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モントリオール条約により、韓国政府は大韓航空テロ指令者金正日がソウルへ来たらすみやかに逮捕、裁判に回附する義務がある

(月刊朝鮮 2001年9月号)

航空テロ抑制のためのモントリオール条約の義務条項を、韓国は避けることができるのか?

KAL858テロ指令犯金正日がソウルにくれば、韓国政府は彼を必ず逮捕し、裁判にかけなければならない義務がある。

例外を認めないモントリオール条約は、金正日をKAL858テロ指令犯と発表した韓国政府に、「避け難き義務」を強制している

許容範(朝鮮日本報政治部記者)・Vladimir

jaykang@chosun.com

金正日を逮捕しなければならない国際条約上の義務

『北朝鮮の国防委員長の金正日が万一、ソウルを訪問する場合、大韓民国政府は彼を逮捕しなければならないのだろうか』

この質問は、金正日のソウル答訪を待ちこがれて大歓迎する側にはあきれた話に聞こえるだろうが、金正日をソウルへ招請するに先立って、政府が深く検討してみるべき懸案だ。

政府は1987年、金賢姫による大韓航空858機爆破テロ事件がおきると、捜査結果の発表をつうじて、このテロが金正日の指示によるものであった、と公式に明らかにし、テロ犯である金賢姫自身は、彼女が金正日の親筆指令により犯行をおこなったと告白した。

またわが国は、航空テロ犯が自国の領土内にいる場合、いかなる例外もなく、必ず逮捕しなければならない義務を規定した「民間航空安全に関するモントリオール条約」に加入している。この「モントリオール条約」には、いわゆる「外交的兔責」に関する規定もない。

したがって法理的に言うならば、金正日が「事実上の国家元首」であろうと、あるいは大韓民国政府の招待を受けた事実上の国賓であろうと関係なく、政府はこのモントリオール条約によって必ず金正日を大韓航空858機の爆破テロ教唆犯として逮捕し、裁判にかけなければならない国際的な義務を負っているのだ。

政府が金正日を逮捕しなければならない国際的義務を負っているということは、モントリオール条約と、大韓航空858機爆破事件に対する政府の捜査結果、そしてこれに対する国際社会の対応措置などで、法理的解釈にいかなる無理もない。

まず「モントリオール条約」を見てみよう。

この条約の公式名称は「民間航空の安全に対する不法行為の抑制のための条約」(Convention for the suppression of unlawful acts against the safety of civil aviation)で、1971年9月23日にカナダのモントリオールで締結された。韓国はその2年後の1973年加入し、北朝鮮も1980年8月13日に加入、締約国となった。

この条約は現在、加入国数だけでも151ヶ国に達し、民間航空機を保有・運行する事実上の世界のすべての国家が加入している、世界最大の国際条約のひとつだ。ひとことで言えば、世界の民間航空機を対象とするあらゆる犯罪を扱う国際法であり、軍用・税関・警察機を除外する、すべての民間航空機に関する犯罪に適用される、世界的規範であるわけだ。モントリオール条約は、次に列挙する五種類の行為類型を、この条約の適用を受ける犯罪行為と規定しながら、いかなる者もこのような行為をおこなった場合には、犯罪をおかしたものとする、と規定している(第1条第1項)。

その五種類の類型は次のとおりである。

1.飛行中の航空機に搭乗した者に対して暴力行為を働いたり、その行為がその航空機の安全に危害を加える可能性がある場合。
2.運航中の航空機を破壊する場合、またはそうした飛行機を傷つけ、飛行を不可能にしたり、飛行の安全に危害を与える可能性がある場合。
3.いかなる方法によってでも、運航中の航空機上に、その航空機を破壊する可能性があるか、その航空機を傷つけて飛行を不可能にする可能性があるか、またはその航空機を傷つけ飛行の安全に危害を与える可能性がある装置や物質を設置したり、または設置しようとした場合。
4.航空施設を破壊、あるいは損傷したり、その運用を妨害し、そのような行為が飛行中の航空機の安全に危害を与える可能性がある場合。
5.虚偽であることがわかっている情報を通報し、それにより飛行中の航空機の安全に危害をあたえる場合。

条約はつづけて「いかなる者も」▲上で規定された犯罪をおかそうと試みた場合や▲そのように犯罪を犯したり、または犯そうと試みる者の共犯者である場合にも、犯罪を犯したものと見る、と規定している(第1条第二項)。

金賢姫の証言により金正日のテロ指令が明るみに/14年間、北をテロ支援国の名簿に含む

いっぽう金賢姫と捜査当局によれば、金正日は1987年11月29日、大韓航空858便ボーイング707機がビルマ(現ミャンマー)近海とおぼしき海域で公衆爆発、墜落する事件が発生する1ケ月半前の1987年10月7日、彼ら(金賢姫と、自殺したもう一人の男性の犯人、金勝一)に『88ソウルオリンピック参加申請妨害のために、大韓航空旅客機を爆破せよ』と親筆工作指令を下した。その後、二人はまた11月10日に『11月28日23時30分、バグダッド発ソウル行の大韓航空858機を爆破せよ」という最終指令を受け、この飛行機を爆破したということだ。

彼らはラジオに時限爆弾と液体爆薬をこっそりと隠して搭乗した後、7時間後に爆発するよう設定し、寄着地であるアブダビ空港から降りたものと判明した。

このような捜査結果と、犯罪者自身の告白に基づくならば、金正日はモントリオール条約第1条第1項の3番項目の犯罪(爆破物質と爆破装置の設置)に対する教唆犯となるのだ。教唆犯は共犯の一種であるから、金正日は大韓航空爆破の共犯として、犯罪構成要件上にいかなる瑕疵もない。

参考までに、わが国の刑法は第31条1項で、他人を教唆して罪をおかすようにした者は、罪を実行した者と同じ刑で処罰すると規定し、教唆犯を、犯罪を直接行った正犯と同じ刑で処罰するものとしている。金賢姫は死刑宣告を受けて、特別赦免となった。

さらに進んでその第二項と第三項では、それぞれ教唆を受けた者が犯罪の実行を承諾して、実行の着手に達していない時には「教唆者と被教唆者を、陰謀または予備に準じて処罰する」、「教唆を受けた者が、犯罪の実行を承諾しないときにも、教唆者に対しては前項と同様である」と規定し、被教唆者が犯罪を実行しない時にも、教唆者を処罰している。これは世界的に確立された法理論とも符合する。

国際社会も、大韓航空858機の爆破が金正日の指示による北朝鮮工作員の仕業であることが明るみになったことで、これを根拠に北朝鮮に対して強力な制裁措置を執った。

米国はこの事件以後14年間、北をテロ支援国名簿に含む

その代表的な場合が米国だ。米国は1979年、国際的に拡散するテロを防止するため、いわゆる「反テロ法」を制定し、毎年「テロ支援国」名簿を発表しながら、テロ支援国として指定された国家に対しては、いわゆる不良国家(rogue state)という名前をつけ、強力な貿易・経済制裁措置を講じている。

米国は1987年、大韓航空858機爆破事件が発生すると、反テロ法および武器輸出統制法により、翌年の1988年1月20日に北朝鮮をテロ支援国家として指定した。米国はそれ以後、さる4月30日発表した例年の世界テロ報告書で、北朝鮮をはじめとしてキューバ、イラン、イラク、リビア、スーダン、シリアなど7ヶ国をテロ支援国として指定することにより、北朝鮮に対しては1988年1月以後14年間もテロ支援国名簿に含めている。

北朝鮮は、米国にブッシュ政権が誕生し状況が変わりはしたものの、昨年のクリントン政権の末期には、ほとんどテロ支援国名簿から除外される状況にまで至った。ここには昨年6月15日の南北頂上会談以後の、韓国政府の一貫した努力も作用した。昨年10月、北朝鮮の趙明禄次師が米国を訪問した際、北朝鮮と米国は「国際テロに対する米・北共同声明」を発表しながら、「米国の法律の要件を満たし次第、北朝鮮をテロ支援国から除外するようにする」と明らかにしたことがある。

さる8月4日の、プーチン・ロシア大統領と金正日北朝鮮国防委員長とのあいだの「モスクワ宣言」にも、この部分が第1項にあがっている。金正日が米国の貿易・経済制裁措置から抜け出すためにどれほど努力しているかを見せているものの、ブッシュ政権はあいかわらず金正日に対し「信用できない指導者」という疑惑のレッテルを貼り付けている。

大韓民国政府は金正日逮捕の義務を免れない

「モントリオール条約」は、誰しも安心して飛行機の旅行ができるよう、民間航空の安全を保障する最高の国際法ということができる。また国際法(国際条約は国際法の一種であり、国際法は国内法と同じ効力を持つ)が、その実効的効力を保証しようとするなら、それだけ規定は明確でなければならず、この規定の違反行為に対しては厳格な法適用が、例外なしに行われねばならない。

モントリオール条約が世界の民間航空の安全に関する最後の砦でありながら、わずか16組の規定としてのみ構成されているということは、それだけ例外や複雑な解釈の余地を残す規定を排除しているためである。

例えば、この条約の加入国の義務を規定した条約第3条は、「各締約国には、第1条に規定された犯罪を厳重な刑罰で処罰できるようにする義務が生ずる」という意味の文章となっている。

金正日のソウル答訪は、彼が大韓民国政府の司法権が実効的に達し得ない地域から、その実効的司法権内に入ってくることを意味する。すると政府は、金正日に対して具体的ににどうしなければならないだろうか。

「モントリオール条約」はこのような場合、加入国がどのように行動しなければならないか、ということまで明確に規定している。条約第6条と第7条に出ている。

「犯人および犯罪容疑者がその領土内に滞留している締約国は、この者を拘置するか、この者の身柄確保のためのその他の措置を講じなければならない…」(第6条)

「その領土内で犯罪容疑者が発見された締約国は、もし同人を引き渡さない場合、例外なしに、またその領土内で犯罪が犯されるかどうかの可否を問わず,訴追するために、権限ある当局に同事件を回附しなければならない。かかる当局はその国家の法律上、重大な性質の一般犯罪の場合に執られるのと同じ方法で、その決定を下さなければならない」(第7条)

この規定によれば、金正日がソウルにくる場合、政府は彼を即刻逮捕し、裁判にかけなければならない義務を負う、ということが明確である。さらに進んで規定を詳細に読んでみると、政府はたとえ爆破された大韓航空858便がわが国の飛行機でなくても、金正日を犯罪容疑者として逮捕し、彼を航空機登録国に引き渡すか、直接彼を裁判にかけなければならない義務を負っている。

まさにこれが国際法で言う、いわゆる「普遍管轄」の理念で、モントリオール条約はこれを最も具体的に実現することで、万国共通の国際法としての強力な力を持つのだ。普遍管轄(Universal Jurisdiction)とは簡単に言えば、この条約の第1条に規定された犯罪を犯す者に対しては、どの国家でも捜査と裁判の管轄権を有する、ということだ。誰でもこうした犯罪者を見れば逮捕し、裁判にかけることができるということで、民間航空機に対するテロ犯罪は人類の普遍的利益の次元で厳しく処断されなければならない、という理念を含んでいる。

普遍管轄が適用されるもうひとつの犯罪は、海賊行為が代表的である。例えば、いかなる海賊団がわが国の近海で海賊行為を働けば、彼らがどこの国の国民であろうと関係なしに、政府は彼らを捕らえ調査し、裁判できるということだ。ここでわれわれが念頭に置かなければならないことは、モントリオール条約が実現する普遍管轄の理念は、「管轄権を行使することができる」ことではなく、「しなければならない」と規定している、という事実だ。

国内法廷で告発されている金正日/金正日を平壌へ帰したら、全世界に釈明することができるのか

金正日と同様な航空機テロ犯を国際社会がどのように扱っているかは、1988年12月のスコットランド・ロッカビー上空で起きたパンナム機103便爆破事件の事例が如実に見せてくれる。

この爆破事件で270名の人員が死亡する惨事が発生すると、英国と米国はモントリオール条約により、国家情報要員と明らかにされた2名のリビア人を、爆弾装置容疑で起訴し、この裁判のために容疑者を引き渡すようリビア政府側に要求した。英国と米国は、この事件がリビア政府の支援により行われたと主張した。しかしリビアが犯罪容疑者の引き渡し要求に応じないため、英国と米国は国連安保理を動かして犯人引渡しを要求する安保理決議を採択し、国連次元の強力な経済制裁を加え始めた。

リビアは以後、国際司法裁判所に提訴までしながら「われわれが犯罪容疑者を関連当局に回付したので引き渡せない」と粘ったが結局、国際社会の圧力に屈服し、10年が過ぎた1999年4月5日、容疑者2名を国連に引き渡した。

英国スコットランド裁判所はさる1月31日、このロッカビー事件のリビア人容疑者2人のうち、1人に有罪宣告を下し、もう1人には無罪を宣告した。このときもジョージ・W・ブッシュ米大統領は「リビア政府が、270名の命を奪ったパンナム機爆発事件と関連している、という考えに変わりはない」と語り、トニー・ブレア英国総理は「今回の判決が、国連の対リビア禁輸措置解除には直結しない」と語った。米国と英国が、10余年の間にわたる弛まない努力のすえに犯人を裁判にかけることができたのは、まさに「モントリオール条約」のためであった。

再び最初の質問に戻ろう。

「すると政府は、金正日がソウルへ来る場合、モントリオール条約を遵守する意思を持っているということなのか」

政府は、これまでに最小限、一回以上はそのような質問を受けた。

さる2月5日、大韓航空858機爆破犠牲者遺族会(会長金炯昌)は、大韓航空空中爆破事件と関連し、金正日を大量虐殺およびテロ指令などの容疑でソウル地検に告訴した。彼らは「115人が犠牲となった大韓航空機の空中爆破事件は現在、生存している金賢姫に対する捜査を通じて、金正日の親筆指令であることが判明した」としながら、「金正日が犯罪事実に対して是認・謝罪・補償なしでソウルにくるならば、即刻逮捕して断罪しなければならない」と主張した。

彼らだけでなく、李哲承氏が主導する自由民主民族会議など10余の団体も、同様の趣旨で金正日をソウル地検に告発した。

しかしその後6ケ月余が過ぎた現時点まで、検察はこれについての何らの捜査を進行していない。大韓航空858機爆破犠牲者遺族会長、金炯昌氏は「これまで担当検事と検察総長などに数回、捜査を進行してくれと要請したが、政治的理由でで先延ばしにしている」としながら、「金正日は調査が事実上不可能なので、そうだとしても、利害当事者として金正日を告訴した側も調査をしていない、というのがわが国の検察だ」と語った。

金正日を平壌へ帰したら、全世界に釈明できるだろうか?

記者は金正日がソウルへ来る場合、政府がモントリオール協定により彼を逮捕しなければならないかどうかを、外交通商部に問い合わせてみた。外交通商部は政府内で、国際法に関して最終の有権解釈を下す機関だ。外交部関係者は「何より金正日委員長が大韓航空858機のテロ指令者なのかが明確になるべきだ」としながら、「もし万一、金正日委員長が大韓航空858機爆破テロの指令者であるとしても、彼が国家元首としてソウルにくる場合には、国際慣習法により、そのような責任は兔責になると見るべきだ」と語った。

「もしそのような国際慣習法があるとはいえ、金正日は国家元首ではなく、北朝鮮は我が国との関係では国家ではないじゃないか」という質問に対して、彼は「金正日委員長は、形式的には国家元首でないものの、それは社会主義国家でしばしば見られる特性であり、金委員長は事実上の国家元首であるから、そのような兔責特権が適用されると見るべきだ」と主張した。また「ロッカビー事件の場合にも、米国と英国がその事件をリビア政府の支援によって実行されたものと知りながらも、カダフィの責任を問題視していない、というのは、国家元首を直接に関連させる場合、問題の解決がより一層複雑で難しくなるためだ」と主張した。

大きく譲歩して、北朝鮮の金正日国防委員長を「国家元首」として、、彼のソウル訪問を「大韓民国大統領の招請による国賓訪問」だとしよう。だとしても、われわれは政府に、このように問うことができるはずだ。

ほかでもない、航空機爆破テロ事件の直接の被害国である韓国政府が、そのテロ行為の指令者を公式に発表して、その指令者の下手人である金賢姫自身が全貌を自白したのにもかかわらず、はたして政府はその犠牲者の遺族らと国民、さらに進んで全世界のモントリオール条約加盟国に、たった一言の釈明や了解もせず、ソウルに来た金正日を平壌へ帰してもよいのだろうか。

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