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北朝鮮に取り込まれる韓国

西岡力

韓国が危ない。金正日を追いつめなければならないときに、ともに戦うべき韓国の大統領官邸や情報機関が親北朝鮮派の手に落ちた。こんなことが、なぜ韓国で起こっているのか。金大中前大統領は、一九七〇年代より北朝鮮と深い関係があったことはほぽ間違いない。盧武鉉・現大統領本人は、その発言が驚くべきほど親北朝鮮的であり、大統領の周辺は、一部の秘書官を含めて学生運動や市民運動出身者が大量に進出していて、彼らのほとんどは「親北朝鮮」の左翼だ。

とりわけ、北朝鮮のスパイを取り締まる情報機関である国情院(国家情報院・旧KCIA)の院長に任命された人物は、かつて北朝鮮スパイ容疑者の釈放運動をやったり、親北・左翼学生運動を擁護する発言をしていた、いわゆる「人権派」弁護士で、北朝鮮のスパイを取り締まる国家保安法についても廃止を主張していた。そういう人物が、北のスパイを取り締まる責任者の地位に就いてしまった。

また、国情院で人事や予算を握るナンバー2の地位にあたる企画調整室長には、日本に留学し、拉致を否定していた有名な親北朝鮮学者に研究指導を受け博士号をとっている、いわゆる進歩派の学者が任命された。

韓国の国会は・国情院の院長については任命の際に適格かどうかの公聴会を行うが、与党(新千年民主党)も含めて全会一致で、院長と企画調整室長の二人とも不適格という決議がなされた。

とくに、企画調整室長の人事は国会審議の対象ではないが、院長が「就任したらこの人物を企画調整室長にする」と発言したものだから、この人物も不適格だとわざわざ決議に書き込むくらいのひどい人事だった。しかし、法的に国会には拒否権がないために、盧武鉉大統領はこの人事を強行してしまった。

金正日政権が核開発やミサイル開発に必死で取り組んできたことは知られるようになったが同時に対南(韓国)・対日政治工作にも資金や人的資源を最優先で投入してきたことも事実だ。日本人拉致もその一環だった。

最近の韓国の状態は、そうした北の工作活動が実を結びつつあると言えるわけで、北が食糧危機などで苦しい状態にあることは事実だが、不法な工作活動という面では成功もしている。そうした意味、盧武鉉政権というのは、金正日の工作活動によって韓国がものすごく取り込まれている象徴と見るべきだ。

北朝鮮は「経済制裁は戦争とみなす」と言っている。核問題や拉致問題を理由として米国が主導し、国連などで経済制裁論議が始まれば、当然、北は「これは民族内部の問題だ」とか「アメリカが戦争を持ち込もうとしているのだ」と宣伝すると思う。

そのとき、韓国では大規模な反米デモが出現するだろう。韓国を代表するジャーナリストである趙甲済氏が本書の私との対談で語っているように、内戦状態にまでなるかもしれない。また、戦争になって、同じ民族同士で死傷者が出るのは忍びないから、「民族同士で話し合おうではないか」と言って、盧武鉉を平壌に呼ぶとか金正日がソウルに来るというカードを切るかもしれない。そうなった場合、このままでは韓国の世論は「話し合い大歓迎」ということになる。

いずれにしても、北朝鮮は経済制裁をされたくないわけだから、アメリカと日本・韓国を引き離すということを狙ってくる。韓国には、それに乗ってしまう素地が広がっている。ただ、希望が持てるのは、ようやく草の根の保守派が立ち上がったことだ。いままでの韓国の保守派は、少し乱暴に言うと、国防は米軍任せ、共産主義との対決はKCIA(中央情報部)任せだった。「あいつは赤だ」と言ったら、KCIAが引っ張ってくれた。保守派がやることといえば、ホテルで反共セミナーをやったり、政府の審議会の委員になるくらいだった。

ところが、盧武鉉政権発足後、このままではいけないと、自分が会費を払って反共集会をしなくてはいけないという考える人が増え、本書でくわしく述べたように、二〇〇三年には十万人以上集まる街頭集会を五回やった。そこに行くと、元野党総裁、元大臣、元将軍、元KCIA幹部や保守派の言論人、学者、それから韓国人拉致被害者家族や脱北者たちなどが、みんな地面に新聞紙を敷いて座っている。二〇〇三年八月に北朝鮮の旗を破ったことで、北に「ユニバーシアードに行かないぞ」と脅され、盧武鉉が謝ってしまったという集会は、この保守派が開いたものだ。

また言論界でも、『朝鮮日報』などを中心とする勢力が集まって、盧武鉉批判を徹底してやりはじめた。むろん、サイレント・マジョリティーは保守派の側にいる。朴正煕大統領の墓にお参りする人は絶えないし、いまでも歴代大統領のなかではダントツの人気がある。

韓国でも「巻き返す保守」が台頭しつつある。その保守派がどれだけ声をあげられるか。たとえば金正日がソウルに来るということになった場合、「戦争犯罪人を逮捕しろ」「テロリストは帰れ」というデモをどれだけ起こせるか。そこがポイントになる。日本にも同じことが言える。金正日の核武装を絶対やめさせることや、拉致問題全面解決まで北朝鮮を締め上げ続けることは日本の国益でもあり、アメリカとも一致していることだが、それでも経済制裁に反対する声は出てくるだろう。

ただ、そのときに六〇年安保の岸政権のように、「マスコミが何を言おうと歴史が評価するんだ」と覚悟を決めて、金正日を追い詰めるべく肚を固めることが日本でできるのか。近づく危機に備えて、韓国でいま何が起きているのかを正しく知ることが日本人に求められていると思い、必死で本書をまとめた。

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