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北朝鮮のミサイルゲーム・抄訳

(月刊「新東亜」8月号)

Vladimir

1993年5月29日、北朝鮮が東海上でノドン1号を試験発射した時、韓国は緊張した。ミサイルに対してあまり知識のない記者たちが漠然と「恐ろしい兵器である」と考え、その恐怖が韓国の国民に伝達され、韓国社会全体がおじけづいた。

98年8月31日、北朝鮮は射程距離がはるかに長いテポドン1号を発射した。北朝鮮は今回は「火の海」恐喝の代わりに、人工衛星「光明星1号」を発射したと弁解した。そうだったのだろうか?韓国社会の緊張は93年だけにとどまった。この事件の直後、国防部が「韓国と米国は10数日前からテポドン発射の事実を追跡してきた」と発表したことも、韓国社会の緊張が少なかった理由のひとつであった。

だがテポドン1号発射は日本列島を揺るがした。日本の保守層はこれを、日本を普通国家にもどすための機会として利用しようとした。日本は「戦犯国家」であるために、軍隊を保有することも、武器を輸出することも、軍隊を派兵することもできない。小沢一郎をはじめとする日本の右翼はその間「第二次大戦が終わって半世紀が過ぎたので、日本も戦犯国や他の国と全く同じく扱われなければならない」とし「普通国家論」を主張してきた。

韓国は当然、普通国家だ。したがって軍隊を保有して派兵して武器を輸出することができる。軍隊はもちろん私たちが恣意的に保有する。だが独自に軍隊を派兵し、武器を輸出する「実力」がともなわないことに問題がある。

「普通国家」。日本の場合には状況が異なる。自衛隊を軍隊に変えることは容易であり、すぐにに軍隊を派兵することができる。ハイテクを基盤にした先端兵器の輸出で生じる利潤も大きい。

韓国をはじめとする東北アジア諸国は、普通国家論を「日本再武装論」と理解する。同じ現象について、日本と東北アジア諸国の分析は敢然とわかれるのである。このような極端化を呼び起こす触媒の一つが、まさに北朝鮮のミサイル開発だ。

日本が東北アジア国家の牽制を突破して普通国家となることより、朝鮮半島の統一の方がはるかに難しい課題である。日本は「オオカミだ」と叫ぶ少年を言い訳に、普通国家に駆け上がろうとする。それにも韓国は「オオカミと少年」の意味を童話としてのみ理解している。相当数の韓国人たちは、北朝鮮のミサイル威嚇を防止しなければならないのか、日本の普通国家化を防止しなければならないのか入り乱れているのである。

韓国人は果して、いつどんな方法で統一することか悩んだことがあるのだろうか?北朝鮮のミサイル開発が内包した東北アジアの国際政治学的意味と統一、そして南北韓間のミサイル開発競争はこういう質問に対する一つの返答となることができる。

第1部 : 北朝鮮ミサイルの国際政治学

黄海陶瓦江原道は馬食領山脈で境界が交差する。馬食令領山脈方向の黄海道を北朝鮮では黄海北道とよび、ここに新界郡がある。新界郡には香炉峰など700m級の峰が並んでいて、考慮馬右王時、遷都論議されたほどの天然の軍事要塞だ。この新界に北朝鮮は移動式スカッドBミサイル発射台を隠している。

北朝鮮軍が新界で発射したスカッドBが、韓国の各都市に到達する時間は、

新界でソウルまでの道は約100kmであるが、到達時間は僅か3分40秒(220秒)。

大田まで300kmを飛来するのに5分14秒(314秒)。

釜山まで500kmを飛行するには6分55秒(415秒)しかかからない。

新界からソウルまで、戦闘機が最高速度で飛行すれば6分ないし10分がかかる。スカッドBは最高速度の戦闘機より2倍以上速いわけだ。何故このように速いのであろうか?答えは「弾道ミサイル(Ballistic Missile)であるため」だ。北朝鮮ミサイルに対する理解を深めるために、少しの間、原論的なミサイルの話を繰広げてみよう。

◆弾道ミサイルと巡航ミサイル

弾道とは、空に向けて銃を発射した時、その鉄砲玉が放物線を描いて落ちる軌跡をいう。空に発射したミサイルは2次関数グラフのように頂点に達し、放物線を描いて落ちるために弾道ミサイルと呼ぶ。

弾道ミサイルの対蹠点にあるのが「巡航ミサイル(Cruse Missile)」だ。巡航ミサイルは、飛行機のように決まった目標物に向かって自分が飛びたいとおりに飛行する。代表的な巡航ミサイルのトマホークは、無人飛行機のように山や大型建物などを迂回しながら、数百kmを飛行し目標物を破壊する。

戦闘機が空中戦を繰り広げる時に放つ熱を追う、熱追跡空対空ミサイルも巡航ミサイルである。このミサイルは相手の戦闘機の後部から出る熱を追跡するので放物線を描かない。軍艦間での戦闘で使用されるエクゾセや、harpoonなどの艦隊ミサイルも巡航ミサイルである。このミサイルは水面にぴたっとついて水平飛行している途中で、目標物近くで浮き上がり、狙った艦艇の機関室を破壊する。機関室を破り、艦艇のボイラーがさく烈すれば破壊効果が最大となるためである(放物線を描かないミサイルを全部巡航ミサイルに分類できるか、という問題に対しては異論があるだろう。しかしここでは弾道ミサイルが主題であるから、その他のミサイルはみな巡航ミサイルとして分類する)。

巡航ミサイルは低高度で飛行するので、主にジェットエンジンを使用する。また自由自在に飛行しなければならないので、本体にたくさんの電磁場機を入れていなければならない。このため制御部が大きくなり、高爆薬を搭載する弾頭部は小さくなる(弾頭部に使用される火薬はあっという間に爆発し、非常に強力であるため高爆薬と呼ばれ、推進機関に使用される火薬成分の加工薬品は長時間燃焼するので推進剤と呼ぶ)。

この反対が弾道ミサイルである。弾道ミサイルの推進剤は目標物に到達するはるか以前、つまり放物線の頂上まであがる直前にすべて使いきってしまう。そのあとは慣性で放物線を描き、反対側の地上に突進する。したがって巡航ミサイルに比べて、はるかに遠くある目標物を攻撃することができる。

弾道ミサイルはとても強力なロケットであるため、巡航ミサイルよりはるかに大きい。弾頭部に搭載する高爆薬の量も多く、韓国の玄武ミサイルは500kg、北朝鮮のスカッドBは1t(985kg)に肉迫する高爆薬を搭載する。

巡航ミサイルは小さな目標物を正確にとらえるピンポイント (pin point) 攻撃だが、弾道ミサイルは敵軍の戦争指揮部や飛行場、工業団地、防衛産業工場など重要な固定目標物を攻撃する。このため弾道ミサイルは「エリア打撃用ミサイル」と呼ばれる。

弾道ミサイルに遠距離飛行させるためには、射程距離度度を上げなければならない。新界で発射されたスカッドBがソウルまで飛来するなら、高度を35kmまで上げなければならず、釜山を攻撃しようとするなら高度137.7kmまで上げなければならない。したがって弾道ミサイル開発では、ロケットをどの高度まで射程距離度を上げられるか、が非常に重要な問題となる。

弾道ミサイルのうち、最も遠くまで飛ぶことができるのが大陸間弾道ミサイル(ICBM)だ。このミサイルは大気圏まで上昇する。これより射程距離度が短い中距離弾道ミサイル(IRBM)と準中距離弾道ミサイル(MRBM)も大気圏をいったん抜け出し、再突入する。

◆北朝鮮に大きく遅れをとった韓国のミサイル技術

しかし短距離弾道ミサイル(SRBM)でも戦場短距離弾道ミサイル(BSRBM)も大気圏内で頂点に達し、落下する。大気圏内でのみ放物線を描くミサイルを「戦術弾道ミサイル」と呼び、大気圏を抜け出し再突入するミサイルは「戦略弾道ミサイル」という。

大気圏外を飛ぶ戦略弾道ミサイルと、人工衛星を打ち上げるロケットとは「一卵性双生児」である。ロケット搭載部 (Payload) に人工衛星を装着すれば人工衛星発射ロケットとなり、高爆薬や核兵器を装着すれば (この場合は搭載部ではなく弾頭部という) 戦略弾道ミサイルとなるわけである。

昨年、北朝鮮はテポドン1号を発射した直後、人工衛星の「光明星1号」を打ち上げたと強弁した。テポドン1号は2150kmを飛んで北太平洋に墜落したので、準中距離弾道ミサイルに該当する。光明星1号が地球軌道を回っているかは確認されてはいないものの、これで北朝鮮は戦略弾道ミサイルを開発できることを証明した。

韓国は初歩的な人工衛星、私たち別1号と2号を独自開発したが、大気圏外ロケットはまだ開発できなかった。私たち別1「2号と外国で製作したムクゲ1、2号、アリラン号など韓国の人工衛星はみな外国製ロケットを利用し、地球軌道に乗せられた。ロケット開発に関する限り、韓国は北朝鮮にたいへんな遅れをとっているということだ。。

米国は東西には大西洋と太平洋、南北ではメキシコとカナダとに国境を持つだけであり、紛争を心配する必要がない。最も近い場所にある、米国の神経を逆撫でする国はキューバであるが、キューバやはりカリブ海を隔てて数百km離れている。休戦線を境界として、北朝鮮を向き合っている韓国とは地政学的条件が全く異なるのである。

したがって米国を攻撃しようとするなら、戦略弾道ミサイルでも空母、戦略爆撃機、核ミサイル搭載潜水艦(SSBN)でなければ不可能だ。「世界の警察」を自任する米国は、全世界を相手にこの四大兵器保有を厳格に統制している。伝統的な米国の友邦国である英国とフランスも四大兵器のうち、一部だけ保有しているのである。

米国を除いてこの四大兵器を保有している国はロシアだけだ。そこで冷戦の時期、米国はソ連を徹底的に封鎖してきた。最近には中国が四大兵器を保有する方向に進もうとしているため、中国に対する警戒を強化している。このように、英国やフランスのように自国の若者を犠牲にし、豊かな米国とともに戦った国ではない第3国が、この四大兵器のうちひとつでも保有しようとすれば、米国はどうにかこれを封鎖しようとする。

◆ミサイルを開発する北朝鮮の真意

米国は弾道ミサイルを迎撃するTMD(戦域ミサイル防御)体制の構築を目前に置いている。ところが何故、北朝鮮の弾道ミサイル開発に鋭敏に対処するのであろうか?この疑問に対する解答を探すことが、北朝鮮のミサイル発射をめぐる東北アジア政治を理解する第一歩になるはずである。

弾道ミサイルの直径は1m前後である。目標物に向けて落ちる時の速度はマッハ13以上だ。このように高速な物体を迎撃ミサイルで打ち落とすということは非常にむずかしい。

幸い、米国はパトリオットPAC3を作戦配置して、THAAD (戦域高高度地域防衛) ミサイルを試験発射するのに成功した。しかしまだこの体制(TMD)を米国全域に敷くことができなかった。この体制を米国本土と米軍が前進配置されている韓国と日本、ヨーロッパなどに敷くためには天文学的な費用がかかるためだ。そこで米国は、米国の同意のない戦略弾道ミサイルを開発する国家が存在すれば「先制攻撃する」としながら強く対応することだ。

北朝鮮もこういう事情をよく知っている。ところがなぜ戦略弾道ミサイル開発に熱を上げているのであろうか?最初の理由は、ミサイル開発が北朝鮮政権の生存と直結するためである。現在、疲弊した北朝鮮が国際的に生存を保証されるカードとして、ミサイル・核兵器開発ほど確実なものはない。

北朝鮮は現在対米・対日関係正常化に大きい期待をかけているものの、一方では金正日党書記政権が存続するかぎり、反米・反日路線を維持するしかない立場でもある。周知のように金日成主席は、「反米」と「抗日」を旗印に掲げて権力を掌握した。先導的に抗日闘争を繰り広げ、さらに反米戦争(6・25)を繰広げたがゆえに、権力世襲までも北朝鮮住民たちから認知されるようになったのである。このように見れば、ミサイル開発が北朝鮮には両手兼将のカードになることができる。

北朝鮮が戦略弾道ミサイルを開発するもう一つ理由は、韓国という確実な担保があるためだ。深刻な経済難と食糧難で北朝鮮は戦争持続能力が顕著に弱化した。このままならば米国はもちろんのこと、韓国と全面戦争を繰り広げても結局は負けてしまう。しかし敗れる時、敗れても核または化学兵器を搭載する戦略弾道ミサイルを持っていれば、韓国はもちろんで日本や米国にまで報復措置をとることができる。このように韓国を確実な担保と定めているゆえに、北朝鮮は戦略弾道ミサイルを開発しつつ、果敢な崖っぷち戦術を駆使するのだ。

朝鮮半島を舞台で米国と北朝鮮が巨大な国益ゲームを繰広げようとするなら布石が必要である。北朝鮮は自ら核ミサイルという布石を置こうとして、米国も彼らのやり方で布石を置きつつある。米国は第2次世界大戦後、最も多くの戦争をおこした国である。したがって、どのように戦わなければならないのかをよく知っている。

朝鮮戦争がおきた時米国は国連軍を率いて参戦した。ベトナム戦争は韓国やオーストラリアなど太平洋の諸国も参戦して、湾岸戦争時は多国籍軍を、ユーゴ空襲時はNATO国家とともに戦闘を繰り広げた。このように米国は戦争に参加する前に、主要国家から協調を勝ち取り、この協調を土台として戦争に参加するのである。

◆米国の対応戦略

このような文脈で、現在の米国の動きを注意深くみれば、北朝鮮を孤立させるための国際的な理由を形成するのに主力を注いていることがわかる。しかしこのような努力の結果が果して韓国の安保に窮極的な助けとなるかどうかは疑問である。一部の戦略研究家たちは、米国が東北アジアにヨーロッパのNATO軍とよく似た北太平洋連合軍を作ろうとしていると分析する。

北太平洋連合軍を作る場合、この地域で唯一の連合軍の韓米連合司令部の将来が不透明になる。戦略研究家たちは、米国が韓米連合司令部を解体し北太平洋連合司令部に拡大すると見ている。韓国の防御を引き受けている韓米連合司令部が解体され、北太平洋連合司令部として拡大される場合、韓国はこれを喜ぶべきであろうか?

米国の二度目の布石は、東北アジア地域に対するTMD構築の動きだ。TMD体制中、開発が完了し現在作戦配置に入ったのはパトリオットPAC3だけである。パトリオットPAC3は一つを導入するのに約10億ドル(約1兆3000億ウォン)を必要とするのに、韓国を防御するためには最小でも3つが必要となる(それさえもこの3つで韓国全域を防御するのは不可能である。太白山脈や小白山脈など山岳地帯と、戦略的に価値が少ない農村および海岸地域は防御をあきらめ、ソウルと前方の主要軍部隊だけを防御するのが精いっぱいである)。

現在、駐韓米軍は自らの防御のためにパトリオットPAC2を1つ配置した。したがってこれを除外しても、2つを新たに導入しなければならない。米国は韓国が最小1つのパトリオットPAC3を導入するだろうと期待している。米国がこのように期待するのは、パトリオットPAC3が韓国空軍のSAM-X事業(計画)と密接に関連しているためだ。

三番目に、米国は北朝鮮をミサイル技術統制体制(MTCR)に加入させ、この体制を遵守するような布石を敷いている。北朝鮮はイランとシリアなど中東国家にミサイルを輸出してきた。消息筋によれば、米国と韓国、そしてイスラエルの情報機関は過去何年間も、北朝鮮のミサイル輸出を暴露するために北朝鮮のミサイルを積んで中東へ向かう船を追跡したものの、まだ決定的な証拠をつかむことはできなかった、ということである。

しかしさる7月、北朝鮮ミサイル部品を積んでパキスタンへ向かう北朝鮮船をインドが拿捕することによって、北朝鮮の弾道ミサイル輸出の尻尾がとらえられた。米国はこういう事実を根拠に、国際世論を動員し北朝鮮を孤立させようとするはずだ。

ミサイルゲームは米・北間にだけ起きるのではない。日本も北朝鮮の戦略ミサイル開発に国益をかけて対応している。93年、北朝鮮がノドン1号を試験発射したのち、日本はすぐにパトリオットPAC2導入を決定し、米国から技術導入しライセンス生産、自衛隊に配置した。

マッハ13で落下する、直径1mミサイルを迎撃するパトリオットは、名目は防御用であるものの技術的には如何なるミサイルよりも精巧だ。日本はこのミサイルを免許生産することによって、精巧なミサイルを製作できる技術を習得したのである。

◆日本の漁夫の利

北朝鮮が再びテポドンミサイルを試験発射する、との消息が伝えられたさる6月末、日本の防衛庁は、来年度予算にB767空中給油機の導入費用を盛り込むことを検討している、と明らかにした。日本の防衛庁が空中給油機を保有するべきだという理由は非常に興味深かった。「北朝鮮のミサイル再発射を探知するためには、日本が保有したE767空中早期警報機を長時間滞空させなければならない。したがって空中給油機が必要である」ということだ。

空中給油機は、F-15など先端戦闘機の攻撃半径をカバーするものであり、空中給油機を保有した空軍は戦略空軍として分類される。「戦犯国家」日本は戦略空軍を保有することができない。ところが日本は北朝鮮を言い訳に空中給油機を保有しようということなのである。空中早期警報機やはり戦略空軍だけ持つことができるのに、日本は80年代対米貿易黒字があまり大きくなろう貿易収支を改善するという名分で、E767空中早期警報機4台を購入した。

抗日を錦の御旗に掲げた北朝鮮のミサイル開発が、むしろ日本の国家目標達成を助けているというアイロニーはこれだけでない。98年、日本は軍事費を負担せよという米国の強力な要請によって「新防衛大綱」を制定した。

この「新防衛大綱」を具体化するために、日本議会は周辺事態法案を作り、自衛隊法を改正した。これにともない日本行政府は、北朝鮮が威嚇を行った際には、国会の同意を受けずに直ちに米軍に強力な軍需支援ができるようになった。このような日本の動きは将来、平和憲法改正につながり、日本内部にも普通国家化を完成する契機になるという展望だ。

北朝鮮ミサイルを話の種とした東北アジアのミサイルゲームには、韓国も参加する。韓国の国家戦略は、文民政府時までは米国と日本よりは北朝鮮に対して強硬だった。しかし一時期、非常に融和的だったものの、最近はふたたび強硬に対応している。

韓国をねらう北朝鮮ミサイルは、戦術弾道ミサイルのスカッドBだ。戦略研究家たちのシミュレーションによれば、化学弾頭をもつこのミサイルがソウルに落ちれば2万5000名以上が犠牲なるという。このように脅迫的なスカッドBに対する金大中政府の防御策は、対外的には包容政策(日差し政策)であり、内面的には「先制攻撃」だ。先制攻撃による防御策は「スカッドBに推進剤を注入するのは数時間を要するため、北朝鮮のミサイル攻撃に対処できる」という林DONGWON・統一副長官の国会答弁でも間接確認することができる。

ミサイル専門家たちは、スカッドBに推進剤を注入するのに最小6時間がかかると見ている。推進剤を注入するばあい、車両が何台も移動しスカッド発射台が地上に出てくるので、米国の衛星はこれを捕捉することができる。したがってスカッドBに推進剤を注入すること自体を戦争行為と判断し、韓米連合空軍が先制攻撃をおこなう、というのが国会答弁に隠されている論理である。

◆先制打撃論の虚実

しかし、このような論理に対して少なくない戦略研究家たちが異議を申し立てている。さる6月、延世大国際学研究所は空軍力国際学術セミナーを開いた。この時ティラリー韓米連合司令官が参加し、韓・米の学者たちが非公開でTMD問題を深めるように討論したという。

このセミナーに参加した一戦略研究家は「湾岸戦争当時、米空軍機に附与されていた任務のひとつが、イラク軍が保有していたスカッドBの移動式発射台を探し、破壊することだった。しかし数千回の出撃にもかかわらず、米空軍が捜し出し爆破した発射台はただひとつであった。イラクがスカッドBの発射台をずっと移動させたためであった」と語った。

この戦略研究家は「戦争は高度な頭脳戦だ。したがって敵国の衛星が見ることができる地上には偽物の発射台を設置し、本物は地下に隠すであろう。地下で推進剤を注入してから外に出し、発射したのち、素早くまた地下に取り入れることができる。このような場合を考えるならば、発射6時間前に戦争の徴候を捕捉するということは、戦争がどういうものかも知らない戯言である」と批判した。

この会議に参加した米国の学者らは一様に「北朝鮮は地下で推進剤を注入するはずだ。また開戦初期には、50台以上と推定される発射台から同時に発射されるため、韓米連合空軍が先制打撃を加えても、相当数のスカッドBが韓国に落ちると見るべきだ」と指摘したという。

日本と異なり、パトリオットを導入できない韓国としては、先制打撃だけが北朝鮮のミサイル攻撃に対する唯一の防御策であるものの、弱点が多いのである。ある戦略研究家は「先制打撃論は口頭禅だ。先制打撃は、韓国が最初に戦争を起こしたのだという口実を提供してしまう。西海ヨンピョン海戦でも先制射撃を行うにあたって南北海軍が神経戦を繰広げたにもかかわらず、北朝鮮がスカッドBに推進剤を注入するからといって、果して韓国の指導者が先制打撃を決心できるだろうか?」と反問した。

戦略研究家たちはパトリオットPAC3を導入することが、現実的には北朝鮮ミサイル攻撃に対応して、また政治的には韓国と米国、日本が一丸となり北朝鮮の挑発を防止する方法だと指摘する。

PAC3導入を空軍ではSAM-X事業と呼ぶ (SAM-X事業ではパトリオットPAC3とロシア製S-300を候補にあげ、機種を決定する。しかし韓国は米国と同盟軍を構成しており、S-300の導入は難しいことと予想される。この文ではS-300は取り上げない)。

空軍はSAMミサイル・ナイキ(MIM-3 Nike Ajax)を保有している。しかしナイキは寿命年限が既に10年ほど過ぎており、とっくに廃棄処分されるべきミサイルである。しかし空軍と国防部は、予算不足ゆえに次期SAMミサイルを導入することができなかった。昨年12月4日、仁川の空軍防共砲台で起きたナイキミサイル誤射事故は、韓国のSAMミサイルがどれほど老朽してしまったのかを露呈した事件であった。

この事故を契機に、その間放置されてきたSAM-X事業がよみがえった。しかし空軍の次期戦闘機を導入するFX事業の至急性が強調されており、この事業はまたもや後まわしにされた感じである。

このような渦中のさる7月初め、米国を訪問した金大中大統領は射程距離500kmミサイルの開発を取り上げ論し注目を引いた。このような言及は一次的な「先制攻撃」により重心をおいていることが分析できる。500kmミサイル開発は戦略研究家たちの長い間の夢だったが、対北朝鮮宥和政策を主張してきた金大統領がこれを取り上げ論じた、というのは意外と考える戦略研究家たちが多い。

ある戦略研究家は「韓国が500kmミサイルを開発すれば、米国はもちろん日本や中国もわれわれを牽制しようとするはずだ。まかり間違えば米国は北朝鮮より韓国を牽制するかもしれない。朴正煕大統領が長距離ミサイル開発を試みている途中で、米国の牽制を受け結局、盧泰愚大統領時代に非核化宣言をするようになったことを想起しなければならない」と話した。

彼は「長距離ミサイル開発を公開宣言することよりは、日本のように人工衛星を発射する科学用ロケット開発に没頭し、一日も早くSAM-X事業を施行することが賢明な選択」と助言した。彼はまた「500kmミサイル開発は、ミサイル技術統制体制に加入するために米国に圧力を加える戦略的手段として活用しなければならず、総選挙を控えて国民から政治的支持を得るための手段として活用してはこまる」と警告した。

大多数の戦略研究家たちは、ミサイルゲームで最もナイーブな姿勢を見せたのが南北韓国だと指摘する。反面、日本はだいぶ洗練された戦略を駆使してきたということだ。

この複雑なミサイルゲームで、スーパーパワー米国はゲームの参加者であり、また同時に審判官である。

結局、この審判官をどのように煮たり焼いたりするか、が勝利の近道となるわけだ。戦略研究家たちはこのような点で「韓国も日本をベンチマーキングしなければならない」と誰もが語る。

第2部:北朝鮮のミサイル技術水準

北朝鮮の地対地ミサイルは大別してフロッグ(Frog)とスカッド(Scud)系列の2種類に分けられる。フロッグミサイルはロケットが落下した後、弾頭姿勢を補正する誘導機能が一切存在せず、ミサイルでなく自由ロケットに分類される。北朝鮮は1969〜1970年の間に、ソ連からフロッグ3と5、7を導入した。フロッグ5は最大射程距離が約50km、フロッグ7は約70kmである。

70年代に北朝鮮は、フロッグ7を分解し再度組立てるという逆技術(reverse engineering)法で初歩的なミサイル製造技術を習得した。1976年頃には、技術陣を中国に送り最大射程距離600km、弾頭重量500kgのDF-61弾道ミサイル開発計画に共同参加した。しかし1978年、この事業を推進した中国政府高官が文化大革命の過失により失脚し、この事業は取り消されたのである。

中国がDF-61開発事業に北朝鮮を引き込んだことは、当時北朝鮮がソ連寄りになっていたためだ。すなわち中国は、ミサイル共同開発をエサに北朝鮮のソ連接近を遮断しようとしたのである。1978年、中国はこの目的が達成されたと判断して、文化革命を口実にこのミサイル事業を取消させたものの、北朝鮮はこの事業を通じて、自由ロケットではない弾道ミサイル製造の経験を積むことができたのである。

◆北朝鮮「中東コネクション」の来歴

早い時期から第3世界の門を叩いた北朝鮮は、1963年、アフリカの強国エジプトと国交を結んだ。1973年10月、第4次中東戦争勃発時に北朝鮮はミグ21機パイロット1中隊を派遣しエジプトを援助した。以後エジプトと北朝鮮は「血盟関係」に発展した。

この戦争でイスラエル空軍機に叩かれたエジプトは、ソ連から「第三国に提供しない」という条件で射程距離280〜300km、弾頭重量985kmのスカッドBミサイルを導入した。しかしまもなくソ連との関係が悪化し、スカッドBの修理用部品の供給を受けることができない状況になってしまった。

この難関にあたって、エジプトは独自に弾道ミサイルを開発し、北朝鮮に支援を要請した。このようにして北朝鮮とエジプトは1979〜1980年、戦術弾道ミサイルに関する情報と技術陣を交換する間柄にまで発展した。1980年1月、エジプトのムバラク副大統領は平壌を訪問し、金日成主席と面談した。その直後、エジプトはソ連との約束を破り、スカッドB弾道ミサイル2機を北朝鮮に提供した。これが北朝鮮が独自に弾道ミサイルを開発するようになった決定的契機となった。

1981年、イラン・イラク戦争が勃発し、全アラブ国家がイラクを支援した。孤立したイランは弾道ミサイルの必要性を感じ北朝鮮に接近した。1983年、イランは北朝鮮と弾道ミサイル開発相互支援に関する協定を締結し、北朝鮮に弾道ミサイル開発に必要な資金と装備を供給するようになった。

このような支援おかげで、北朝鮮は1984年4月から9月の間に、スカッドBの摸倣ミサイルを開発し最初試験発射に成功した。しかしこれは試作品の試験発射であったがゆえに、補強する点が大変多かった。ミサイルの修正作業のために北朝鮮は果敢に西側世界に触手を伸ばした。

1984年10月、米国のニューヨークでイランの事業家が、ミサイル誘導装置と夜間監視装備に使われる電子部品を北朝鮮に送ろうとして発覚した。1987年12月、日本の大阪では朝総連系企業の東明商社に所属する北朝鮮人と日本人たちが、COCOM(対共産圏戦略物資技術統制委員会)規制品目の集積回路(IC)とマイクロガイガーカウンターなど263点を北朝鮮へ不法に輸出しようとしたが摘発された。米国と日本の情報当局は、このような輸出がみな北朝鮮の弾道ミサイル開発と関連ていたと推定した。

試験発射後、何回修正作業を繰り返した北朝鮮は、1987年4月平壌に半導体工場を建設することによって、いよいよ北朝鮮産スカッドB摸倣ミサイル生産に突入した。済州島を除外した韓国全域を射程距離におさめた北朝鮮は、このミサイルで外貨を稼ぎだした。

最初の顧客はイランだった。イランはこのミサイル90〜100機を輸入した。1988年2月29日から52日間、イランとイラクは人口が密集した相手国都市にミサイルを発射しそれぞれの国民を虐殺する、いわゆる「都市戦争」に突入した。この時イランは北朝鮮から導入したスカッドBの摸倣ミサイル77機をイラク主要都市に発射した。

当時、イラクも北朝鮮のようにソ連のスカッドBミサイルを摸倣、最大射程距離650kmの「アル・フセイン (Al Hussein)」と900kmの「アル・アバス (Al Abbas)」を独自に生産していた。「アル・フセイン」や「アル・アバス」がイランの都市に落ちると、イランは素早くその残骸を集め、北朝鮮に送った。

イランの「涙ぐましい」協調おかげで北朝鮮は1990年6月、スカッドBの弾頭重量(985kg)を770kgに減らし、推進機関を拡張、最大射程距離を500kmに増やしたスカッドCを試験発射するのに成功した。これで北朝鮮は済州島を含む韓国全域を射程距離におさめるに至ったが、韓国内ではこれに関する報道は行われなかった。

北朝鮮がスカッドCの量産に突入すると、イランはこのミサイルを導入し1991年5月、北部試験場で試験発射を行った。シリアも1994年、このミサイルを導入し試験発射し、この事実が西側情報機関に捕捉された。これによりイスラエル情報機関のモサドが、中東国家に対する北朝鮮のミサイル輸出に関して調査を開始したのである。

◆奇抜な着想で難局を突破

現在、北朝鮮は韓国全域を狙ったスカッドBとCを500機以上作戦配置したことが知られている。中東地域に輸出したスカッドBとCは400機以上であると推定される。スカッドBとCは誤差が大きくて精密度が落ちるものの、車両発射台を使用するために有事の際、韓米連合軍の探知網を容易に撹乱することができる。

独自にミサイルを開発したわけではないので、北朝鮮製ミサイルの技術水準はスカッドBの段階を大きく抜け出すことができずにいる。しかし奇抜な着想で状況を突破している。1990年5月と1992年6月、北朝鮮はスカッドB推進機関4つを一つにまとめ、射程距離を1000kmに増大し、弾頭重量を500kgに減らしたスカッドDを開発し、試験発射を行ったが失敗した。

そうこうしながら、1993年5月29日、日本海(東海)に向かって試験発射したところ成功した。この試験発射は1993年3月の、北朝鮮の「核拡散禁止条約(NPT)脱退」宣言2ケ月後に行われたもので、当時熾烈な展開をみせていた北朝鮮の核開発疑惑とともに韓国民を恐怖のどん底にたたきおとした。1994年3月、北朝鮮の朴英洙が板門店会談で「ソウルを火の海にする」と威嚇することによって、この効果は極大化した。

スカッドDは最大射程距離を500kmに縮小して試験発射を行った。だが最大射程距離で発射した場合、日本までも攻撃することができるという点ゆえに、日本は緊張した。これにともない日本は、三菱重工業でパトリオットPAC2をライセンス生産し、日本全域に配置した。

このミサイルは咸境北道金策市附近の蘆洞(ノドン)里で試験発射された。ゆえに韓国をはじめとする西側情報機関は、このミサイルを「ノドン1号」と呼んで、このミサイルを改良した新しいミサイルを「ノドン12号」と呼んだ。しかし韓国国防部は、93年5月29日に発射されたミサイルをスカッドDと命名し、以後新しく作られたものはノドン1号と整理した。

スカッドDの試験発射後、北朝鮮は直ちに、鉄できたこのミサイルの推進機関をアルミニウム合金でに変更し、重さも1トンほど減量した。これにともない弾頭重量は700kgに増え、最大射程距離も1300kmに延長させることができた。北朝鮮は93年5月、試験発射に成功したスカッドDではなく、このミサイルを量産したがゆえに、国防部はこれをノドン1号と命名したのである。ノドン1号の生産で北朝鮮は準中距離弾道ミサイル(MRBM)生産国家の一員となった。

北朝鮮が1300kmを越える弾道ミサイル (ノドン1号) を持ったということはすなわち、日本の東京を攻撃することができることを意味する。ノドン1号はスカッドDに比べて弾頭重量が大きいために、化学弾頭はもちろん核弾頭も装着できる。戦略研究家たちは核ではなく化学弾頭をノドン1号に装着し東京を攻撃した場合、日本は何時間もの間、マヒ状態に陥るはずだと警告する。

イランは北朝鮮とノドン1号購入契約を締結、現在ノドン1号をイランで生産することにも合意し、シリアもこのミサイル導入を検討していることが知られている。ノドン1号は現在、北朝鮮が作戦配置したミサイルのうち、射程距離が最も長い。

ここから一歩進んで、北朝鮮は1998年8月31日、咸境北道名川郡大浦洞 (現在は花代郡ムスタン里大浦洞) で製作したミサイルを北太平洋に向けて発射した。製作地名にちなんで西側世界はこのミサイルを「テポドン1号」と命名した。このミサイルは日本海(東海)と日本列島を越えて北太平洋に落下し、日本はもちろんで米国をも驚かせた。最大射程距離が2150kmまで延長されたこのミサイルについて韓・米・日が騒いでいた9月4日、北朝鮮は「このロケット搭載部には「光明星1号」という衛星が搭載されている」と主張した。

テポドン1号はスカッドBを最大応用したミサイルだった。玄武をはじめとする世界大部分の長距離ミサイルは2段推進システムだが、このミサイルは特異なことに3段推進体制を揃えている。テポドン1号がなぜ3段推進なのかに対して、日本の防衛庁は次のような興味深い推論をだした。

◆北朝鮮ミサイルの「用途」

「北朝鮮の朝鮮中央放送が放映したテポドン1号発射の場面を精密分析した結果、周辺にある物体と比較して、テポドン1号の全長は約25mであると推定される。これは全長15.5mのノドン1号から弾頭部を除去して、全長11mのスカッドBを足した状況と似ている。

テポドン1号の下から3分の2地点にトラス(truss)形態の鉄製構造物がある。弾頭部を除去したノドン1号にスカッドBをトラス構造に結合し、テポドン1号を完成したものと見なされる」

この推論が事実ならば、テポドン1号は非常に粗悪なミサイルだ。しかし「主体の国」らしく、北朝鮮は自己流通により反米・抗日を具現している。ある戦略研究家はスカッドBから始まった北朝鮮開発ミサイルは、それぞれ目標があるとしこのように整理した。

「スカッドBとCは朝鮮半島全域にある空港と大都市、工業団地、軍事施設、原子力発電所、韓国軍の戦争指揮所などを破壊する。このミサイルはまた米陸軍二師団(東豆川)と米第7空軍(烏山など)を無力化するのにも使われるはずだ。

スカッドDとノドン1号は日本に駐屯する米第7艦隊と第5共和国軍、そして「新防衛大綱」により駐日米軍を支援する日本の主要施設をマヒさせるのに使われるはずだ。テポドン1号は朝鮮半島の有事時、真っ先に朝鮮半島へ出陣する沖縄駐屯の米海兵隊三師団を攻撃すると予想される」

このような北朝鮮のミサイル開発に対して、現在積極的でうってでるのは米国だけだ。米国はいったん対話により問題を解決している。米・北のミサイル会談は1996年4月、ベルリンで初めて開催され、1997年6月にはニューヨークで2次会談が開かれた。この会談で米国は北朝鮮にMTCRを遵守するよう要求した。ある消息筋は「北朝鮮はジュネーブの核合意を通じて、彼らの国益を極大化した経験があるので、ミサイル会談でもその以上の成果を上げることを期待している。反面、米国はジュネーブの核合意で結局北朝鮮にだまされたという考えを持っているがゆえに、ミサイル会談ほどには押されないようにするはずだ。したがって米・北間のミサイル問題は対話だけでは終わらないだろう」と予測した。

このような渦中にあって、韓国がその危険性をすっかり忘れている北朝鮮ミサイルがある。ある戦略研究家は「本当の頭痛の種はフロッグ系列ミサイルだ」として、以下のように語る。

「スカッドB系列は、パトリオットPAC3を導入すればある程度遮断することができる。しかしフロッグ系列は射程距離があまり短いため、適切な迎撃方法がない。有事の際、北朝鮮が化学弾頭を装着した放射砲弾とともにフロッグを集中発射すれば、ソウルと首都圏、金浦空港、そして前方地域の韓国軍は対策なしにこれを迎えるほかはない。スカッドBだけでなくフロッグと放射砲に対する対策も至急に検討しなければならないのだ」

第3部:韓国のミサイル開発

北朝鮮は独自にミサイルを開発してきたが、韓国は徹底して米国の支援と統制の中でミサイルを開発してきた。

現在、ソウルの龍山(ヨンサン)にある米陸軍第8司令部は1957年7月1日、日本の座間から移動してきた。当時、韓国の防御は米軍が全面的に受け持っていたので、1959年、米8軍は、中東部地域を防御する韓国陸軍第1軍を支援するために、韓国に長距離武装した第4ミサイル司令部を編成した。続いて当時には、新型防空ミサイルのナイキミサイル (MIM-14B Nike Hercules)とホークミサイル(MIM-23 Hawk)で武装した第38砲兵旅団を韓国に送り、この司令部に配属させた。

ナイキは地対空と地対地を兼用することができる。弾頭重量が500kgに達するため、地対地モードに転換すれば核弾頭を搭載することができる。1969〜70年に北朝鮮がフロッグミサイル開発に熱を上げたころ、71年に米軍は射程距離130kmのランスミサイル (MGM-52 Lance) を韓国に配備し、各種の訓練をすることで北朝鮮に対し「無言のデモ」を繰り広げた。

1972年、米国は韓国軍もミサイルを持たなければならないと判断、オネスト・ジョンミサイル(MGR-1 Honest John)1台を韓国軍に提供した。韓国軍が保有した最初のミサイルのMGR-1 Honest Johnは580kgに達する大きな弾頭を付けているものの、射程距離はフロッグより短い37kmに過ぎなかった。誘導装置をもたず、ミサイルというよりは自由ロケットに近いものであった。

北朝鮮のフロッグミサイル開発に脅威を感じた朴正煕政権は野心的な計画を立てた。オネスト・ジョンミサイルが韓国軍に譲渡される直前の1971年12月27日、国防科学研究所構想会のロケット研究室の、空軍作戦参謀部長でもある金重宝所長が、呉源哲大統領経済2手釈義の呼び出しを受け、大統領府へ向かった。この席で呉源哲は「国防科学研究所は75年まで射程距離200km内外の地対地ミサイル開発計画を作成し、また空軍は国防科学研究所が開発した誘導弾の運用計画書を作成し、朴大統領に報告せよ」と命令した。

しかし朴大統領の指示から遅れ、ミサイル工場の着工は74年であった。李LUDUNチャームに米軍がナイキミサイルを韓国軍に譲渡した。ナイキは地対地モードに転換すれば最大射程距離が120kmに達する。国防科学研究所はこのナイキを分解した逆組立する方法により設計技術を習得し、78年4月頃最初に試作品製作に成功した。

スカッドBが北朝鮮ミサイルの濫觴であったことと比べ、韓国のミサイルの先祖はナイキである。しかしスカッドBは300km/1000kgでであり、120km/500kgのナイキと比べて射程距離ははるかに長いのであった。最初から韓国は北朝鮮に遅れをとっていたのである。

そのうえ、地対地ミサイルは誘導方式に欠陥があり、2度の試験発射でミサイルが失踪するという失敗が繰り返された。その後の修正作業を繰り返し、5ケ月後の78年9月26日、朴大統領が参観するなか「白熊(NHK-1)」と命名された最初の国産ミサイルが試験発射に成功した。白熊は休戦線附近から平壌まで到達することができるよう、最大射程距離180kmで設計された。

◆「白熊」と「玄武」

この頃、北朝鮮は中国と共同で、最大射程距離がはるかに長い600km/500kgのDF-61開発に着手したが、中国側の事業取消で中断されるという状況であった。しかし韓国の白熊もやはり実戦に配置されることはなかった。米国が駐韓米軍に長距離ミサイルを配置するので、韓国軍は白熊の配置を自制してくれ、と強力に要請したためである。

このような圧力の一環で、米国は79年10・26事態が起きる直前、韓国政府と「ミサイル技術移転に関する対米保障書簡(別名韓米ミサイル了解覚書)」を締結した。この覚書は「米国がミサイル開発に関する技術と部品を支援するものの、韓国は射程距離180km以上のミサイルは開発も保有もしない」ということを保証する、という内容であった。この書簡は当時の国防長官である盧載鉉が署名し、また当時の駐韓米軍司令官ウィコムにより伝達された。

このような渦中に10・26事件が発生し、新軍部が執権をとった。米国は待てとばかりに韓国のミサイル開発への意志を砕こうと執拗な圧力を加え、何と920余名の国防科学研究所の科学者らが解雇される事態が起きた。米国にずるずる引きずられた全斗換政府はしかし、83年10月9日、ミャンマーのアウンサン廟爆破事件を契機に、ミサイルの開発を再開する方向に転換した。このような転換には84年、北朝鮮がスカッドB摸倣ミサイルの試験発射に成功したことも一つの刺激となっていた。84年に再開された第2次国産ミサイル開発事業は、前大統領執権末期の87年、試験発射に成功し、北方を守る守護神という意味から「玄武「NHK-2)」と命名された。

ミサイル製作のための慣性航法装置など核心部品は米国から輸入しなければならない。国内の科学技術を総集結させる場合、このような部品は国内で独自開発することは可能だ。しかし独自開発する場合、製作費があまりにもかかり、非経済的なのである。そこで日本、英国など先進国も、独自開発よりは米国から輸入する場合が多い。

盧泰愚氏が大統領に就任した時に、韓国が玄武の量産を開始したのは明らかに不幸であった。盧泰愚政権の時期、韓国は史上類例がない貿易黒字を享受していた。自然と盧政権は米国から多くの圧力を受けるようになったが、盧政権はこれに「寛大に」対応した。寛大に対応したというのは、軍事的にいえば「愛国的ではない」対処行った、という意味だ。

玄武の試験発射に成功した直後の87年、米国は直ちに「戦略物資及び技術資料保護に関する了解の覚書」の交換を要求してきた。この覚書は、韓国がCOCOM規制品目のミサイル関連部品と技術を共産国家に供給しない、という内容を含んでいる。北朝鮮と対立する韓国が、ミサイル関連資料を共産国家に提供するわけがない。にもかかわらず米国はこれに関する了解覚書を締結しようとするほど、ミサイル開発に関しては徹底したのである。

◆米国の圧力

興味深いことは、この時期、米国も北朝鮮のミサイル開発に大きな威嚇を感じていたという点だ。87年、米国は新型ランスミサイルを再び韓国に配置した。新型ランスミサイルは射程距離は120kmだが、命中率が高く、数多くのクラスター弾頭を付着しており非常に威力がある。駐韓米軍のこういう動きは、北朝鮮を牽制すると同時に、ミサイルを開発しようという韓国の要求を黙らせるのに効果的であった。

1990年8月、米国は盧政権に圧力を加え、玄武をはじめとするその他の兵器の製作技術と部品を持続的に支援するという条件で「韓国は最大射程距離180km、弾頭重量500kgを越える、いかなるロケット体制(any rocket system)も持たない」と約束することを要求した。1990年10月、これにともない外務部安保政策課長が上記の内容を込めた「対米保障書簡」を駐韓米国大使館に伝達した。79年の時点で、すでに盧載鉉国防長官が伝達した書簡があるにもかかわらず、米国はもう一度、主権干渉に近い要求を貫徹させたのである。

この保障書簡が、いまでも韓国のミサイル開発にとっての枷となっている。しかし北朝鮮の長距離ミサイル開発が続く状況に、この書簡を遵守すべきかどうかの論議が沸騰している。韓国は北朝鮮のようにミサイルを輸出する意思がなく、MTCRに加入しなければならないと主張する。しかし米国は300km以上のミサイルは保有しないと約束してこそ、MTCRに加入できるとして粘っている。

盧政府が伝達した対米保障書簡は、ミサイルだけでなく科学ロケット開発までも制限している。こういう問題を解決するために1995年7月、当時の孔魯明外相はレイニー駐韓米国大使に会い「韓・米非拡散実務協議体(Nonproliferation Task Force)」を発足させた。この協議体は米・北間のミサイル会談のように、韓・米間のミサイル問題を解決していくための双方の業務会談である。

この協議体は1995年11月、米国ワシントンで初めて会談を持ったのち、ひきつづき意見を交換している。この会談で両国の意見が一致したことには▲韓国が開発するミサイルの最大射程距離と弾頭重量は300km/500kgに制限する▲米国は韓国のMTCR加入を制止しない(韓国は独自開発したミサイルを第三国に輸出しないという意味)などだ。

しかし米国は▲韓国は独自開発したミサイルとロケットの開発、生産、配置に関するあらゆる資料を公式文書で米国に提供し、透明性を保障しなければならない▲科学ロケットを軍事用に転換しないことを公式文書で約束しなければならない、などを要求している。これに対して韓国は▲ミサイルと科学ロケットについては、生産と配置に関する資料は米国に提供しても、開発に関する資料は提供できない▲科学ロケットを軍事用に転換しないということを公式文書で約束せよというのは主権侵害だ、と対抗しており、まだ明快な結論が出てきていない。

◆ミサイルゲームは現在進行形

こういう渦中に、さる7月、米国を訪問した金大中大統領は500kmミサイルの独自開発を宣言し注目を引いた。金大統領の宣言はいったん韓国がMTCRへ加入するための圧迫作戦と分析されているが、このような努力とともに新しいミサイルを開発しなければならないという主張も起きている。

現在、玄武の公式射程距離は180kmだが、戦略研究家たちは250kmまで飛行可能であると見ている。玄武の弾頭がクラスター方式だと、北朝鮮飛行場の滑走路や同じ地上にある施設物を攻撃するには効果的だ。しかし北朝鮮はこれに対応し、大部分の重要施設を地下に設置した。地下基地の出入り口も北方に向けるようにすることによって、玄武が落ちる可能性を事前に遮断している。

北朝鮮のこのような対応は、玄武が先制攻撃を行う、ということに依存する韓国軍には大きい負担となっている。これに対する対策としては、現在駐韓米軍が保有したATCMS(陸軍戦術ミサイルシステム)ステージ2ミサイル開発が議論になっている。このミサイルは弾頭付加がとても精緻で、地面に侵入し地下で弾頭爆薬がさく烈する。したがって戦略物資を地下に隠している北朝鮮を威嚇しようとするなら、韓国も至急にATCMS式ミサイルを独自開発しなければならない、という主張が力を増している。南北韓国間のミサイルゲームはまだ現在進行形である。

さる6月15日西海で起きたヨンピョン海戦は私たちに自信を植え付けた。しかし北朝鮮はそんなに甘い国ではない。米国まで手を焼かせ、相変らず軍事的には「強勢大国」だ。

経済力が弱い北朝鮮はいくつかの武器体系だけを集中的に育てている。核ミサイルがまさにそれだ。これさえあれば経済力が弱く他の兵器が不足しても、韓国はもちろんで米国にも圧力を加えられない。不幸にも韓国は、ミサイル競争でただの一回も北朝鮮を先んじることができなかった。

ミサイル問題の南北非対称問題を解決するために、一部科学者らが主張するように500km、1000kmミサイルを独自開発する方向に向かうというのは危険な発想だ。このような挑戦は万が一にも、新しい危機を呼び起こしてしまうであろう。最善の方法は、日本のように独自に軍隊を派兵し、武器を輸出することができるだけの「実力」を養うことである。

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