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「汎太」の正体

(新東亜2002年9月号)

対北朝鮮事業窓口に浮上した「汎太」(汎太平洋朝鮮民族経済開発促進協会)の正体
北朝鮮外郭組織か、信用できないコンサルティング会社か

汎太平洋朝鮮民族経済開発促進協会。別名「汎太」は北朝鮮が対外事業を行うために新しく開設した北朝鮮政府の外郭組織として知られている。韓国のあらゆる言論はこのように報道した。統一部関係者も「最近、汎太を窓口として対北朝鮮事業がたくさん行われた。この団体は持続性のある北朝鮮の対南機構であることが明らかだ」と語っている。しかし最近、汎太を信じて投資した韓国企業人たちがお金を貸し倒れになったまま泣き寝入りする事例が増加している。その転末と汎太の正体を追跡した。

チェ・ヨンジェ(東亜日報新東亜記者)・Vladimir

cyj@donga.com 

最近、北朝鮮の「汎太平洋朝鮮民族経済開発促進協会(汎太)」という非公式機構が「朝鮮アジア太平洋平和委員会(亜太)」や「民族経済人連合会(民経連)」など公式機構よりもいっそうしばしば対南事業を行ってきたが、この機構の正体に関心が高まっている。汎太が注目されるようになったのは、4月29日から平壌で開かれたアリラン祝典の参観を希望する韓国観光客の募集業務を主管する、と発表しながらである。

北朝鮮はさる3月1日、アリラン祝典と関連する事前取材を許すという方針も、汎太が北京で運営中の朝鮮インフォバンクのインターネットサイト、www.dprkorea.comを通じて明らかにした。3月初め、汎太は国内ベンチャー企業人(株)フーンネットと合弁で朝鮮福券合弁会社を設立し、南北韓で最初にインターネット宝くじおよびカジノ協力事業を推進した。汎太は各種の南北経済協力事業のみならず、南側要人の北朝鮮招請問題にも関与している。

未来連合・朴槿恵議員の訪北も北朝鮮側の招請の主体が汎太であることが知られている。朴槿恵代表が金正日国防委員長と約束したという9月上旬、南北サッカー国家代表チームの親善競技も、ヨーロッパコリア財団が北側の汎太と具体的日程を合意したとされている。

北朝鮮を代表するwww.dprkorea.comを運営

汎太について誰よりも大いなる関心を持っている人々は、北側と事業をしようという経済人たちだ。彼らに情報を提供する大韓貿易投資振興公社(KOTRA)北朝鮮室は、汎太を北朝鮮の対外経済交流協力機関(政府、外郭団体)のひとつとして紹介している。北朝鮮の公式の経済機構である△貿易省△国際貿易促進委員会△対外経済協力推進委員会△アジア太平洋平和委員会△民族経済協力連合会と同様の位置においているのである。汎太に関してKOTRA関連資料は「1999年4月、北京で北朝鮮と中国、ロシア、アメリカなどアジア太平洋地域の親北朝鮮交易業者を集めて組織したものと知られていること、機関の性格が曖昧で、北朝鮮当局から中国をはじめ第三国内の各種事業を委任されていることが推測される。2002年3月、(株)フーンネットと合弁して朝鮮福券合弁会社を設立、2002年4月は北京で第1回朝鮮コンピューターソフトウェア展示会を主催」と記している。

汎太が運営している「朝鮮インフォバンク(www.dprkorea.com)」とは、北朝鮮を代表する公式インターネットホームページとして知られている。1999年10月10日に開設されたこのホームページは、協会紹介、ニュースリポートをはじめとし△公示事項(北朝鮮紹介)△法規集△主要企業紹介(対外協力企業)△産業情報△文化広場など15の項目にわたって北朝鮮の経済、社会、文化、スポーツなど全般を扱っている。ホームページの中で最も神経を集中する部分は金正日国防委員長の活動と北朝鮮の消息を添えた「ニュースリポート」だ。大部分が労働新聞内容をそのまま転載したものであり、金正日委員長の現地指導活動を写真を添えて紹介し、北朝鮮体制を宣伝している。産業情報欄は北朝鮮の産業動向を掲載している。

この程度であれば「亜太が影を潜め汎太が浮上した」ともいえる。だが最近、汎太が進めた事業はあちこちで穴をあけている。最近の事例はさる6月16日、平壌高麗ホテルで行われた連合礼拝事件。当時、韓民族福祉財団(理事長崔ホンジュン・釜山ホサンナ教会牧師)北朝鮮訪問団297人がノービザ状態で直航路を利用し北朝鮮に入国した。この北朝鮮訪問団を北朝鮮に連れていった招請者は「汎太」であった。

キリスト教信徒が大部分を占める韓民族福祉財団側は、汎太側と6月16日の午前10時、平壌鳳水教会と七骨教会で連合礼拝を開くことに合意し、これを訪北合意文に摘示した。だが6月16日当日、北朝鮮側は「汎太は共和国の公式団体でないので、汎太との合意内容を認めることはできない」としながら「アリラン祝典参加のために招請状を発行したのだから、これを受け入れないとビザを渡すことができない。帰りなさい」と主張した。この騒動は北朝鮮訪問団の集団祈祷と北側の部分譲歩で、大きな衝突もなく終わったものの、汎太の信頼性に大きな汚点を残した。北側は、汎太が共和国の公式団体でないと主張したのである。

汎太が推進した代表的な事業は2001年8月31日から9月3日のあいだ、北京で開かれた商品博覧会と、今年4月に北京で開催された朝鮮コンピューターソフトウェア展示会だ。だが二つの事業すべてが思い通りには行かなかった。北京商品博覧会は工作機械、衣類、絵、陶器など北朝鮮の商品が展示されたが、商品の質が粗悪だったせいなのか、韓国を含む外国企業は全く関心を示さなかった。

韓国企業が参与したと言っても得るものはなかった。博覧会を通じて信用状(L/C)を受けることなく、博覧会実務も中国側が代行したことが判明した。汎太をはさんで注文しても、商品に問題があった場合にクレームをつけることができる法的保障がまったくなかった。朝鮮コンピューターソフトウェア展示会も特別な成果がないまま終了した。

名目だけのアリラン祝典観光客募集

汎太が主管したと伝えられたアリラン祝典観光客募集も、事実は北朝鮮の「国際旅行社」が実行し、汎太は名目だけだったことが判明した。汎太の役割は韓国言論の北京駐在特派員を集め、一度説明会をしたことだけ。実務は中国の旅行社がすべて推進した。

また汎太とヨーロッパ・コリア財団が窓口になって進行したと伝えられた未来連合・朴槿恵代表の訪北も、事実は汎太と何の関係がないものと判明した。汎太の李ドキョン会長は記者との電話通話で「朴槿恵代表の訪北は、私や汎太とは何らの関連ないことだ」と認めた。

汎太の正体を知るためには、この団体の李ドキョン(55)会長がどのような人物なのかを注意深くみる必要がある。ある情報機関関係者は、汎太の李ドキョン会長は北朝鮮人ではなく韓国人であると伝えた。この主張は意外であった。これまでの言論報道に照らせば、汎太は北朝鮮の公式団体か外郭団体だ。だがこの情報機関関係者は「李ドキョン会長は能力のある人物だが、ビジネスマンは金銭関係で彼を相手にしてはだめだ。彼を相手にし、金が貸し倒れになっても彼に責任を問うことさえ出来ないだろう。彼が運営する汎太は北朝鮮とは何の関係もない、雑貨屋水準の対北朝鮮コンサルティング会社だ」と語った。

情報機関のファイルに書かれた李ドキョン会長の履歴はこうである。

「1948年生まれで、本名は李揆成。米国の市民権を持っていることが知られ、英語に堪能である。家族関係は本妻がオーストラリアに暮らしており、娘は韓国のある大学に在学中であることが判明している。韓中交流が始まる頃から中国に居住し、軍部を相手に中国内での人脈を広げた。北朝鮮人脈を大きく見せることで、北朝鮮側と韓国の事業家のあいだでブローカーの役割をしている。しかし彼とビジネスをして誰も利益を得たことがない」

北京の現地消息筋によれば、彼は北京で女友達が運営する日本料理屋を基盤とし、北朝鮮人たちとしばしば交流するらしい。だが正確な収入源や北側との関係は不透明である。彼が金正日委員長の長男である金正男と繋がっており、金正男が汎太の実質的指揮者であるという説があるものの、確認されたことはない。はじめは流暢な英語の実力で北朝鮮を西側企業と連結させ、北朝鮮と縁を結んだ。それ以後はおもに羅津・先鋒に韓国企業を誘致する事業を繰り広げたことが知られている。

彼は現在、北京に職員30人を越える事務室を運営している。彼が運営しているインターネットサイト、朝鮮インフォバンクは、その名が国家を代表するサイトであるため、相当な努力と資金が注入された。ここには北朝鮮側の資金は全く支援されていないことが知られている。北京現地で確認した結果、李会長に対する評価は非難一色だった。北京留学生の第一世代として北京に10年以上居住し、事業をしている朴泰榮氏(仮名)は「汎太の李揆成氏はただのブローカーだ。彼と事業をした人のうち、損をしなかった人はめずらしい。第二、第三の被害者を防ぐためにも、この団体の内幕を暴く必要がある」と語った。

ある朝鮮族の事業家は李会長と関連し「口では北との事業を大きくやっていると言うが、詳しい人の話を聞いてみれば、大して中味がないらしい。李会長が北朝鮮側と太い線を持っているのは事実のようだが、彼と事業するのは非常に慎重でなければならない」と語った。

国情院、対北朝鮮エージェントとして活用

取材過程で判明した興味深い事実は、国情院が李会長を対北朝鮮エージェントとして活用したという事実である。だが国情院も彼の詐欺行為のゆえに苦しい境地に立たされている。代表的な事例が、まさに国情院と国内のある空中波放送局事業団が関係した詐欺事件だ。

1998年初め、この放送局の事業チームは北朝鮮関連事業を推進するため、適切な対北チャンネルを探していた。事業チームは当時、大統領府職員の金某氏と国情院職員の崔某氏をつうじて、李会長の招集を受けた。放送局事業チーム関係者は「当時、国情院は李会長を国情院の北京連絡責任者として紹介した。また大統領府にいた金某氏も、対北朝鮮事業をしようとするなら李会長に会え、と推薦した」と語った。

国情院を通じて李会長を知った放送局事業チームは1998年10月頃、北京で再び李会長の仲介で北朝鮮の工作員、李スジン氏(30代中盤)と会った。李会長は放送局事業チームに李スジン氏を、対北朝鮮事業を成功させてくれる人として推薦した。北朝鮮工作員、李スジンに対する検証は李会長を放送局に紹介した国情院職員が行った。あらゆる作業が整備されたと考えた放送局は、当該事業にかなりの予算を注ぎ込んだ。だが李スジンは北朝鮮に戻ってから、完全に連絡が途絶えた。李会長は李スジンが北朝鮮で左遷されたため仕事が進まない、とごまかした。李会長はその後も、継続して言葉を変えながら、放送局との約束を守らなかった。

放送局事業チームは2000年頃まで李ドキョン会長と会ったものの、時間と予算だけを浪費し、得たものは一つもなかった。李会長は携帯電話番号も変え、事務室もあちこち変えながら放送局事業チームを避けた。莫大な損害をこうむった放送局は最近、対北朝鮮プロジェクトをあきらめた。

放送局事業チームのある関係者は「李会長は話をしばしば変えて、約束を守らない場合が多い。権謀術数にも非常に長けているという印象を受けた。われわれ放送局に対する監査がすぐにも進行するだろう。われわれ事業チームは対北朝鮮事業の件に対して責任を負わなければならない。わたしは現在、会社の人事委員会の懲戒を待っている」と語った。

北京の朴泰榮氏は「この放送局でなくとも、李会長に詐欺をやられた国内言論社がほかにもある。国民政府スタート以後、各言論社が争うように対北朝鮮事業を繰り広げているさなか、このようなことが行われたのだ。詐欺にあっても取立てという言葉が出てこないのは、被害者たちが詐欺にあったことを隠そうとするためだ。金持ちの家が泥棒に入られても、噂になるからと申告もできないように、詐欺にあった韓国の言論社とさまざまな企業体はどこへ行って話すこともできず、押し黙ったまま苦しんでいる」と語った。 

「祖国へ出張に行って不在ですよ」

記者は李ドキョン氏の行跡を直接確認するため、さる6月上旬から接触を試みた。かろうじて北京事務室の電話番号を確保し、何回か電話をかけてみたものの、李会長と通話することそれ自体が難しかった。何日間か電話をかけたあげく、かろうじて通話に成功したが、彼は「アリラン祝典の観光客を連れて平壌に行くので、戻ってきたらまた連絡します」といいながら電話を切った。

7月に入り、また何回か電話をかけたのだが、彼と連絡を取るのは空の星をつかむようなものだった。電話を受けた汎太職員の応答は「祖国に出張に行って、いないですよ」がそのすべてであった。一ヶ月の間ずっと電話をかけ、彼と直接通話したのは3回だったがその都度、彼は「次に通話しよう」としながら電話を切った。対北朝鮮ブローカーたちが窮地に追い込まれた時にしばしば使う方法が、連絡しても電話を受けず、携帯電話の番号を変え、さらには事務室までをも移すものだ。彼が見せた反応はその典型的な手法だ。

妙案がないまま8月3日に無計画に北京に飛び、汎太事務室を訪問した。汎太事務室は北京リドホテルの後ろにあるリドプラザの3階にあった。この建物は北京でも最も賃貸料が高い建物であり、建物の建築材はつやのある人造大理石だった。汎太事務室がある3階の床には高級カーペットが敷かれてあった。

この日、やはり李会長に事務室で会うことはできなかった。フロント職員にメモを残して出てきた後、8月8日の午前にもう一度訪問した。結果は同じであった。英語と中国語しかできないフロントデスク職員は「いつ帰ってくるのかわからない。連絡を取ることも出来ない」と釘を刺す。事務室の入口で汎太に関する最小限の広報資料でももらって行こうとしてひと悶着あり、やっと会議室に案内してもらう。最高級のテーブルが長く置かれ、革の椅子が並べられたすっきりした会議室の壁には、金日成・金正日父子の写真がかけられていた。10分以上たった後、平安道なまりを使う一人の職員がやってきた。自分を沈某という経理だと紹介した彼は「汎太の職員は45人ほどだが、そのうち半分は朝鮮族で、半分は漢族だ。おもにやっている業務は対北朝鮮コンサルティングとホームページ製作だ。李ドキョン会長は一ヶ月の半分ぐらい出勤する。アリラン祝典のゆえに非常に忙しいのだ。これ以上は話すことはできない」とした。

取材結果を総合すれば、汎太とこの団体の李ドキョン会長という人物について、ひとまずは警戒心を持つ必要がある。対北朝鮮接触や事業のパートナーとするには、その正体はあまりにも不透明なのだ。

一北朝鮮専門家は「南北関係をうまく進めるには、中間ブローカーが消えなければならない。またそのためには、北朝鮮が早く透明にならなければならない」と語った。

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