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ソウルの米・日・中・ロシアのスパイ戦力総点検

(新東亜 2002年3月号記事)

ソウルの米国探偵会社ピンカートン秘密事務室

英語講師・ロシアのショーガールに変身した米・ロシアのスパイ
日本の外信記者は日本情報当局の最先鋒
汝矣島と新村の中国食堂は中国情報機関の安家
新築の貞洞ロシア大使館は最先端情報基地

1997年7月以前、香港は世界最高の情報戦場であった。しかし香港が中国に返還された以後から状況が変わった。その舞台が今や、大韓民国ソウルに移ったのだ。ソウルがスパイ天国になったのは、これらをそそのかす餌が多いためだ。ソウルは最後に残った分断国家である。特に北朝鮮は外国のスパイを誘引する、最も強力な餌だ。韓半島は地政学的位置のゆえに、米・日・中・ロシアなど世界の超強大国の利害関係が鋭く対抗した場所である。これらが、相手国に関する情報を探り出すために、スパイをソウルに派遣する。3ヶ月後にはソウルでワールドカップが開かれる。ワールドカップ期間中、数多くの外国人がソウルに溢れるようにやってくるはずだ。その中にスパイとテロ要員も少なくないだろう。しかも今年末には、韓国の次期政権を決定づける大統領選挙が進行する。多方、ソウルはスパイ天国になっている。このような視点から、ソウルで活動する米・日・中・ロシアなど超大国のスパイ戦力を総点検してみる。

チェ・ヨンジェ(東亜日報新東亜記者)・Vladimir

cyj@donga.com 

▲米国:機械情報に強く

自由寄稿家兼英語講師として活動中のイタリア系アメリカ人、「ジェームズ・スミス」(仮名)の公式の肩書は、外国語学院の英語講師。彼は国内H出版社から韓国に関する本を出版した経歴もある。こうした経歴を土台として、彼は韓国のVIPにインタビューしたり、上級英語を教えては情報を収集している。彼は韓国人の友人たちには「アメリカから事業のために韓国に来たのだが、韓国の女性が気に入ってしまい、一人の女性と同居してそのまま居着いている」と言って通してきた。そう言い繕うものの、彼には誰にも話さない過去がある。

彼は京畿道烏山にある米空軍情報部隊の将校出身である。彼の秘密の職業は、世界で最も古い米国の私立探偵会社「ピンカートン(Pinkerton)」の要員だ。ピンカートンは現在、ソウルと平沢に事務室を置き、おもに米国側の顧客の注文により韓国内の経済機密を渡している。

スミス氏が勤める、ソウル良才駅の外交センター向い側にある秘密事務室には看板がない。事務室は外から入る入り口はひとつだが、中へ入ればやや細長い部屋が三つに分れている。この部屋はそれぞれがすべて連結している。そのうち二部屋は職員2名がひとつずつ使い、もう一部屋はスパイ装備を保管する倉庫だ。倉庫にはパラボラアンテナを装着した遠距離盗聴器、赤外線望遠鏡、コンクリート壁を開けて内部を見ることができる紫外線透視鏡、ソ連製望遠鏡などスパイ装備でぎっしり埋まっている。スミス氏と他の一名のピンカートン職員はこの事務室を公開せず、人と会うときはおもに外部のホテルを利用する。

180cmの身長に金髪の白人であるスミス氏は、洋服よりはジーンズとTシャツを着て通すのだが、最大の強みは女性を落とす腕前だ。このような強みを利用して、彼はソウルの一流ホテルのナイトクラブやバー、レストランで高官や財閥家の夫人や娘、(息子の)嫁に接近しては親密になり、主要な情報を解明していることが知られている。

英語講師スミス氏

米・日・中・ロシアのうち、ソウルに情報力量を最も多く投入している国は当然、米国だ。最大の理由は北朝鮮のためである。北朝鮮は核と生物化学武器を開発している国だ。また各種のテロとニセ札、麻薬など国際犯罪と連結した戦力を持っている。そのうえ、韓国には米地上軍が駐屯している。

駐韓米国大使館が韓国内から情報を収集する単位は、大使館の公式組織とORS(Office of Regional Study:地域調査課)、FBIS(海外放送聴取班)、DIA(米国防情報部)、501情報部隊、OSI(Office of Special Investigation:米空軍防諜捜査隊)などである。

このうち、核心はORSだ。ここは「CIA韓国支部」として、人員だけで数十人に達する。ORSとFBISは世宗路の米大使館内に設置されており、DIA、501情報部隊、OSIはすべてソウル龍山米8軍領内にいる軍事情報機関だ。501情報部隊はおもに特殊装備を動員して国内の主要な通信を盗聴している。

ソウルで行われる米国側の情報活動の基地は龍山米8軍基地だ。まずは各情報単位の会合場所。龍山の米8軍基地の10番ゲートを入っていき、左方向に折れればドラゴンヒルホテルに出る。ホテルの後にはハーテルハウス(訳注:Hartell House)という将校専用レストランがある。こじんまりしたこのレストランの離れで毎週金曜日、南北韓の最高機密が行き来する秘密会議が開かれる。まさにここが、ソウルに派遣された米国のさまざまな情報組織が、一週間のあいだに収集した情報を共有し分析する場所である。この連席会議で米国の情報要員たちは二種類の報告書を作る。一つは米国だけが見る対内用、もうひとつはカナダ大使館、英国大使館、オーストラリア大使館に回覧する対外用である。

このドラゴンヒルホテルのそばには、群青色の大きなパラボラアンテナがある。このアンテナの下には地下バンカーがあるのだが、ここでは北朝鮮軍の交信内容を盗聴し録音して、これを英語に翻訳する。このバンカーでは、平常時には北朝鮮の交信内容を盗聴しているが、韓国の通信をも盗聴するのかは確認されていない。

だが対外的に活動するのは米国大使館の公式組織だけで、米国のさまざまな情報組織は大部分が水面下で動く。そのうち政治課が最も敏感な懸案を扱うのだが、現在デビッド・ストラウブ(訳注:David Straub)政治参事官のもとに一等書記官三人が▲北朝鮮の軍事問題▲北朝鮮の政治問題▲韓半島外交と統一問題、に業務を分けて担当している。この一等書記官三名のもとに、それぞれのスタッフがいる。政治課は保安のために、韓国人職員は女子職員二名だけを使っている。

駐韓米国大使館はホワイト要員(公開情報部員)とブラック要員(非公開情報部員)だけでなく、広範囲な協調者を運営して人間情報(Human Intelligence:HUMINT)を獲得している。さる1月末から駐韓米国大使館は、ブッシュ米大統領の訪韓準備で忙しかった。さまざまな業務が多かったのだが、彼らのもっとも大きな関心事はブッシュ大統領の「悪の枢軸」発言に対する韓国民の世論であった。これは機械情報をひっぱり出すわけにはいかない。米国大使館が公式の活動を通じて、絶えず韓国社会の世論主導層と接触するのはこのためである。世論主導層のなかでもっとも多く利用する階層は大学教授の集団だ。彼らを大使館が主催するパーティーに招待し、意見を聴取するのである。

米政府が運営している情報組織との関連は確認されなかったものの、アメリカ人の情報収集には私立探偵会社のような民間ラインも動員されている。先に紹介した外国語学院の英語講師を動員した、底引き網式の世論収斂と情報収集がその一例だ。

米国の情報組織は情報を掘り起こすのに躍起になっているものの、韓国人が捧げる場合もある。韓国のVIPが米軍情報部隊の拠点である龍山米8軍基地にやって来ては、情報を流すのだ。

龍山の米軍部隊に車両に乗って入場するには、「デカール」(Decal)という米軍部隊車両出入証がなければならない。

この車両出入証が発行された車両の持ち主は、大部分が韓国関係や財界の高位幹部たちだ。彼らは要人に会う際、米軍部隊に自由に出入りできるということを誇示するために、たびたび米8軍内の食堂で食事する。このとき彼らが利用するレストランが、米8軍領内のゴルフ・ウインドー(Golf Window)そばにある「コミスキーレストラン」だ。このレストランをしばしば利用する、ある情報関係者は「このレストランにはときどき、大韓民国で最高の企業家たちが食事にやってくる。彼らはこの場所で公務員に賄賂を与えた話をやりとりする。また韓米連合司令部や国防部、陸軍本部、海軍本部、空軍本部の高級将校たちもここに出入する。そうしてまた高級軍事情報が行き来するのだ。重要なことは、このレストランで仕事をする従業員たちが、すべて米軍に協調する情報の手先であるという事実だ。このレストランでやりとりする話は、すべて米軍に入るものと考えてよい」と語った。

だが何といっても米国の情報力の強みは、映像情報・信号情報・測定情報を総括した機械情報である。米国は諜報衛星と全世界的な監視盗聴システム、エシュロン(echelon)を通じて、韓半島で起きるたいていの出来事はすべて把握している。

韓半島でこれを総括する場所がまさに京畿道烏山の「米第7空軍」基地にある、複合情報偵察地上センター(訳注:Korea Combined Operational Intelligence Center / Multi-intelligence Reconnaissance Ground System)だ。こちらは烏山空軍基地と平沢市にあるハンフレー基地を連結し、戦時指揮・統制を担当する総合センターである。

烏山複合情報偵察地上センターは秘密情報を収集し、韓米連合軍司令部が重大な指揮と統制指示を与える際に決定的な情報を提供する。こちらは南北韓で必要となる情報を収集する専門的能力を備えている。夜も昼も、天候の良くない日も晴れた日も24時間、韓半島を監視している。韓半島上空を飛ぶU-2R偵察機も、収集した情報をこのセンターに送る。いわば韓半島全域が烏山基地の収集圏域に入っているのである。このセンターが掬い上げる情報は、韓半島に駐屯する米空軍と韓国空軍、米太平洋艦隊が共有する。

▲日本:言論との協調体制

日本の場合も、韓国から情報を収集する最大の理由は北朝鮮のためだ。日本は北朝鮮のミサイル射程圏の中に入ってからというもの、いっそう韓半島問題に鋭敏になった。しかもソウルは、日本のアジア戦略で最も重要な場所である。

現在、日本の情報活動を総括する国家機関は内閣調査室(以下内調室)だ。内調室は総理が直接指揮し、総理の外交および国防政策を決定するのに助けとなる研究と分析活動を実行する。ここで集合分析された情報は、直ちに総理に報告される。だがここは韓国の国家情報院とは異なり、集合された情報の分析だけを行っており、実際に足を使って動く要員がいない。つまり現場から上がってきた情報を分析する機関である。

内調室は1952年に創設され、1986年に内閣情報調査室と名称を変えて機能を強化した。1986年の評価によれば職員は122人、予算は2500万ドルと小規模な組織として知られているものの、実際の人員は300〜400人程度であり、予算も知られているよりは多いものと思われる。内調室は捜査権や逮捕権を持たない。

組織は総務部・国際部・国内部・経済部・資料部・内閣情報集約センターなど6つで構成されている。要員たちは一般公務員と警察、自衛隊および行政府の各部処から派遣された兼職員で構成されている。内調室の最高幹部は内務省次官と法務省次官、警視庁長が受け持っているのだが、内調室長は必ず警視庁長が担当する。

内調室は人員不足を補充するため、人事権・財政権・事業方向を直接的に監督して統制する外郭団体を運営している。内調室の情報活動と関連した外郭団体では国民出版協会・世界政経調査会・内外情勢調査会・民主主義研究会・国際情勢研究会・東南アジア調査会・日本海外ニュースセンターなど7つの機関がある。

これらの団体はみな内調室から予算を支援されている。内調室と政策協力を行う実質的な外郭団体は全部で25である。内調室の手足の役割をする機構が、法務省傘下の公安調査庁だ。公安調査庁は内調室の指示によって動く工作機関であり、捜査機関と考えればよい。

日本はこの他にも軍と情報機関を別に運営している。1997年1月、各軍別に分散されていた戦略情報収集・分析業務を一元化するため、防衛庁傘下に統合情報本部を創設した。組織は総人員1580人で、本部長のもとに総務・企画・分析・映像・電波解析など5つの部署がある。

防衛庁傘下に統合情報本部を作ったのは、内調室が国家情報機関としての役割を十分に果たせないため、本格的な国家情報機関を作ろうということにあった。防衛庁の通信室(FI・別班)は通信情報の把握だけを行う機構なのだが、その実力は世界的に認められている。太平洋戦争を行った日本の盗聴水準は、世界最高の水準である。

2001年12月22日、東中国海上から北朝鮮工作船と推定される所在不明船舶が沈没した事件当時、日本の海上保安庁は北朝鮮人民軍の周波数までを盗聴したと明らかにしたことがある。日本が通信情報に有利なのは、別名「象の檻」と呼ばれる巨大なアンテナを、北海道と愛媛と沖縄、そして三沢に設置したためだ。

日本の盗聴の実力は世界最高

日本は韓国に内調室の公式要員を派遣していないことが知られている。日本大使館は他の大使館とは異なり、職員と外郭人士を活用した情報活動に熱心だ。

日本大使館で韓国内の政治情報を総括するのは、杉山公使が知られている。杉山公使のもとに、政治課所属として参事官3人が役割を分担しつつ彼を補佐する。この中で山野内政治部参事官は慰安婦問題や被爆者、サハリン僑胞問題など韓国・日間の敏感な懸案をおもに扱っているが、他の二人の役割は確認されないままである。

日本大使館は金銭力とロビー力に優れているため、他の国家より人間情報収集力が優秀だ。何より部署間の利己主義もより少なく、情報の共有力が飛び抜けている。日本大使館の情報収集活動のうち、もっとも大きな特徴は自国の言論社の記者を積極的に活用するという点だ。

現在、ソウルには17社の日本言論社の記者がいる。これはソウル駐在外信記者クラブ(SFCC)に登録された常駐外信記者の30%ほどで、単一国家ではもっとも多い数字である。日本の外信記者たちは記者なのか情報部員なのか区別するのが難しいほどに、日本大使館と緊密に協調している。

ある情報関係者は「日本の海外情報の力は言論に出る。日本の言論は米国とは異なり、国家の利益の助けにならないと判断されれば、国内でも絶対に記事を書かない。記者が海外に派遣される場合、このような性向は露骨に表れる。日本の記者たちは海外に派遣される前に情報機関から日程期間と行動指針の教育を受け、該当国に派遣されれば本国政府と情報をやりとりして緊密に協調する」と語った。

日本の言論社に勤める、ある韓国人記者の証言はより一層衝撃的だ。

「日本の記者は韓国官僚とインタビューする際、『オフ・ザ・レコード』の約束を必ず守る。しかしその内容を記事としては使わないものの、情報報告を通じて日本大使館に伝える。また韓国の官僚は日本の記者に非常に友好的だ。韓国語が出来ない日本人記者の場合、私が通訳を担当したのだが、韓国の官僚たちが国益に損傷を与える発言を赤裸々に吐きだしたため、通訳せずに適当にごまかした場合もある」

日本大使館の木曜集会

ある日本大使館関係者は、日本の記者のインタビューを通じて韓国政府の主要情報が日本側で流れていった事例を挙げた。

「1998年頃、日本のある外信がKEDOの韓国側代表にインタビューした。

そのころ日本は、履行事項である10億ドルの支援ができないと粘っていた。だが当時、軽水炉施工企業として選定されていたGEの事業の中には、日本の付属品を使うという案が入っていたのだ。インタビューでKEDO韓国側代表は、オフレコを前提にこのような内容を日本記者に明らかにした。この内容は報道されなかったが、そっくり日本政府に伝えられた。それ以後、KEDO交渉に出てきた日本代表は、現金はだめだが10億ドルに相当する付属品で参与すると言ったのだ。記者たちがインタビューした内容から、日本は韓国側の内情を全部知っていたのだ」

日本大使館と日本の外信記者たちの情報協調は、ソウルの外交家に広く知られた「木曜集会」を見ればよく理解することができる。毎週木曜日の午後4時、ソウルに駐在する日本の外信記者たちは、日本大使館で日本大使と集会を持つ。この集まりは日本人だけが参加できるもので、日本の言論社に勤める記者であっても韓国人ならば集会に出席することはできない。この席で、駐韓日本大使は北朝鮮の動向のような韓半島の主要懸案と、韓国内の政治圏の動向を詳細に説明する。記者たちも一週間のあいだに取材した内容を集合し、大使に「報告」して情報を共有する。

この木曜集会で扱われた情報は、正確さと深さに定評がある。ソウルで活動中の世界各国の情報要員たちは、木曜集会の情報を取り出そうと各種の方法を動員している。日本大使館側も論議の内容が漏れるのを防ぐため、緻密に注意を払っている。最近では集会で論議された内容が、咳き込む音までも録音されたという諜報があり、集合場所を日本大使館から100メートル以上離れた世宗路の駐韓米国大使館の後ろにあるイアビルディングに移す事例までがあった。

日本の言論人と日本大使館の密着な関係を見せる、おもしろい事例がある。2001年の夏、韓日間に教科書紛争が起こったとき、韓国政府は寺田輝介駐韓日本大使を外交通商部に呼び、厳重に抗議した。ところがテレビカメラに映し出された日本大使の表情が駐韓日本人の間で問題となった。

寺田大使があまりにぺこぺこし、にやにや笑っていたというのだ。

これと関連してある日本の外信記者は「当時、ソウル駐在日本記者のなかで最古参格のK記者が、寺田大使に表情に問題がある、と指摘した。この話を聞いてから、寺田大使は教科書問題と関連してカメラに映し出されるとき、意識的に口を堅くつぐみ、深刻な表情になった」と語った。

記者が大使の表情までを左右したのである。寺田大使に表情をコーチしたこの記者は、ほとんど毎週日曜日、寺田大使とゴルフ会見を持ちながら国内外の各種の情報をやりとりすることが知られている。

日本の記者たちが情報収集の先鋒ならば、そのつぎには日本の商社駐在員が連なっている。商社駐在員たちは韓国の証券市場に出回る、あらゆる情報をすべて集め、細密に分析して日本大使館と本国に報告する。

無論、あらゆる日本記者が大使館に協調するわけではない。大勢がそうするだけであり、強要事項ではない。日本記者たちの「木曜集会」に比肩する日本経済人たちの会合は、毎月第二水曜日にソウル市庁そばのプレスセンター8階で開かれる「ソウル日本人会(SJC)」だ。これはソウルに出てきている日本経済人たちの集会であり、日本大使が名誉会長であるため大使と大使館職員が参加し、経済懸案を討論して情報を共有する。

▲中国:情報戦も人海戦術

あらゆる国家は国家安保次元で、自国の情報機関の組織と活動内容が外部に流出されるのを極度に嫌う。中国の場合はこれが特に激しい。

中国情報組織の規模や予算は外部に知られたことがまったくない。香港の時事週刊誌「争鳴」は中国副総理、鄒家華が1996年9月「情報工作強化会議」でおよそ50以上の国家、170の都市で活動する数万名の中国情報要員の功労を致賀した、と報道したことがある。この報道が事実ならば、中国は非常に広範囲な海外情報組織を運営していると見ることができる。

中国は社会主義国家という特性上、情報組織もかなり複雑である。韓国国防研究員金テホ博士は、中国の情報単位は党・政・軍にすべて存在し、これを別々に分析しなければならない、と説明した。党・政・軍のうち最も力がある党情報機関は、党中央対外連絡部(中央連絡部)が代表的であるる。中央連絡部は党の対外関係主務部署として社会主義国家、全世界の共産党、左派政党および団体との関係を維持・発展させることが主任務である。

中国の対外政策の決定過程で、中央連絡部の位相は外交部より高い。中央連絡部は党の対外情報収集を専門担当するのだが、特に北朝鮮との党対党関係はすべてここで引き受けている。

外交部副部長(次官)出身である戴秉国が1997年8月以後、中央連絡部の部長職を担当している。戴秉国は2001年4月にソウル、2000年9月に平壌を訪問した。1994年7月の金日成主席の死亡以後、中国と北朝鮮間の公式交流は過去と比べてかなり減少した。特に中国側人士の北朝鮮訪問が大きく減少したが、中央連絡部副部長級人士はほとんど毎年北朝鮮を訪問している。

中国共産党の情報機関は中央連絡部のほかにも、統一戦線工作部(統戦部)がある。この組織は台湾・香港・マカオおよび全世界の華僑団体に対する統一工作を展開する。統戦部組織は韓国内にもあるものと思われるが、彼らは韓国内の華僑と台湾代表部を相手に工作を行っている。

つぎは国務院の情報組織だ。国務院情報組織の国家安全部(国安部:MSS)は中国の代表的な情報機関である。正式な設立目的は「国家の安全と反スパイ工作を領導・管理し、社会主義の現代化建設および祖国統一の大事業を保衛・促進すること」となっている。

国家安全部は1983年の設立初期には9つの工作局と4つの直轄支援機関で構成された。設立以後、中国の対外接触が増加してコンピューター、情報通信、衛星、無人航空機(UAV)などの先端技術を利用した諜報活動が増えたため、業務範囲と組織を大きく拡大した。1990年代末現在、国家安全部は17の工作局と10以上の行政支援局から編成されている。

国務院のもうひとつの情報組織である公共安全部(公安部:MPS)は、社会公共治安を担当する。公安部は警察業務以外に国境警備、出入国管理、消防および山火事予防、民間航空、産児制限、技術偵察などあらゆる雑多な業務を一手に引き受けている。現在、北京にいる駐中韓国大使館の清掃夫と運転手がもし中国人ならば、公安部所属の情報部員であると考えて間違いない。

新華社は情報機関も兼任

やはり国務院所属である「新華社(NCNA)」は、言論社の機能と情報機関の役割をともに遂行する独特の言論社である。現在、「新華社」ソウル支局には職員2名が活動中だ。「新華社」は中国の消息を対外に伝播し、海外の消息を国内に報道する一般通信社の機能のほかに、全世界各地の消息を収集、翻訳、要約、分析して中国の高位級指導者を含む関係部処に随時報告する。

「新華社」ソウル支局の場合は毎朝、本社から当日の確認事項を指示するファックスが送られてくる。ソウル駐在記者は、本社から入るこのファックスを中心として、その日の行動半径を決定する。「新華社」は国家安全部など情報機関の要員が海外に派遣される際、身分を隠蔽する手段としても利用される。

「新華社」は党中央宣伝部の指揮・監督を受け、「新華社」社長は「人民日報」社長と同様に国務院部長(長官)級に該当する。「新華社」は国内31の支部、国外(局外)107の支局を運営し、雇用人員も1万名を越える。

国務院所属の海外組織のうち、中国外交部は厳密な意味での情報組織ではなく、中国政府の対外公式窓口として党政治局と中央外事領導小組の決定を執行する外交実務組織だ。

中国は軍の情報機関も別に運営している。中国人民解放軍の情報組織は軍総参謀部に入っている。軍総参謀部は作戦、企画、情報、訓練、動員を担当する全国軍事力の指揮機構だ。こちらには総参謀長以外に副総参謀長6人がおり、このうち熊光楷上長が軍情報組織の責任を負っている。中国軍の情報収集業務は、総参謀部2部(情報部:別名軍情報部)、3部(通信部)、4部(電子部)と総政治部連絡部など4つの部署で遂行される。この中で最も重要な部署は、総参謀部2部である。

総参謀部2部は軍の情報活動の総括部署として、7つの活動局(工作局)と6つの行政支援単位から構成されている。

このうち1局は海外情報収集と間諜派遣業務を担当している。1局は北京、瀋陽、南京と広州に分局(別名連絡局)を運営しており、特に北京分局は駐中外国大使館武官部を中心として、外国人を監視し対スパイ活動を行う。いわば北京にいる韓国大使館の相手役であり、わが国の大使館の中国内での情報収集活動を統制して攻撃する。

現在、駐韓中国大使館武官部の職員は合計4名である。彼らはみな軍情報部である総参謀部2部3局から派遣され、中国人民解放軍国際関係学院でともに訓練も受けている。ソウルで中国の党・政・軍情報組織要員たちが繰り広げる活動はすべて、中国の対韓半島政策基調と目標を支援するためのものである。ここには韓国の国益を損ねる活動も相当数存在している。

中国情報当局の人海戦術

情報関係者によれば、中国の情報活動を防御するのは、他の国家よりも特に難しいということだ。これは米国を相手にした中国の情報活動によく現れる。米国の情報機関は、中国の対米情報活動が組織的で現代化されるよりも、基本的な対人情報活動を広範囲に遂行しているために、防諜活動が難しいと結論している。一言でいえば「人海戦術」で押し通すということだ。

韓国内での中国の情報活動も同様である。韓中修交10年が過ぎたが、中国がソウルに派遣した公館員の数字はそれほど多くはない。それゆえ公式の情報要員も多くなく、情報力も微弱なすい準だろうと考えるならば誤算である。

情報関係者によれば、中国は他の方法を使っている。途方もなく増えた民間交流を活用し、低い水準で広範囲に情報を収集するものだ。中国の情報部員はおもに言論社・航空会社・合弁企業のような駐在国内の中国人駐在員に偽装して活動する。また直接動かずに協調者を利用するときは、現地人よりは華僑を使う。工作形態は人間関係を重視し、協力者は間接接触を通じて抱き込む。対象者には長期的に、さまざまな形態の特典や金銭を提供する。このような中国の情報活動は、ある軍事関係者の証言にもよく現れている。

「ある日、ソウルであった韓国人の集まりで、中国の先端軍事技術について論議したのだが、数日後に中国へ出張に行ったとき、その論議の内容が正確に中国側へ伝わっていたことを確認した。情報機関で働く、ある中国人の友人がその内容を語ってくれたのだが、内部報告書を見ると私の名前の漢字がひとつ間違っていた」

この関係者はその日、集会に外国人はひとりもいなかったのに、どうしてその内容が中国へ伝わったのかわからず、中国の情報収集能力を警告した。

民間人を活用した中国の情報収集事例は、民間企業体でもたびたび発見される。韓国と中国が共同で投資した韓・中合資企業の場合、韓国側の投資持分が高い場合は普通、社長は韓国人となり、副社長は中国人となる。ところが年配の中国人副社長が、若い中国人の会社運転手に報告を行う場合がたびたびあるのだ。この場合、若い運転手は共産党の情報機関要員である可能性が高い。中国は非党員の場合、どれほどに職責が高くとも、党員に状況を報告しなければならないのだ。

ソウルのいくつかの中国食堂も、わが方の情報が中国に伝わりやすい場所だ。駐韓中国大使館の職員が韓国のさまざまな人々としばしば食事をする、汝矣島A中国食堂と新村のB中国食堂がその代表的な場所なのだが、事情を知る人たちはこの食堂では機密の話はせず、公式的な出逢い以外には、ここで要人と接触しない。現在、この食堂は中国情報部員が安家同様に運営する場所として知られている。

中国国内は外国より情報収集活動がさらに熾烈である。中国は民間居住住宅のみならず、工場・学校・研究所・公共機関などあらゆる場所に監視員が常駐している。中国の情報機関は中国に短期、あるいは長期に滞在する外国人を24時間監視し盗聴する。外国人に提供されている中国内の宿泊施設や会議場も、無制限に盗聴されていると考えて良い。

中国の情報体系を理解すれば、韓中関係のみならず韓国政府が中国を理解するのに大きな助けとなる。中国は一党支配が維持されているため、最高指導者と情報・安保業務責任者の在任期間が非常に長い。

そのため、他国と比較して政策の一貫性・持続性が非常に高いのだ。一方、権限と権力が最上部の少数に集中しているため、政策と路線が変わる場合は短期間になされる可能性が高い。中国はまた複雑な体制と組織で業務の効率性を高めるため、党・政・軍の意見を取りまとめる「系統」制度を施行している。

中国のこのような情報系統は、韓国としても見習う点が多い。韓国の外交当局と情報当局は短期的成果を重視し、政権の行方によって専門家をしばしば交替させる。関連部処間での業務協調がまったくだめで、諮問機構も形式的な場合が多い。駐韓中国大使館のある関係者は「韓国側のパートナーがあまりしばしば変わるため、誰をどのように相手しなければならないのかわからない」と漏らした。

▲ロシア:強大な北朝鮮情報

過去のソ連が崩壊した以後、1991年12月にKGBも海外情報部(SVR)と連邦保安部(FSB)に分離された。この中で海外情報を担当するSVRはKGBの第1総局が前身であり、人員は1万5000人程度と推算される。この中で、韓半島はアジアとオーストラリアを担当するSVR第5局の要員が専門担当する。

ロシア大使館のホワイト要員は2人

米国のFBI格であるFSBは海外工作、大統領警護業務、通信業務を除外した大部分のKGB業務を吸収した。こうした点から、FSBはKGBの後身と考えられる。FSBは1995年からは業務領域を国内活動で国内外へ拡大して、名実ともに最高の情報機関へと変身した。FSBは連邦行政機関のみならず、軍部隊とその他の情報保安機関はもちろん、国境守備隊・内務部保安軍など準軍事組織にまで組織網をひろげた。職員の規模はさる1995年8月には、アルファ(α)部隊を含め約8万名と数えられた。

このほかに、ロシアは信号情報(signalintelligence)を扱う機構として連邦通信情報局(FAPSI)を運営している。連邦通信情報局は高位公職者・軍幹部・主要な財界人士が使用する通信網の管理、通信保安関連法規の改善、暗号装備の承認および試験、秘密および暗号通信分野の情報収集が主任務である。職員は通信部隊を含め、約10万名にも達する。

ロシアはまた軍情報機関として参謀本部情報総局(GRU)を運営している。この組織はロシアの軍隊のために戦略・戦術情報を収集する。

ならばソウルにおけるロシアの情報人材の実態はどうなのか?現在、駐韓ロシア大使館で情報機関要員であることを公式に明らかにしている職員は、2001年6月にロシア連邦保安局(FSB)で出たセバスチャン・ノフと2001年夏に赴任した、海外情報局所属のヤロボイが知られている。このふたりの職責はみな保安担当参事官だ。

だが、この二人は韓国の情報機関に情報部員であるという事実を公式に通報して入国したがゆえに、思い通りに活動することができない。彼らは韓国国情院との公式交流、韓国内の公安機関(警察庁、法務部、大検察庁、関税庁、海上警察、国税庁)と接触する公式の交流活動を行う。この中でヤロボイ参事官は国情院との交流業務をあずかり、セバスチャン・ノフ参事官は国情院を除くすべての機関との接触交流を受け持っている。

だがロシア大使館も彼らと同様の公式要員のみならず、ブラック要員(非公式要員)も幅広く活用している。わが国の情報機関は駐韓ロシア大使館のブラック情報要員を、正確ではないものの20名以上は把握している。このうち、大使館内部の職員が領事部に2人、政務部に3〜4人、武官部に2〜3人など合計10余名程度と推算される。1997年、韓露外交官対抗追放事件時、韓国から追放されたアブラキン参事官は、韓国内のロシア情報機関拠点長であった。

これ以外に駐韓ロシア貿易代表部(3〜4人)、ソウル駐在ロシア言論社記者(1〜2人)、留学生、科学者、商社駐在員をすべて合わせると10余名と把握される。ロシアの秘密情報部員を把握する方法は数種類あるのだが、最も確実なのは米国CIAやイスラエル情報機関に要請する方法だという。

情報関係者によれば、そうした場合は一ヶ月以内に資料がきて、80%以上は成分が判別できるということである。1997年に追放されたアブラキン参事官の場合、修交以後、韓国に3回入国したのだが、最初は記者として、2回目は事業家として、3回目は外交官として来たため、わが国の情報機関は難なく判別することができたという。残りの20%は推定するだけあるが、わが国の情報機関が6ヶ月間尾行し監視して、活動事項と購読する刊行物を確認して判別する。

最も良い方法は、本国から主要人物がくるとき、大使館職員がどんな役割をするかを見ることだ。駐韓ロシア大使館の場合、昨年プーチン大統領が訪韓した際、儀典官と運転手など大統領を近距離から補佐する職員は、職位に関係なく情報機関要員が掌握したことが判明している。

ロシアもわれわれとまったく同じ方法を使う。もし駐韓ロシア貿易代表部に、韓国の情報要員C氏が記者という身分で二回目の訪問をしたとする。このときからロシア情報機関に、C氏のファイルが新しく作られる可能性が大きい。このファイルにはC氏の正面写真と側面の写真が添えられる。代表部の正門を通過するとき、本人も知らない間に撮られるのだ。そして4年後、C氏が英国のロシア大使館を韓国の商社駐在員という身分で訪問すれば、彼はすぐにスパイとして追い詰められることになるはずだ。

ロシア情報要員の関心事は政治、経済、韓国軍情報、北朝鮮、米国と中国に対する韓国の見解など多様だが、やはり最大の関心事は北朝鮮と国内政治であることが判明している。ロシアは他国とは異なり、韓国の先端技術にはそれほど関心がないものと伝えられている。

反対にロシア大使館の情報力は、彼らが自国の情報を守るためにどれくらい情熱を傾けているのかをながめればよく理解することができる。駐韓ロシア大使館は公式の外交官が40〜60人いるのだが、正式な韓国人職員は領事部に女子職員が1人いるだけである。また信じられない話だが、駐韓ロシア大使館は最近まで保安問題のゆえにインターネットを使用しなかった。ロシア大使館は2001年11月に、若い外交官たちとの長い議論のすえ、インターネットを使用しはじめた。そして専用線は二つしかないことが判明した。

ロシア大使館はパートタイムでタイピストを雇うときも、外交官婦人が引き受ける。大したことのない落書を認めた紙でも、大使館内部で書かれたものならば外に持ち出すことはできない。毎日午後6時になると、職員がごみ箱を持って大使館の内部を回りながら、使用済みの紙を集める。こうして紙を一ヶ所に集め、粉碎機に入れるのだ。大使館3階の複写機に故障が起きても、修理工を建物の中へは入れずに、複写機を建物の外側に持ち出して修理する。

職員が公式に韓国人に会う場合、保安参事官の事前許可を得なければならず、会った後には事後報告する。これを破った場合、ただちに本国へ帰らなければならない。現在、ロシア本国では局長級外交官の報酬は一ヶ月に200ドル程度だ。ところが韓国に出てくれば、3等書記官であっても月給3000ドルに各種手当がつく。彼らは一度でも帰国措置となった場合、海外勤務の機会が永遠に消滅するため、保安問題には極度に敏感なのだ。

韓国内のロシア情報部員の活動は米・日・中よりは相対的に強いわけではない。だが彼らの強みは北朝鮮情報が豊富だということである。ソウルの外交家の間では、北朝鮮に関する機械情報の場合、ロシア側の情報が最も正確であると知られている。

ロシア大使館の鉄壁セキュリティ

これはCIA韓国支部が、ロシア諜報衛星が撮影した北朝鮮写真を買い入れていることを見ればわかる。情報関係者によれば、平壌市内を撮影する場合、米国側諜報衛星は100m程度の距離から見たのと同じ写真を撮ることができるものの、ロシア衛星は10m上空から見たのと同様な写真を撮影できるということである。そこでCIA韓国支部は、北朝鮮の要人の動向を確認する際、ロシアから衛星写真を買い入れているというのだ。10mの距離ならば要人の動静を十分に確認することができるためである。

ロシアは北朝鮮の黄海道安山地域に別名「ラモーナ(Ramona)」という秘密レーダー基地を運営していることが判明している。これは駐韓米軍が烏山で運営しているレーダー基地に匹敵する。最近、ロシアのジャーナリスト、アンドレイ・ソルダトフが暴露したこの秘密レーダー基地は、韓半島全域はもちろん日本の沖縄地域まで監視することができる。ソルダトフの暴露によれば、このレーダー基地は日本の沖縄米軍基地に関する情報を収集分析し、北朝鮮は韓国に関する情報を収集し、対南戦略に活用しているということである。

1998年の外交官対抗追放事件の際にロシアから追放された趙成禹参事官は、このレーダー基地に関する情報をロシアから引き出そうとしたが、尻尾をつかまれたことが判明している。ロシアは過去のソ連時代から蓄積した機械情報力で獲得した北朝鮮情報を、周辺国の情報機関員と対等に交換しつつ、高級情報を取得していることが知られている。

だが情報関係者は韓露修交以後10年が過ぎたものの、現在までは韓国内でのロシアの情報活動はそれほど脅迫的ではなかった、と評価する。しかし今年の下半期からは様相が大きく変わるようだ。その契機は駐韓ロシア大使館の移転である。

駐韓ロシア大使館は現在、ソウル江南区大峙洞のあるビルディングを賃貸で使用しているのだが、今年の6月頃にはソウル中区貞洞の過去のロシア公使館の場所に建設している大使館の建物が完工する。貞洞大使館が完工すれば、信号情報を扱う連邦通信情報局(FAPSI)韓国支部が入居する計画である。こうなった場合、国内の主要な通信をロシアの監視盗聴要員が傍受する可能性が非常に大きい。ソウルでは機械情報力は米国が最も優勢だったのだが、ここに正式にロシアが挑戦状を差し出す時代が来たのだ。

いままでアジアにおけるロシアの拠点公館は日本の東京であった。東京が拠点公館となった最大の理由は保安問題のためであった。これは現在、駐韓ロシア大使館にもテレックスやパウチのような通信施設があるのだが、毎月1〜2回ほど、職員3人が本国に報告する主要事項を携えて日本へ出張するのを見てもわかる。ロシアの外交官たちにとっては、大峙洞の賃貸ビルディングは信じられないのである。実際に駐韓ロシア大使館の職員が「貞洞に新しく建てている大使館が完工すれば、日本へ出張する楽しみがなくなる」と愚痴をこぼすほどに、新築されている貞洞大使館は鉄壁のセキュリティで施工されている。

新築の貞洞ロシア大使館

新築の貞洞大使館はすでに、さる2001年9月30日付で国内の三星物産が骨格と鉄筋工事を終わらせた。この期間にも、ロシアの保安担当官はセメントを混ぜ合わせるそばで監視していた。9月30日以後には韓国人の職人は入れずに、ロシア本国から派遣されてきた職人が工事をしていたのだが、本国からきた保安要員10人が建物に持ちこまれるセメント、石、鉄筋などあらゆる資材を逐一、検索台に通過させて監視している。米国CIAは建築資材工場までスパイを浸透させ、材料自体に盗聴装置を設置する実力があるためだ。

現在、ロシア大使館の工事現場は外国人は立入禁止だ。通訳が必要ならば保安担当者が傍らに添って入っていく。

最近、ロシア大使館では意味ある変化が起きた。職員を北朝鮮専門家に大挙して交替したのである。

さる1月2日赴任したミナイエフ政務参事官と武官部のニキブロフ参事官、釜山総領事館のマジェコラ領事はすべて北朝鮮に10年以上勤めた北朝鮮専門家だ。彼らはみな、韓国にくる直前まで北朝鮮で勤務していた。過去のロシアは北朝鮮勤務者を韓国に送るとき、本国に呼び一定期間服務させた後に派遣した。しかし最近では北朝鮮専門家を同時多発的に投入しているのだ。

これと関連し、ある駐韓ロシア大使館関係者は「ロシアは、すでに韓半島統一以後に対応している。そこで韓半島専門家を南北韓に同時多発的に派遣しているのである。また現在、韓半島に関するロシアの最も多いなる関心事は、韓半島横断鉄道とシベリア鉄道を連結することだ」と語った。

ロシアの情報要員は、駐韓ウクライナ・ウズベキスタン・カザフスタン・ベラルーシ大使館など独立国家連合(CIS)出身の情報部員たちと緊密に情報を交換する。彼らは一般の外交官たちとは異なり、過去にKGBで教育を一緒に受けたがゆえに、強い情が残っているのだ。彼らは定期的に漢江の水辺でサッカーの試合を繰り広げるのだが、おそろいのユニフォームにロシア語を使う。このときに使われる呼称は、いまは使わないソ連時代の言葉である「タバリッシ」(同志という意味)」だ。

ロシアの情報力を論ずるときに避けられないのが、ソウルで行われる米・露間の情報戦である。二国間の神経戦は、現在まで米8軍がロシア外交官に米軍部隊車両出入証である「デカール」を公式発給しない事実を見てもわかる。ロシアはさまざまな通路で、米軍側の情報を解明するために努力している。

ある情報関係者は「駐韓米軍クラブで仕事をするロシア女性従業員が、意図的に米軍将校に接近する場合が頻繁にある。米国情報機関はこれを綿密に観察している」と語った。

ロシア側の試図が事前に発覚した事例もあった。ある黒人米軍女子下士官が韓国語授業を受けたのだが、駐韓ロシア大使館の武官が一緒に授業を受けて接触を試みたというのである。これを識別した米国側がロシア側に抗議すると、ロシア側もあらかじめわかっていたのか、該当武官が帰国したという。 

▲韓国の対応態勢

このようにソウルで外国のスパイたちが横行しているのだが、これに対するわれわれの対策はどうなのか?

これと関連した元国情院高位幹部の発言は意味深長だ。

「韓国人は保安意識が弱い。外国の場合は主要公職者が外国公館員や外国人に会えば、必ずこれを報告して発言内容を確認されねばならない。これは一個人が持っている機密水準にしたがって、必ず後から行われなければならないことだ。ところが韓国でこれを実行するならば、個人の自由を抑圧するなどと論難が紛々とするはずだ。また韓国人の脳裏には、知らず知らずのうちに外国人によく見せようとする事大根性があり、国家の主要な機密をさらけ出す場合が多いのだ」

通常、国家は外国の情報活動に対して防御活動を繰り広げるのだが、これは受動的な方法である保安活動と、積極的な方法である防諜活動にわかれる。情報を保護するのが保安である。事実上、保安は政府の施設物に対する接近を遮断したり、テロ・防諜活動のような物理的な活動と重なっている。

現在、政府で海外情報部員たちの韓国内での活動を定期的に確認し対応する主務部署は国家情報院だ。国家情報院でなくても、テロに対応して外事防諜・対北朝鮮捜査・国際犯罪および海外情報収集を担当する強力な国家情報捜査機関は必ず必要なのだ。言論にほとんど表れないため、一般国民にはあまりなじみはないものの、海外情報機関と工作員、テロ組織を相手する国情院の保安・防諜活動は、直ちに国益と連結する。

国情院は政権の利害関係によっては組織的な犯罪を行い、民主化運動を弾圧することもあったが、これはすべて国内の担当部署の役割であった。現在、国情院は2002ワールドカップを控えて「テロ防止法」を作り、2月の臨時国会で通過させようと努力している。ソウルがスパイ天国で、ワールドカップが三ヶ月後に控えているのであれば、どんな形であれ対応は必要なのだ。

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