勉強会みたいですが、実態は完全にスパイ教育を受けた諜報工作員の集団です。彼らの役目は米軍を中心とする軍事情報の収集や、世情撹乱のために偽情報を流したりすることが知られていますが、その実態はなかなか掴めず、どこの誰が『学習組」なのかまったく分かっていません。彼らの警察に対する警戒ぷりは凄まじく、『学習組』のメンバーと思しき人物を尾行すると、いきなり車を乗り捨てて地下鉄に乗り換えたり、デパートなどで1フロアごとにエレベーターを降りたりするのです」

諜報の世界でいう"点検消毒"という手法である。また、この学習組や朝鮮総連の活動家にはわざと組織を外れる者もいる。日本に帰化したり、韓国籍を取得して総連を離れたように見せるのだ。

「例えば、零余子事件の中心人物Aは総連系事業家だったものの、国籍は韓国でした。さらに他の関係者も韓国籍を取ったり、日本に帰化している。こうした拉致事件の協力者が日本国籍を取っているのは、いざ発覚した際、総連に累が及ばないようにするためだといわれています」

前出の公安関係者が言う。

「北朝鮮は日朝会談の直前、朝鮮総連に対し学習組の解散を指示しています。これは、総連の諜報工作活動を隠す必要があったからでした。そして交渉では、日本人請負業者に拉致を依頼したと明言した。あくまで拉致を請負ったのは総連関係者じゃない。拉致に協力した在日同胞を切り捨てる覚悟で、彼らを『日本人請負業者』と呼んだのではないですか」

苦し紛れの論法としか言いようがない。

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