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北朝鮮の影を追う4

(産経新聞朝刊 2001年12月24日)

【暗躍する不審船】不正輸出に「工作機関」絡む

北朝鮮問題取材班

東シナ海で海上保安庁の巡視船と銃撃戦になった不審船は北朝鮮の工作船の可能性が高まっている。この海域は過去「北の工作船」が何度も出没していた。

目的は不明だが、人、モノ、カネの運搬のいずれかである。日常的に行われているとされるこうした「工作船」を使った北朝鮮の対日活動に、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)関係者が直接関与したケースが今夏、摘発されている。

事件は、昨年八月、神戸市長田区の貿易会社社長(五二)が福島県いわき市の小名浜漁港に所属していた中古イカ釣り漁船(一三〇トン)一隻を北朝鮮に不正輸出したとして今年六月、外国為替管理法違反(未承認輸出)容疑で警視庁公安部と海上保安庁に逮捕されたというものだ。

社長らは無罪を主張、現在、東京地裁で審理が続いている。

この事件が注目されたのは、日本の公安当局が不正輸出の漁船について日本近海で不審な動きを繰り返す「偽装工作船」として再利用されている疑いが強いとみているためだ。

そして、逮捕された会社社長は父親の代から朝鮮総連に深くかかわる人物で、現職の朝銀兵庫(すでに破綻(はたん))理事、兵庫朝鮮学園理事でもあった。

公安当局の分析や関係者の話を総合すると、中古漁船を発注したのは北朝鮮・朝鮮労働党作戦部直轄企業「ポンス」(旧称)だった。また、代金の送金などにも党作戦部の直轄企業が関与していたとされている。

漁船の不正輸出で逮捕された社長の貿易会社は平成八年にも事件を起こしていた。輸出が規制されているフッ化水素などの化学薬剤を北朝鮮に不正輸出、兵庫県警に摘発されたのだ。薬剤はウラン精製やサリンの材料にもなる物質だった。

会社社長の人生はその大半が朝鮮総連とともにあった。

昭和三十八年に貿易会社を設立。平成元年、朝銀兵庫(当時)の理事に就任した。朝銀の幹部人事は総連の承認事項であることから、社長のそれまでの総連への「貢献度」がうかがえる出世だったといえた。

さらに平成十年には西神戸初中級学校教育会の副会長、同十二年、兵庫朝鮮学園の理事に就任。朝鮮学校と朝銀は総連の二大組織である。社長は両方の幹部となった。そして今夏の摘発−。

「朝鮮総連の若手活動家当時、資金力や行動力を見込まれて北朝鮮の工作機関から一本釣りされたようだ。愛国心もあるだろうが、工作機関相手に商売をするうちに経済的に組み込まれたのだろう」(公安当局者)

北朝鮮は外国人拉致や航空機爆破、欺瞞(ぎまん)情報の流布などさまざまな対外工作を行っていることが、日本の公安当局の分析で分かっている。

亡命者などの証言によると、北朝鮮の対外工作機関は平壌市大成区ハプジャン洞の合同庁舎に集中しており、庁舎の棟番号から「三号庁舎」と総称される。そこには大韓航空機爆破事件の黒幕とされる対外情報調査部のほか統一戦線部、作戦部、対外連絡部の計四部署が入っている。

朝鮮総連は対南(韓国)工作(共産主義革命により統一を目指す)を担当する統一戦線部の直轄組織だが、「この十五年は総連が資金面でも物資の面でも北朝鮮の体制を支えてきた」(韓国に亡命した朝鮮労働党の黄長●元書記)。

「朝銀の幹部人事は朝鮮総連を通じて北朝鮮本国の決裁を受けて実行されるが、それは日本からの送金活動が北朝鮮の国家経済の維持、ひいては朝鮮半島の共産主義化統一につながっていくと考えられているからだ」と朝鮮総連関係者は産経新聞に証言している。

「尊厳ある海外同胞団体である総連に対する卑劣な政治的弾圧」「わが共和国の自主権に対する乱暴な侵害行為」「わが方はこうした暴挙を絶対に許さない」(十一月三十日の外務省スポークスマン談話から)

警視庁による朝鮮総連中央本部の強制捜査(十一月二十九日)後、本国北朝鮮の日本当局への非難は連日のように行われ現在も続いている。

朝鮮労働党機関紙「労働新聞」、金日成社会主義青年同盟、元山市(江原道)大衆大会など各地の抗議集会、朝鮮女性民主同盟、平壌火力発電連合企業所…まさに全土を挙げた「糾弾」である。その声は北朝鮮と総連・朝銀のパイプの太さと、事件の打撃の強さを裏付けているようにも映る。

●=火へんに華

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