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北朝鮮の影を追う5

(産経新聞朝刊 2001年12月26日)

【破綻救済】甘い検査、ツケは国民に

北朝鮮問題取材班

「関西の朝銀が統合され再出発するとき、三千億円以上の公的資金が注入された。あれに味をしめたんだよ」

全国の朝銀信組を統括する在日朝鮮信用組合協会(朝信協)の関係者はこう声をひそめた。

朝銀大阪が平成十年五月、経営破(は)綻(たん)し、事業譲渡を条件に五信組(滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山)と合併・統合されて朝銀近畿として再出発する際、預金者保護などのため三千百二億円の公的資金が投入され、朝銀を“ドル箱”としてきた在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)は胸をなでおろしたのだという。

その朝銀近畿も昨年末に破綻した。いわゆる「二次破綻」だった。朝銀京都の資産内容が著しく劣化していたことが原因だった。朝銀近畿の破綻を決めた旧金融再生委員会のメンバーは「こんなに資産内容の悪いまま、なぜいままで放っておかれたのかと、愕然(がくぜん)とした」と振り返る。

信用組合は長年、都道府県が管轄してきた。昨年四月、管理を国に移管し金融庁が地方の財務局を通じて検査に乗り出したが地方自治体による監査は人手不足などで巧妙な検査逃れに切り込めない監査自体に根本的な問題があった。

朝銀大阪の破綻に端を発する朝銀近畿への公的資金投入には、破綻原因となった経営責任追及を優先すべきだったとの批判もある。

さらに合併を認め、朝銀近畿の受け皿の適格性を認定した大蔵省(当時)の判断への疑問の声や金融当局が朝銀に触れることをタブー視して「処理を先延ばしにしてきた」という指摘もある。

朝銀近畿は近畿財務局が検査忌避の事実を把握して告発、兵庫県警捜査二課と神戸地検が検査忌避・背任事件として立件した。並行して警視庁が朝銀東京の捜査を本格化させた。

朝銀の各信組は朝信協や総連の指示で身内への不正融資を繰り返していた。

たとえば破綻した旧朝銀大阪の不良債権を穴埋めするために、平成九年九月、旧朝銀兵庫と同京都から架空・仮名口座を通じて数億円を不正融資。十年七月には旧朝銀愛知が同大阪に貸し付けた数億円を穴埋めするために朝銀近畿から架空口座を通じて同額を融資し焦げ付かせていた…。

朝銀破綻の刑事責任追及に連動する形で、民事責任の追及が各地で本格化している。訴えられた朝銀は大阪、宮城、福井、愛知、島根、山口、福岡、千葉、新潟、長野、近畿。請求額は計約九十億円にのぼっている。

北朝鮮から貨物客船「万景峰92」が入港する新潟市。そのおひざ元の朝銀新潟の管財人の弁護士は先月二日、記者会見でこうぶちまけた。「融資のほとんどが無担保状態で、融資先の経営者は(朝銀の)元理事長の元部下や親族に信組の非常勤理事がいた」

元朝銀関係者はこう証言する。「例えば五億借りたいという人に無担保で六億を貸して余分の一億円をなかば強制的に総連に寄付してもらう」

では「寄付」はどうなるのか。「総連の運営に使われたり北朝鮮に送られる。送金専門の『運び屋』がいて朝銀の架空・仮名口座から一千万とか二千万円を引き出し新潟に運ぶ。金正日総書記の誕生日の贈り物に回されることもあるだろう」(在京の朝鮮半島筋)

資金の本国へのこうした還流の有無について、朝銀東京の資金流用事件公判で明らかになるかどうかは不透明だ。

だが、朝銀破綻処理に投入される公的資金は最終的に一兆円を超すと試算されている。仮名・借名口座の不良債権になぜ公的資金が投入されるのかとの疑問が残るが、現行法では実名口座は義務規定で罰則規定がないため「仮名口座だとわかっても公的資金投入の妨げにはならない」(金融庁関係部局)のである。

タイムリミットは来年四月のペイオフ(金融機関が破綻した場合、預金の払戻限度額を元本一千万円とその利子までとする制度)凍結解除まで。それ以前に朝銀の経営再建にめどが立たなければ預金者が一斉に資金を引き出すため取り付け騒ぎが起きかねない。

与党内にはペイオフ解禁延期論も根強いが、「延期したら日本の評価は下がり、国債も下がる」(政府筋)として政府・金融庁は実施の構えだ。

「北の工作船」であることが濃厚な不審船が日本の巡視船にロケット弾攻撃を仕掛けるという衝撃的な現実が明らかになるなかでも、一方で本国北朝鮮と不可分な朝銀の破綻救済については「法にのっとって淡々と処理」(金融庁幹部)されようとしている。=おわり

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